公益財団法人国際文化フォーラム

評議員会長 野間 省伸

ダイバーシティ実現に向けての一歩

世界はいま急速に変化しています。テクノロジーが進化して、グローバル化の流れは止まりません。TJFが改めてビジョンとミッションを定めたことは、時代の変化に対応していくためにも、非常に有意義なことだと思います。

このビジョンのなかで、私が注目しているのは「多様(性)」=ダイバーシティということばです。世界にはさまざまな価値観、さまざまな文化、さまざまな個性が混在していて、社会は混こ ん沌とんとしています。実際に現地の人びとと交流したり、直接見たり聞いたりすることは非常に重要なことだと思います。

私は昨年海外出張で2週間ほどアメリカに滞在しました。サンフランシスコはシリコンバレーに代表されるIT企業が多数集結している街ですが、一方で貧困問題が深刻で、路上生活者が急増していました。犯罪が増えすぎたため、カルフォルニア州では、950ドル以下の窃盗は軽犯罪に分類され、逮捕されないそうです。また、現地では自動運転タクシーの有料営業が始まっていて、私も実際に利用しましたが、無事目的地に到着することができました。ところが、私が利用した会社は事故が原因で、営業許可は取り消されてしまいました。日本の感覚では、あり得ないことだと思います。しかし自分には理解できないと思ったら何も始まりません。

重要なのは「相互理解」と「共通理解」です。自分とは違う常識やルールのなかで生活することは大変なことです。生まれも育ちも違う人たちとわかり合うことはとても難しい。どうすれば相手のことを理解したり、共感したりできるのか。教科書やインターネットの情報だけでは、お互いを理解することはできません。やはり、現地の人びとと直接会って、その国や都市の雰囲気を自分自身で感じることが大切だと思います。人と人が文化交流をすることで相互理解と共通理解が生まれます。そんな活動がダイバーシティを実践する第一歩となると思います。

国際的に見ると、なんとなく最近の日本は元気がないように思われています。でも日本の技術はまだまだ進んでいるし、優秀な人材残っている」とエールを送りたいと思います。

TJFの活動に携わるすべての皆さまの一層のご理解とご協力をお願い申し上げます。

理事長 佐藤 郡衛

若い世代が希望をもって生きていける社会をつくる

TJFは、2022年に創立35周年を迎えたのを機に、新たなビジョンを策定しました(4ページ)。ビジョンを新しくした背景には、社会の多様化が急速に進むなかで、これまでのように言語や文化に注目しているだけでは現実に対応しきれないのではないかという私たちの課題意識があります。

近年、地域社会や企業で、ダイバーシティということばがよく使われるようになりましたが、これは今を生きる人びとの背景が極めて多様化している現状を反映しています。ダイバーシティとは、性別、年齢、国籍、人種、民族、文化、宗教、障害、性的指向、学歴、社会階層などを理由とする差別をなくすことはもとより、すべての人が互いの背景の違いを認め合い、自分らしく、いきいきとした人生を歩める社会の実現をめざすものです。現実社会では、前述したような属性はそれぞれ切り離されて存在しているとは限りません。むしろ、ひとりの人やひとつのコミュニティにおいて、複数の属性が相互に関わり合い、複雑に交差していることがわかっています。そのため、これらの属性を個別に扱うのではなく、包括的にとらえる視点が重要視されるようになりました。さらには、各属性のなかにもまた多様性があることに目を向けていく必要があります。社会の現実を多層的にとらえていくためには、多様性の急速な進展とともにこうした「交差性」と「多様性のなかの多様性」を視野に入れていくことが不可欠となってきています。

TJFはこうした時代認識のもと、すべての人が自分らしく、いきいきとした人生を歩めるような社会づくりへの貢献をビジョンとして掲げることにしました。新たなビジョンのもと、特に若い世代が希望をもって生きていけるような社会の実現に向けて努力してまいります。

また、ビジョンをTJFの今後のあり方や活動に反映させていくために、「対話から共通了解へ」「協働から共創へ」「対等な関係性の構築へ」という三つのミッションと各ミッションを具現化していくための指針をつくりました。「対話」や「共創」が成立する前提には力による支配ではなく「対等な関係性」が必要ですが、「対等な関係性」は「対話」や「共創」を試みるなかでこそつくられていくものでもあります。

TJFは2023年度より5年間をめどに、これらのミッションを事業と組織運営において達成するべくチャレンジしていく所存です。より一層のご支援、ご協力をお願いいたします。