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アイドルは好きですか?

vol.3

アイドルとファンとガクモンと

ダイスケ(大学4年生) みさき(大学3年生)

2013.06.05

myw_gakusei_label.png「日本のおもしろさを再発見して世界に伝える」をミッションとする明治大学国際日本学部のゼミとTJFがコラボしました。

ゼミ生が「アイドルは好きですか?」と「気持ちを伝えるデコ」の二つのテーマに分かれて取材、執筆した記事をお届けします。

取り組んだ学生の声 

インタビューを申し込んでも断られることが続き、人選に苦労しました。引き受けてくださった方々も、スケジュールがタイトでアポ取りも大変でし た。

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アイドルとファンとガクモンと

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アイドルはなぜこれほど人気を集めるのか。そんなテーマで研究している学生がいる。アイドルが好きで卒業論文のテーマにまで選んだ二人が、最近の「ファン事情」を語る。

プロフィール

ダイスケ
大学4年生。卒業論文でアイドルの人気の出方と年齢の関係について考察している。

みさき
大学3年生。以前、芸能事務所に属してアイドルとして活動した経験があり、女優をめざしている。ファンの獲得のしかたがアイドルグループごとにどう違うのか調べている。

Q:アイドルについて卒論を書いていらっしゃるそうですね。

ダイスケ:はい、アイドルの人気と年齢の関係について書いています。今、アイドルの年齢の幅が以前より広くなっているんです。例えば人気上昇中の「アイドリング!!!」だと最年長が24歳で、最年少が13歳なんですね。AKB48の篠田麻里子さんは26歳だし...。13歳の魅力と26歳の魅力ってきっと違いますよね。アイドルに適齢期ってあるんだろうか、そもそもアイドルらしさってなんだろう、年齢と関係あるのかな、というところが出発点でした。

Q:どんなことを調べているんですか。

ダイスケ:アイドルの年齢の分布をみようと思って、今年(2012年)8月にお台場で行われたTOKYO IDOL FESTIVALに注目したんです。2010年から始まったこのイベントは、年々規模が大きくなっていて、3年目の今年は100グループ以上、約700人のアイドルが出演したんですね。参加アイドルの年齢を調べてみたら、やっぱり予想通り20歳あたりから徐々に減っているわけです。いろいろ見ていくと、アイドルにとって20歳はこのままアイドルを続けていくかどうか考える時期になっているようで、そういったところをもう少し突っ込んでみたいなと思っているんですが...。

Q:「アイドル」って何でしょう。定義はあるんですか。

ダイスケ:それは本当に難しいところです。「アイドル」っていう言葉はいろいろな場面で使われますしね。極端に言うと近所のきれいなお姉さんを「アイドル」っていうこともあるわけで...。芸能界に限っても、松田聖子*はあの年齢で今でも「アイドル」なのか、とか。どう思います?

※松田聖子 1980年代にデビューし、一世を風靡した女性アイドル。

みさき:人それぞれ定義が違うし、それでいいんじゃないですかね(笑)。いろいろ考えていくと、たとえば、人気バンドはアイドルなのかっていう疑問も湧くわけです。私は、歌って踊っているのがアイドル!って思うことにしています。

Q:みさきさんの研究について教えてください。 

みさき:「姉妹ユニット」間で、ファンの獲得のしかたがどう違うのか興味をもっています。
「姉妹ユニット」って何か、正確な定義があるわけじゃないのですが、芸能事務所がアイドルグループを売り出すとき、趣向や雰囲気が似ているけれど年齢層の違うグループどうしを「お姉さん」ユニット、「妹」ユニットというように位置づけ、セットで売り出すことがあるんです。
そういう姉妹ユニットの一例として、メンバーが高校生以下の「PASSPO☆」と20歳以上の「predia」を取り上げて、違いを調べています。

