「デコ」で気持ちを伝える
vol.1
スイーツデコで人とつながる
みゃあこ:中学3年生、15歳、埼玉県在住
2013.04.24
「日本のおもしろさを再発見して世界に伝える」をミッションとする明治大学国際日本学部のゼミとTJFがコラボしました。
ゼミ生が「アイドルは好きですか?」と「気持ちを伝えるデコ」の二つのテーマに分かれて取材、執筆した記事をお届けします。
取り組んだ学生の声
「デコ」って何? 知っているつもりだったのに、話し合うなかでどんどん定義がゆらいで焦りました。いろいろなデコを、「込められた想い」を軸に切り取ってみました。
関連リンク
『国際文化フォーラム通信』 第97号 「人に迫る」 PDF「デコ」で気持ちを伝える
思わず手にとって食べたくなってしまうくらい本物そっくりのスイーツデコ。身近な日用品や手芸道具でそうした作品を作り出す中学生、みゃあこさん。彼女は中学生ながら自分の作品を商品として売り出しているという。彼女にとってのデコの魅力とはなんなのだろうか。
ずっと飾っておけるスイーツを作りたかった
スイーツデコを始めたのは2010年の暮れ頃です。たまたまテレビのニュースで見たのが、スイーツデコとの出会いでした。ワークショップで黄緑色のマカロンを作っていたと思います。「こんなものがあるんだ!」と、一気に興味が湧いてきました。以前から食品サンプルが好きで、自分で作りたいと思っていたからです。
インターネットで検索したところ、作り方や材料が載っているサイトが出てきました。身近なもので作れると知り、試しに百均の紙粘土で作ってみたところ、楽しくてはまってしまいました(笑)。デコを始めたのは、中学生になってからです。元々胃腸が弱かったのが、中学生になって悪化してしまい、学校を休みがちになりました。外にもあまり出られなかったので、デコが私の支えでした。
本物のスイーツを食べるのも大好きですが、置いておくと腐ってしまいますよね。ず~っと飾っておけるケーキや、クッキーのマグネットなんて、夢があっていいじゃないですか(笑)。「目で食べる」なんてことばもありますし、実際には食べられなくても、味を想像して楽しむことができます。だからデコが好きです。
最初に作ったのは、クッキーのつもりでしたが、謎の物体ができましたね(笑)。
製作はインターネットで独学
講座やワークショップで学ぶ方が多いようですが、私は疑問があれば、ほぼインターネットで調べて解決しています。
最初の頃は右も左もわからなかったので「スイーツデコ ホットケーキ 作り方」等と検索して、基本の作り方や必要な材料を学びました。
さらに本物のホットケーキの画像を見て、焼き色はどのくらいの濃さで、どのように付いているのかを観察しました。それらを参考にして、自分の作りたいものに応用します。一番大切なのは経験だと思うので、何度も試作を繰り返していました。すると、どうすれば作りたいものができるかが分かってきます。
今は、作る食べ物ごとに使う道具を大体決めています。例えば、焼き菓子系の質感は、歯ブラシやたわしで叩いてつけます。 アイスやマカロンのふりふりした部分は、爪楊枝でつついたり、ひっかいたりしています。作業自体は単純なので、道具と使い方の組み合わせを変えれば、さまざまな食べ物に応用できますよ。
一つの作品を作る際、実際の作業時間は大体1時間~2時間です。粘土やニスを乾燥させなくてはならないので、できあがるまでには1週間~2週間程かかります。
集中しているときは6時間程、作業部屋にこもって作業しています。夢中になっているときはトイレにも行かず、ご飯も食べずなんてことも......。
集中力だけはあるので、自分の世界に入ってしまいます(笑)。
デザインは、考えてから作ったり、ぶっつけ本番で作りながら考えたりします。
最近は、スイーツデコのことばかり考えているので、買い物に行っても「これは使えそう!」「もう少し小さければなぁ」なんて考えています。 レンゲを見たときは「ラーメンを入れてみよう」、小さなココット皿を見た時は、「ティラミスやクレームブリュレを作ったら可愛いかな」、とアイディアが湧いてきました。
アイスクリームデコの作り方
↓
↓ タワシで質感を出す
↓ 細かなところは爪楊枝
アイスクリームとホットケーキのピン
初めて作品を売った
デコをしている人のブログで、池袋のデパートで開かれるイベントの委託出展者の募集をしていました。ダメ元で応募したところ、なんと合格!
2011年8月のことで、これが初めてのイベント参加でした。納品した20点全てが3日で売れました。まさか完売するとは思っていなかったので、とても嬉しかったです!
同年11月にはデザインフェスタ(東京で開催されるアジア最大級の国際的アートイベント)に出展しました。出展料はブースの広さや種類によって違うのですが、安いブースでも2万円以上して高いので、20人程のグループで参加しました。デザインフェスタに出るのが夢だったので、本当に嬉しかったです!
