文字・音声導入の心得4ヵ条
学んでいる外国語の文字や音声が、母語との違いが大きければ大きいほど、できるようするのが難しい。特に入門期は来る日も来る日も文字や音声の練習と矯正が繰り返され、話せる楽しさを体験する前に学習者が挫折を味わってしまうことはないでしょうか。そうならないための教師の心得はなんでしょう。
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1.形式と意味を結びつける
無味乾燥な文字・音声の授業は、学習意欲の低下、学習に対する否定的な態度を招く。
形式(音声・文字)と意味の結びつきを学ぶという、言語学習の基本に立ち返って、文字・音声を教えるときには、学習者にとって必要かつ身近な語句や表現を使い、その意味といっしょに教えるようにするとよい。
2.語句や表現を1つの単位で発音
語句や表現を聞いて意味を理解し、使われる文脈を理解してから、その語句や表現を1つの単位として発音させる。このとき、個々の音声にあまり注意を向けさせないのがよい。母語話者の認識実験をみても、非母語話者の個々の音声の正確さよりも、アクセントやイントネーションなどのプロソディー(韻律)の正確さのほうが、意味の理解により大きな影響を与えていることが分かっている。プロソディーは文脈の中で語句、表現を聞いて、使ってはじめて習得され、それを担う音声といっしょにしか学べない。
3.音を概念化する
学習者は教師の発音を単純に真似ているのではなく、聞こえた音声を一度脳のなかで分析し、どのように発音をしたら正しい音声、プロソティーで再生できるかを概念化している。この概念化は、母語の音声との違いや、個々の音の調音法に関する知識を教えるだけではできるものではない。概念化を助ける方法のひとつとして、母語話者の発音と自分の発音の違いを聞き分け、その差を無くそうとする、いわゆるクリティカル・リスニングの活動がある。ICレコーダーやMP3プレーヤーを有効的に活用するとよい。
4.大量にインプットする
音声学習の能力は個々の学習者によってかなり差がある。すぐに身につく人、時間がかかる人、耳から覚える人、文字をアンカーにする人など様々である。学習スタイルに合わせて、音声を教えるために使う語句や表現を表す文字列を適宜見せながら教えるとよい。文字を文脈のなかで教えるのにも役立つ。また、音声や文字は、発音したり書いたりする前に、大量に聞いたり読んだりすることにより学習が進む。教室内の時間はインプットにより多く割くようにし、繰り返し発音したり書いたりする練習は宿題にするなど、教室外の時間を活用する。
執筆者
1987年6月に講談社、王子製紙、大日本印刷、凸版印刷、日本製紙、三菱東京UFJ銀行、計6社の出捐によって設立された事業型財団で、2011年4月に公益財団法人移行しました。国内外の学校、教師、行政機関、民間団体と連携して、日本と海外の子どもたちが互いのことばと文化を学び、交流する場をつくる事業を中心に行っています。
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