みさき:日本では、より若いアイドルが人気で、年をとると急に売れなくなってしまいますよね。だから、お姉さんアイドルのほうがコンセプトを明確にして確実にファンを獲得する方法をとっているだろうという仮説を最初に立ててみたんです。でも、その仮説は間違っていたことがわかって...。高校生グループのほうも、コンセプトは意外としっかりしているんです。例えば「PASSPO☆」だと、空と旅をテーマにしているので、ライブのことをフライトって呼んだり、独自のワールドを作っているんです。お姉さんユニットのprediaのほうも、もちろん年齢なりのコンセプトをちゃんと立てています。ライブ会場にはシャンデリアとかレッドカーペットを使って大人っぽい雰囲気作りをしていたり...。私はまだ、卒論は来年なので、方向性を模索中、っていうことで(笑)。

Q:特に好きなアイドルグループはどれですか。 

みさき:最初に好きになったのはももいろクローバーZ(通称、ももクロ)。それから、PASSPO☆、predia、東京女子流、スマイレージ、ですね。私は結構「DD」なのでいろんなアイドルのつまみぐいをしています。

ダイスケ:DDっていうのは「誰でも大好き」の略です。どれか特定のグループだけじゃなくていろいろなアイドルを応援する人のことをそういうふうに言うんです。最近のアイドル好きは、一筋にこのアイドルだけっていうよりDDっぽい人が多いと思いますよ。
ぼくはいちばん初めに興味をもったのはアイドリング!!!です。それまでアイドルにまったく興味がなかったんですが、レギュラー出演している番組をいつも見ているうちに、いいかもって思うようになりました。

みさき:以前はアイドルにちょっと偏見があったんです。歌や踊りが上手じゃなくても顔がかわいければやっていけるように見えるじゃないですか。でも、私自身が芸能活動を始めて、自分がアイドルってよばれる立場になったとき、実はアイドルの本当の姿について何も知らなかったって気づいたんです。それで、もっと研究しようと思って。たくさんのグループの特徴を調べ、ライブに通ううちに、アイドルたちの熱意と本気にふれて印象が変わっていきました。やっぱり、いいな、すごいなって。

Q:初めてアイドルのライブに行ったときの感想を聞かせてください。

ダイスケ:最初に行ったのはももクロのライブでした。客席からファンがみんなでアイドルに向かって「コール」*とか「MIX」**っていうかけ声をかけるんですけど、そのときは、そういうことを知らずに行ったんです。両隣の席の人たちが熱心にコールやMIXをしていたのですっごく驚いてしまって。次のときからは、自分も一緒にできるようにと思って、ウェブで勉強してから行きましたよ(笑)

みさき:私も、ファン同士の仲の良さには最初びっくりしましたね。客席で、あぁあの人達は熱心なんだなと分かる人たちが固まって座っていて、「どうしよう、ちょっとあれは入り込みづらいな」って思ったのを覚えています。でも、ライブが始まったらぜんぜん関係なかったですね。その人たちといっしょに自分もはじけて盛り上がってました。私もコールをしますよ、めっちゃします(笑)ライブの前にYou Tubeで予習して、あとはライブで周りの人のやり方をまねして覚えればいいんですよ。

*コールをする 好きなメンバーが歌っている時に、そのメンバーの名前を叫んだりすること

**MIX ファンの間で生まれたアイドルを応援するときの掛け声。ももクロMIXの場合、「あー、よっしゃももクロ〜!れに、かなこ、ももか、しおり、あーりん、いくぜ!ももいろクローバー!」という掛け声を特定の曲の間奏に叫ぶ。

Q:ライブにはどのくらいの頻度で行きますか。どのくらいお金を使っていますか。

ダイスケ:去年はももクロだけで30本のライブに行きました。最近はお金と時間がなくてなかなか行けてないですが...。

みさき:私はそれに比べると少なくて、ライブに行ったのは今までに10回くらいです。1ヵ月、毎日毎日行っている人もいるし、週末の午前と午後に違うアイドルのライブをはしごするような人もいるから、すごいですよね。
ライブ代はメジャーデビューしていないアイドルだと1,000円ぐらいですが、メジャーデビューしていると6,000円くらい。チケット代よりも、CDやグッズを買うほうにお金がすごくかかるみたいですね。

