日韓で互いのことばの教育や学校間交流を促進するとき、その鍵を握っているのは管理職であることから、2015年度に日韓校長交流プログラムを始めました。2016年度は、東京、神奈川、千葉、埼玉、広島の高校から校長など11名を8月に3泊4日で韓国に派遣しました。ソウルで実施した日韓校長交流会に、韓国側は日本語教育を実施している中学・高校の校長、日本語教師計19名が参加し、互いの教育に対する考え方などを話しながら、日韓の学校が交流する意義やその可能性について意見交換しました。
11月には、TJFと国際フレンドシップ協会が共催で韓国の校長と生徒を日本に招聘し、滞在中に交流会を実施しました。ここに参加した校長のほとんどは、ソウルでの交流会に参加していたため、多くの校長が2度めの交流となりました。対話を重ねることで、人柄、教育や交流に対する思いがよりわかるようになり、結果として神奈川県立弥栄高等学校とドンタンチュンアン高等学校(京畿道)、東京都立日比谷高等学校とミチュホル外国語高等学校(仁川市)が姉妹校協定を締結し、神田女学園中学校高等学校とソウル女子高等学校が協定の締結に向けた準備を始めています。
生徒の訪韓を視野に
学校間交流が始まると、日本の生徒たちが韓国を訪問する機会も出てきます。そのときの参考にしてもらえるよう、ソウルでは日本語教育実施校で教師や高校生と交流したり、日本からソウルの大学に留学している学生と話をする機会を設けたり、宿泊先も高校生が泊まることを想定してユースホステルを選びました。 今後は日韓の校長交流の場をつくることに加え、これがきっかけで始まった学校間交流が継続、発展するためのフォローアップをしていきます。
韓国の校長の出番!
11月にソウル、仁川、京畿道、全羅南道から10名の校長先生を招聘したプログラムでは、「ガイドブックにない日本を発見する」をテーマにしました。
多様なカリキュラムが選択できる総合高校、グローバル化に向けた取り組みを積極的に行っている私立の中高一貫校、クラブ活動に力を入れている公立高校など、さまざまなタイプの学校を訪問してもらったほか、広島では昔ながらの手法を守り続ける造り酒屋を訪問し、地方の食文化の魅力にもふれてもらいました。
過密スケジュールでしたが、「教育関係者と生活指導、外国語教育、国際交流等について話し合い、両国の関心事や悩みがわかって有益だった」という声があがったように、校長が共通点を知り、日本に対する理解を深めたことは大きな成果でした。
さらに、校長と一緒に招聘した生徒たちが、自分で発見した日本を数枚の写真とキャプションにまとめた作品を学内で発表したり、生徒の記事を広報誌に掲載するなど、ほかの生徒と共有する機会を設けてもらったことで、より多くの生徒に日本のことを伝えることができました。
海外に出て得られること
武内 彰
東京都立日比谷高等学校 校長
日韓校長交流プログラムに参加したことがきっかけとなり、今年3月に韓国のミチュホル外国語高等学校と姉妹校提携を結びました。2016年8月、初めての訪韓で目の当たりにしたのは、高校生たちの学びに対する姿勢です。韓国が競争社会だということは知っていましたが、私たちの生徒たちとは全く違っていました。直に話をして日比谷の生徒に何かを感じ取ってほしいと思いました。
また、本校は2015年4月に東京グローバル10に指定され、ニュージーランドの高校と姉妹校締結をしましたが、英語圏だけではなく、アジアとも接点をもつべきだと思っていたこともあります。さらに、外に目を向けることで、自分が今いる世界は狭いことに気づいてほしいと思っています。
毎年生徒を引率して、アメリカのハーバードケネディスクールを訪れていますが、生徒たちは自分の高校が日本では名が知られていても、世界に出て行けば、誰にも知られていないことに気づくと同時に、世界で活躍する人たちのことを知り、自分の人生観や価値観が大きく変わります。海外との交流での体験は必ず将来につながっていくと思っています。
事業データ
日韓の校長交流プログラム(派遣)
2016年8月6日(土)~9日(火)
韓国・ソウル
東京韓国教育院、神奈川韓国綜合教育院、TJF
ANA
11名
※8月8日(月)に、日韓校長及び教師交流会を国際交流基金ソウル日本文化センターと共催した。
JENESYS2016 韓国高校校長および高校生招へい事業
〔校長〕2016年11月23日(水)~29日(火)
〔高校生〕2016年11月23日(水)~12月1日(木)
東京、神奈川、広島
(一社)国際フレンドシップ協会、TJF
ANA
韓国の日本語教育実施校の校長など10名、生徒22名、引率教師2名、計34名
※事業報告書『CoReCa2016-2017』に掲載。所属・肩書きは事業実施時のもの。