公益財団法人国際文化フォーラム

地球講座報告

メルボルン・パース・広島・ソウル・上海をつなぐ「夜のリレー」 地球講座 The Liveを開催

The Live

刻一刻と、東から西へ5つの国と地域をまたいでリレーする夜を、現地特派員の地球レポートとともに共有するプログラム「地球講座 The Live」を6/22に開催しました。参加者は、日中韓豪の主に12歳から19歳の青少年で、英語、韓国語、中国語の同時通訳者を配置して実施しました。

本年度最初のプログラムは夏至の時期にあわせてオーストラリアのメルボルン・パース、日本の広島、韓国のソウル、中国の上海をオンライン(Zoom)で結び、インタラクティブ地球儀「SPHERE」(以下、「SPHERE」)をつかった講師の解説で各地のレポートを地球の視点で捉えなおすという企画でした。

スケジュール

プログラムは18:00に開会し、約2時間実施しました。日の入り中継は、オーストラリアのメルボルン、パース、日本の広島、韓国のソウル、中国の上海の順に(日の入りが開会の約2時間前だったメルボルンを除き)それぞれの日の入り5~10分前の様子を現地特派員が中継しました。また、各地の日の入り中継の間に、地球環境にかかわるニュースや身近な変化についても5分程度レポートしました。レポートを受けて講師は、ローカルな話題をグローバルの視点でとらえるとどのように見えるかを「SPHERE」を使って10~15分程度解説しました。プログラムの中盤、グループにわかれて「地球のどんなことに興味があるか」「身近でどんなことを感じているか」などを発表する時間も30分持ちました。

上海 【日の入り前の様子(日の入り時間/20:01日本時間、19:01現地時間)】

特派員による現地レポートと竹村眞一氏の解説

レポートを話題毎にまとめると大きく3つ。最初は夏至冬至について、2つめは水害について、3つめは火災についてでした。それぞれのローカルなニュースを受けて、講師の竹村眞一氏(文化人類学者)の解説によって地域的な事象を地球の目線で捉えなおすという構成で進行しました。途中、参加者の関心を共有する目的でグループワークの時間を設けたり、最後に講師が参加者の質問に答える時間を作ったりしました。

話題1「夏至冬至」

最初はオーストラリアのメルボルンから、郊外の街エルサムで行われる冬至祭り(Winter Solstice Festival)が紹介されました。「1年で最も日が短くなる冬至に、光を皆で呼び戻そう」というコンセプトでキャンプファイヤをはじめとするさまざまな催し物が行われるそうです。残念ながらコロナ禍で今年も開催が中止になってしまいました。

WINTER SOLSTICE FESTIVAL – MELBOURNE (https://wintersolsticemelbourne.com.au/gallery/video/

解説: リアルタイムの地球の昼と夜の境(日影線)と、夏至と冬至のころの日影線の様子を「SPHERE」を使って見せてくれました。夏至は北極が一日中明るい白夜の状態にある一方、南極では一日を通して日の当たらない極夜の状態であること。冬至にはその状態が北極と南極で逆転することを「SPHERE」を通じて理解することができました。また、季節がことばや慣習など文化に影響を与えていること(例:クリスマスが、再生した太陽を讃える冬至のお祭りを起源としていること)などを紹介してくれました。

話題2「水害」

続いて、広島と上海からどちらも水にまつわるレポートが報告されました。まず、広島のyumiさんから、2018年6月末から7月はじめにかけて発生した西日本豪雨とその後の取り組みについて報告がありました。人的被害が最も多く出た広島県は、呉市や東広島市でスマートフォンアプリにより被災やその予兆を住民から通報できるシステムの運用を始めるなどさまざまな取り組みが県内各地で行われるようになったことが伝えられました。

上海のyuanさんからは、昨年7月に上海に被害をもたらした台風「花火」について報告がありました。台風「花火」は、河南豪雨の原因のひとつにもなり、被災者1478万人、死者行方不明者398人にのぼる災害となりました。河南省に暮らす親戚は、被災した後から非常食や防災グッズを事前に用意するようになったことが伝えられました。

解説: 広島や上海ほかで発生した大雨・洪水を、地球の目線でみた以下3つポイントから解説してくれました。

  • 局地的な大雨、洪水は、地球目線でみると遠方(インド洋)からもたらされる水蒸気も加わって勢いを増しており、地球温暖化の影響があるという点
  • 人類が大雨や洪水の影響を受けやすい沿岸部に大都市を築いているという点
  • 中国、韓国、日本は高齢化社会であるという点