ダイスケ:アイドルとの握手会に参加できるチケットをCDにつけて販売するというビジネスモデルができているので、アイドルに生で会いたい人は一生懸命買うんですよね。

みさき:最近は、アイドルとお散歩ができるチケットもあるらしいですよ。あ、マネージャーさんも一緒に来るので3人でのお散歩なんですけど(笑)。CD購入の特典も前よりどんどんバリエーションが豊富になってきてますよね。

Q:お二人もCDを買って握手会に行ったりするんですか。

ダイスケ:ぼくは握手会には行かないですね。アイドルと実際に会ったって...、何をしゃべっていいか分からないし!

みさき:えぇっ、そうですか?もったいなぁい!(笑)

Q: ライブの魅力は何だと思いますか。

ダイスケ:アイドルのパフォーマンスをただ見ることじゃなくて、ファンの側もそれにどんどん反応して、会場を盛り上げることでライブは成立していると思うんです。どうやって盛り上げるかっていうと...、さっき話に出たコールとかMIXのほかにも、客席でアイドルと同じ振り付けを踊る「振りコピ」っていうのもありますよ。はい、ぼくもやります!

みさき:ライブは、アイドルから客席への一方通行じゃなくて、客席からのアクションにアイドルたちが応えてくれる、そういう手ごたえがあるからいいと思うんです。ファンとしては、アイドルと意思疎通できる感じがしますよね。大きな声で、夢中で、みんなと一緒にコールをするのが楽しいから、そういう場の雰囲気を味わうためにライブに行こうかなと思うときもあります。

ダイスケ:ファンはライブにコミュニケーションを求めているでしょうね。アイドルとファンだけでなく、ファン同士のコミュニケーションも、ですよね。

みさき:そうそう、ファン同士が仲良くなってライブのあと一緒にご飯に行ったりとか、サークルを作って連絡取り合ったりっていうのももちろんあります。

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Q: ライブに行く以外にもアイドルの楽しみ方はありますか?

ダイスケ:テレビだけで楽しむ人ももちろんたくさんいます。また違う楽しさがありますから。

みさき:アイドル好きな友だち同士で集まって、アイドルのDVDを一緒に見て騒いだりすることがあります。アイドルがいてくれるからこそ、この人たちとこんなに仲良くなれるんだ、つながれるんだなって思います、そういうときは。

Q: アイドルがここまで人気を集める理由は何だと思いますか?

ダイスケ:元気をもらえるから...、っていうのはあるんじゃないでしょうか。東日本大震災が起きたとき、2週間ほど家にこもっていて、大学の仲間にも会えないし、テレビをつけても津波の映像ばかり流れていたので精神的に結構まいっていたんですね。正直、ぼくがあの時期を乗り越えられたのはアイドルのお蔭だと思っているんです。とにかく、ずっとずっと、ももクロとかアイドリング!!!の動画を見ていましたから。それで何とかかろうじて、気持ちを保てたというところがありました。

みさき:ライブに行って応援したりCDを買ったりすることで、アイドルがだんだん有名になっていくじゃないですか? そうすると、自分もアイドルを育てることに一役かっているという気持ちになれるところも魅力かな。

ダイスケ:育てているとか、そういう気持ちは、ぼくはまったくないですね...。でも、アイドルたちが成長して変化していくのをみるのは確かに楽しいです。たとえば、去年(2011年)、ももクロでMCを担当していたメンバーが脱退してしまって、残ったメンバーはこれからどうなるんだろうって心配したんですけど...。その後、ライブに行くとね、一人抜けたことを感じさせないくらい、ちゃんとトークなんかも上手になっていくんですよ。そういうのは見てますよ、ちゃんと!

(2012年12月10日 インタビュー・構成:土屋萌、馬場友美)


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