中学生なので、出展したいイベントがあっても、「未成年なので......」と断られることが多いです。ブログを見て下さっている方でも、実際に会うと「本当に中学生だ!」と驚かれますね(笑)。出展する側には、私くらいの年齢の子はいなくて、大体は大人の方です。
ネットとデコを通じて広がった友だちの輪
私の周りには、スイーツデコ自体知らない人が多かったので、ネットでデコが趣味の小中高生と仲良くなりました。オススメの材料や作り方の情報交換をしたり、ビデオ通話で、作っているところを見せ合ったり......。
東京のほうに住んでいる子とは、一緒に買い物やイベントへ行ったり、家で一緒に作ったりしました。兵庫の方へ行ったときには、大阪・広島に住んでいる子とも、一緒に買い物やイベントへ行きました。ブログやイベントを通じ、仲間が増えていくので楽しいです。
海外の人に受けるのでは? と言われ、英語のブログもつくってみました。しかし、英語が難しくて、3回しか更新していません(笑)。今は、英語を使ったホームページを作っています。こちらはがんばって完成させたいです!
デコから離れたが、自力で立ち直り復帰作に挑む
学校では人間関係が上手くいかず、体調も悪化、家では毎日弟と殴り合いの喧嘩(苦笑)。
当然、気分も落ち込み、デコも数ヵ月程できませんでした。このままでは、状況が悪化する一方だと危機感を覚えましたね。
「もう駄目だ」「疲れた」「死にたい」が当時の口癖でしたが、それを
「今まで大変だった分、この先は楽しいことがあるはず」「疲れたのは頑張ったから」「幸せな人生をまっとうして死にたい」と、無理やりポジティブな考え方に変えてみました。
ネガティブな感情になったら「楽しい・嬉しい・幸せ」を呪文のように唱える。セルフ洗脳ですね(笑)。すると、段々そんな感じがしてきて、本当に楽しくなってきちゃいました。
気持ちの問題が解決したら「ラーメン作りたい!」と、制作意欲が湧いてきました。以前から作りたいと思っていたものの、難しそうなので、作ったことがありませんでした。しかし「今の技術があれば作れるかも?」と思い、挑戦。
今までで一番満足できる作品ができました!理想のイメージ通りに完成した時が、一番嬉しいですね。
デコで大変なこと
作業する上で大変なのは、埃が入ってしまうことです。白い・透明な粘土だと特に目立ちます。
埃対策の上手い知人に尋ねたところ、ウェットティッシュがいいとのことでした。ウェットティッシュを使うようにしただけで、かなり埃が減りましたね。
ニスを塗るときも、空気中の埃が入ってしまいます。これはどうしようもないので、地道に爪楊枝で取り除いています。
目立つところに埃が入ってしまい、取り除けない場合は、パーツから作り直します。
他の人の作品とデザインが被ってしまうことが、最近の悩みです。作ろうと思っていたもの・制作中のものに似ている作品を発見したときのショックは大きいです。誰でも思いつくアイディアだったということですからね。
影響されやすい性格なので、独創的な作品を作るためにも、あまり他の人のブログを見ないようにしています。
自分を表現するために気持ちを込めて作る
人に贈るときや、人に頼まれて作るときが、いちばん気持ちがこもっていますね。自分の一番得意なものがデコなので、お世話になった方にお礼のメッセージと一緒に贈ることがあります。
モチーフの希望がなければ、何色がいいか、何に加工したらいいかを尋ねます。あとは、その人の雰囲気、服、持ち物などから、その人の好みを考慮して作ります。
お母さんには名前入りのマカロン、エクレアのキーホルダー等をプレゼントしたことがあります。母はモンブランが好きなので、今度はそれをあげようと思って作っています。ものを作ること自体が好きですが、それでさらに誰かが喜んでくれたり、興味をもってくれたら嬉しいです。
作りたいものを作り続けたい
制作に必要なものは、今まで貯めていたお年玉やお小遣いで買っています。材料費がかかるので、高校生からアルバイトしたいです。接客業の基本を学べれば、今後も役立つのではないかと思います。将来、何をするかはわかりませんが、「作ること」「売ること」は続けていきたいです。
作品を売るようになってから、売れるものと作りたいもののギャップに悩まされています。
私は"食品サンプルのようなリアルさ"と、"おしゃれさ・可愛さ"を兼ね備えたディスプレイが作りたいのですが、実用的でないものは売れにくいです。また、私の作品は地味なものが多いですが、売れ筋は"ピンク系の可愛らしい盛りデコ"です。
リアルなもの程、細部まで作りこみが必要ですが、その分値段を高くすると売れないですし、安くすると元が取れません。売ることを意識して作ると、作品ではなく商品になってしまい、自分らしさがなくなってしまうのも悩みです。今後は"作品"と"商品"を作り分けていけたらと思います。
作りたくないものを作っても、自分の納得のいく作品はできないので「作りたい!」と思えるものを作っていきたいです。
私にとって、何かを作ることは自分を表現することなんです。