2013年度から実施している「外国語学習のめやすマスター研修」。「外国語学習のめやす」の考えに基づいた研修はそれ自体が新しいスタイルだ。マスター研修参加者18名は教えている言語に関係なく、3~4人のグループに分かれ、グループごとに授業プランをつくる。今回はまず、どんな学習者を対象にするのか、学習者像を具体化していった。どんな性格で、部活は何をやり、趣味は何なのか、なぜそのことばを勉強したいのか、週にどれぐらい学習に使える時間はあるのか、など。この作業が、それぞれの学習者の関心や興味と連携した授業プランを考えることにもつながり、ひいては学習効果を高めることになる、と主任講師を務める山崎直樹・関西大学教授は言う。
参加者の教える言語は英・韓・西・中・独・日・仏・露で、教える場所は高校もあれば、大学もある。ひとりで授業プランをつくるときは目の前の学習者を考えればいいが、今回のような場合には、共通した土台があったほうがいい。そのほうが有益な議論になると考えての作業でもあった。さらに、みんなでワイワイと楽しく考えることは、アイスブレーキングの役割も果たす。
ここから始まり、さまざまな作業を経てできあがった授業プランを、参加者一人ひとりが秋に実践する。そして、冬の研修で発表し、コメントを出し合う。こうした切磋琢磨で最終的にはグローバルな視点をもったプランがうまれる。 参加者のひとりが言った。「この研修は期間も長く、課題も多いのでハードルが高い。そもそも『外国語学習のめやす』を取り入れること自体、それまでのやり方を一度ゼロに戻して、再構築していかなくてはいけないから負荷が非常に大きい。でも、これぐらいの負荷がかからなければ教師は変われない」と。
研修が変えたもの
古田富建
帝塚山学院大学教授
「先生、どうしたの?」
夏のマスター研修受講後、最初の授業で学生からそう言われた。韓国でのフィールドワークに向けた授業を春から行っていたのだが、このときに活動ごとの目標、最終的な目標と課題を学生に示した。最終的に何ができるようになるのかを、事前に学生に示すことの重要性を研修会で認識したからだ。
数年続いているフィールドワークだが、今回初めて動画の作成を課した。さらに、訪問先の韓国・スウォンでは現地の大学生と交流し、韓国語を使わなくてはいけない場を設定した。これも初めてのことだ。大丈夫だろうかと不安はあったのだが、学生はなかなかやるのでる。動画作成は難しいだろう、交流はうまくいかないだろう、教室で私が伝えた知識を実際に見るだけで十分だろうと、学生を自分の枠に入れてしまっていたことに今回気づいた。
フィールドワークの一連の授業を設計するときに、「外国語学習のめやす」が示す「3×3+3」は有効だった。フィールドワークのテーマのひとつが「スウォンの観光資源」だったが、ここに「言語」領域と「グローバル社会」領域をうまく入れることができた。「外国語学習のめやす」は、私のように言語教育の専門でなくても、「文化」「社会」を踏まえた新しい授業をめざすときにより生きてくるのではないかと思う。
事業データ
「外国語学習のめやす」マスター研修
夏:2014年8月2日(土)~6日(水)
冬:2014年12月6日(土)、7日(日)
兵庫県・六甲
山崎直樹(関西大学教授)
外国語担当教員21名(うち3名はサポーターとして参加)
※事業報告書『CoReCa2014-2015』に掲載。所属・肩書きは事業実施時のもの。