「テンダーさんのその辺のもので生きるオンライン講座」(2021-2023)、「モリトクラシト・メカニクス」(2024-)の講師、テンダーさんを東京にお迎えし、教育に携わる方向けにレクチャー&ワークショップを開催します。
2019年の「教育しか残せない時代に」(東京)で、テンダーさんは「資源を使い果たしてしまった地球にあって、次の世代にはもう考える方法しか残せないから、どうかこれだけは受け取ってほしい」というのが教育に携わる大人の適切な態度ではないかと問いかけました。この5年間テンダーさんとさまざまな技術を扱う講座をご一緒してきましたが、どの回も「考える方法を受け取ってほしい」という姿勢と場のデザインが貫かれていました。もっと言うと、参加者が子どもであっても大人であっても、「その人が考えることを奪わない」という「注意深さ」と「厳しさ」が揺るがず存在していたと思います。「自分で考えることを放棄しない」「考えることを他者に委ねない」のが当然のことという前提がそこにいる人たちに共有されていく場でした。この在り方は、ご本人が概要に書いている「『これについては考えなくて良い』という思考のブラックボックス」をつくらないということにもつながっているのだろうと思います。
テンダーさんの講座を「思考のブラックボックスを作らない」場として成立させている要素には、草や竹など身近に存在する確かな手触りのあるものを扱うことからスタートすること、ものごとを誰かが設定した領域や解釈からではなく目の前の現象から捉えていくこと、ものごとの構造や連鎖を見ていくことなどがあるように見えます。ですが、それだけでもなく、もっと奥行きや広がりがありそうです。
今回は、テンダーさんが今たどり着いている「環結する世界」について具体的にお話しいただくとともに、その実践の一端を体験するワークショップを行います。さまざまな教育現場で日々実践を重ねるみなさんとこの場をご一緒し、テンダーさんのお話とワークショップを手がかりに何を考え、発想するか、意見を交換させていただけることを楽しみにしております。お申し込みをお待ちしています。
【レクチャー】
「大地は教室 – 『考えない』を作らない、竹・草・土・石から始める環結する学びの世界」
これまで私は環境問題に関わる18年の中で、北米先住民技術、デジタルファブリケーション(3D設計やプリント)、機械設計と鉄工を学び、民間での教育プログラム提供をしてきたが、より「リアリティのある」技術を獲得したくて竹編みを始めた。
竹林に入り竹を切り、運び出した竹を加工し、裂いた竹を編み、かごを作る。3歳の竹から数十年は保つ立派なかごができ、竹の残骸は燃料として煮炊きに使う。
この一連はゴミを一切出さず、売り物までできるのにまるで環境を蹂躙しない。そんな技術と世界があるとこの歳にしてようやく知った。こういったある種の古い技術に内在する完全さに「環結(かんけつ / 完結)」という造語を充てたい。
はたしてこれまで、自分はどのくらいこの竹編みのような「環結する世界」に触れた経験を持っていただろうか?
かたや多くの講座や授業では、「プラ製の朝顔育成キット」のように、何から作られ・どこからきたのかわからない教材が目の前に置かれても誰もそのことを考えない。そして使うことを促され、使わなくなれば最終的にはゴミになる。
自分と繋がらない教材が現れた瞬間に「これについては考えなくて良い」という思考のブラックボックスが場に共有されてはいないか。教育の目的は、思考停止を作らないこと、「知りたい」に導かれることではなかったのか。
「単元の内容」だけが教育の目的ではなく、教材の来し方行く末を含め「場に発生するすべての接触と体験」に学ぶものはあり、そこから何を学ぶかを決めるのは教える側ではなく学ぶ側である。そういう認知のもと、「環結する体験」という概念に行きつき、竹・草・土・石から必要なものを賄うプログラム「モリトクラシト・メカニクス」を始めた。 (講師:テンダー)
【新春特別ワークショップ】
「小物入れからドームハウスまで! 竹編みと縄ないを覚えて タダでなんでも作れる大人になる」
レクチャーの内容を踏まえ、実際に竹を編んだり縄をなってものを作りながら「完結する学びの世界」の一端をご体験いただきます(竹のドームを作る予定です)。このワークショップは、レクチャーとセットで行われます。
ご用意いただくもの
1) 軍手
2)はさみ(草を切るのに使います)
3) 室内履き(会場にはスリッパ等ありませんので、各自でご用意をお願いいたします。
*ご用意いただくものは、随時変更・追加の可能性があります。その場合はこのサイトでお知らせしますのでご確認をお願いします。
◾️ 講師・テンダーさんのプロフィール
鹿児島県日置市で、環境問題を解決するための工房「ダイナミックラボ」を運営。システム思考、オープンソース、非暴力コミュニケーション、先住民技術、適正技術等の人類の叡智を核に、考え、実践・実現し、伝えることを繰り返している。