地球の温暖化は、大雨や洪水のリスクを高めています。私たちは、一時的な防災にとどまらず、未来を見据えた都市や社会のありかたを考えることが課題となっていることを知りました。

インド洋エリア、太平洋エリア、中国エリアからもたされる水蒸気の様子

話題3「火災」

3つ目の話題として、火にまつわるレポートが、韓国とパースからありました。

ソウルのsunさんから、今年5月末から6月初めにかけて慶尚南道北部に位置する蜜陽市で発生した山火事のニュースが伝えられました。年々増加する山火事は、環境破壊などを要因とする気候変動を原因と考え、飲食店での使い捨て容器の使用規制がはじまっていることが報告されました。実際、sunさんがアルバイトで働くカフェにも政府機関(環境部)から使い捨てのプラスチックカップの使用を禁止する旨のチラシが掲示されていると伝えられました。

つづいて、パースのguyさんから、昨年2月に新型コロナウイルスの感染拡大を抑制するためのロックダウン宣伝下にパース近郊で発生した山火事について報告がありました。 近年山火事が頻発するオーストラリアには、その日の山火事の発生危険度を示すFIRE DANGER RATINGの表示板が道端に設置されていたり、山火事の発生情報を知らせるスマホアプリ(My Fire Watch)を州政府が提供していたりするそうです。guyさんも、夏になると危険を感じ、日常的に確認するようになると伝えられました。

解説: かつて自然発火による火災がほとんどだったのが、現在は、森を食料生産のための畑にする目的で人為的に起こされる火災(アマゾンなど)が増えていることを「SPHERE」による森林面積の減少の様子とともに紹介されました。そして、シベリアの森を例に、森林が温暖化の要因となっているCO2を吸収する様を「SPHERE」に表示し、森林がいかに重要な役割を果たしているかについて言及するとともに、私たちは未来を変えられる時代にいきている、つまり自分たちの選択でよりよい未来を呼び寄せることができると、参加者に向けて呼びかけられました。

シベリアの森が二酸化炭素を吸収する様子

グループワーク

「特派員レポートと竹村眞一氏の講座の説明」を通じて、私たちの日常を地球の視点で見直す機会を提供しました。グループワークでは、参加者が同じ地球を見ていても視点や問題意識、考え方や捉え方が違うことを実感してもらえる時間にしました。また、地球というテーマに関心を持っている仲間とのであいの場を提供することができました。実際、参加者のアンケートの中にも、「学校の授業で環境問題について触れることが増えましたが、みんながみんな好きでやっているわけではないので…。今日のプログラムで実際に興味関心を持つ同世代の子たちと過ごし、話し合いをすることもできて本当に参加できてよかったです!」というコメントがよせられています。

参加者からの声とプログラムのこれから

参加者から、「とてもよく機能したプログラムでした。とても楽しかったです(オーストラリア)」「講義を聞いて地球科学について学んだのが良かったです。(韓国)」「同様の活動に参加する機会がもっとあることを願っています(中国)」「とても興味深い!今後もこのような活動を開催してほしいです(中国)」「少なくとも何十人の学生が地球について考えているということを今回知ることができたので、これからも自分なりに答えを探しつつ周りを巻き込んでいきたいと思います!(日本)」という声が届いています。本事業はグローバルについての理解を国際から地球へと拡げるとともに、地球というテーマでつながることができる人が世界中にいることを実感できるきっかけを提供していきたいと考えています。次回は12月22日の同じ時間帯に開催する予定にしています。夏至のころと比べながら冬至の「夜のリレー」に参加しませんか?世界の地球少年少女がみなさんを待っています!詳しい情報はメルマガで随時配信いたしますので、よろしければご登録ください。

メルマガ配信のお申込みは、以下のURLからお願いします。
https://www.tjf.or.jp/wayawaya/?=ml

(事業担当:中野敦、森亮介、宮川咲)
                        

事業データ

地球講座 The LIVE 「夜のリレー」メルボルン・パース・広島・ソウル・上海をつなぐ2時間

期間

2022年6月22日(水)18:00-20:15

場所

オンライン

主催

TJF

企画制作

特定非営利活動法人ELP (Earth Literacy Program)

講師

竹村眞一 /特定非営利活動法人ELP (Earth Literacy Program)代表、京都芸術大学教授

特派員

miya(豪州メルボルン)

guy(豪州パース)

yumi(日本広島)

sun(韓国ソウル)

yuan(中国上海)

参加者

60名(日本の中高生、中国の高校生、韓国の高校生、オーストラリアの大学生)