「石器時代の古い技から鉄を使った機械設計まで、たくさんの技術の中からちょうどいいものを選ぶ練習をしています。ちょうどいい技術はお金もかからず、自然を壊さず、誰にも嫌な思いをさせずに問題を解決できると考えています」(本人談)
2021年2月〜2023年3月まで「テンダーさんの『その辺のもので生きる』オンライン講座」(TJF主催)、2024年より鹿児島県日置市を拠点とした「モリトクラシト・メカニクス」(同)の企画・講師を担当。
著書に「わがや電力 12歳からとりかかる太陽光発電の入門書」(ヨホホ研究所)。
【実施概要・お申込み】大地は教室 – 『考えない』を作らない、竹・草・土・石から始める環結する学びの世界
日にち 2025年1月19日(日)
時間 13:00 – 16:30 (途中休憩を含む)
*5分前までに受付をすませてください。
*終了時刻は、多少延長になる可能性があります。
桐朋小学校
(東京都調布市若葉町1-41-1)
◆アクセス情報はこちら
*国立市の桐朋中学校・桐朋高等学校とは場所が異なりますのでご注意ください。
*桐朋小学校へのお問合わせ(電話、メール等)はご遠慮ください。
ご質問等は下記国際文化フォーラムの担当者宛にお願いいたします。
学校の内外で小中高校生の教育活動に関わっている方・関心のある方
(教職課程で教えている方、教育を学ぶ学生の方もぜひご参加ください)
20人程度
無料
下記よりお申し込みください。
お申し込みはこちら
2025年1月10日(金)
*定員に達した時点で締め切ります。
【重要】お申込みの前にご一読をお願いします。
1. 録画・撮影および画像・映像の利用について
国際文化フォーラム(TJF)は、活動の様子および参加者が制作した成果物等を、写真と動画で記録します。
・撮影した写真および動画は、本プログラムおよびTJF事業の広報活動*(告知や報告を含む)に使用することがあります。
・使用にあたっては、個人名が特定されないようにいたします。
・本名や所属先を掲載する場合は、あらかじめご本人の了承を得ることとします。
*本プログラムTJF事業の広報に利用するおもなメディア
TJFのウェブサイト http://www.tjf.or.jp/
同 Facebook https://www.facebook.com/TheJapanForum/
同 インスタグラム https://www.instagram.com/thejapanforum_tjf/
同 事業報告書(ウェブおよび印刷物) http://www.tjf.or.jp/publication/coreca/
講師テンダー氏のメルマガやSNS、Webサイトなど https://sonohen.life/
2. ご自身の安全の確保と免責について
今回は危険度の高い作業はありませんが、さまざまな技術を体験し身につける過程では事故やケガなどが発生する可能性があります。
ワークショップ中は、ご自身の安全を十分に確保してください。
*保険について
TJFは、参加中のケガなどに備えてイベント保険に加入しています。保険の詳細はこちらをお読みください。
なお、本レクチャー&ワークショップ実施中および終了後の事故・トラブル(終了後にご自身でワークショップで制作したものを使用したり新たに制作したりする場合を含む)について、TJFおよび講師は一切の責任を負いません。
3. 日程の変更・中止について
下記の状況が発生した場合には、TJFの判断により、講座の日程を変更、または中止する可能性があります。
1) 病気、ケガ、事故およびその他のやむを得ない事情で講師が講座を行えない場合
2) 交通機関が大幅に運行遅延した場合、または交通手段が遮断された場合
3) 自然災害、悪天候などにより、講座の開催に支障が生じた場合
4) その他の重大な事故、及び事件などによりTJFが開催決行を不可能または困難と判断した場合
・水分補給のための飲み物など、必要に応じてご用意ください。
・発熱など体調不良の場合は、来場をご遠慮ください。
公益財団法人国際文化フォーラム(TJF)
担当:室中
japanforum@tjf.or.jp
シリーズ 「モリトクラシト・メカニクス」 について
モリトクラシト・メカニクスは、2024年8月に鹿児島県日置市で小中高校生を対象としてスタートしました(保護者が参加できる回もあります)。
裏山や川で手に入る草木や竹や石などの自然素材を、工具を使って加工し、新たな「道具」を作ることで算数や数学、理科や物理といった教科の内容を楽しい体験として習得するプログラムです。一連の体験を通して、暮らしに必要なものを自ら作り出せるタフさを身につけられるようお手伝いします。
モリトクラシト・メカニクスは、子どもたちが「学校のソト」で次のような経験をする場としてご活用いただけます。
・ 学校で学んだ知識を現実の世界とつなげる。
・ 「自分の暮らしに深く関係しているもの」「人生を助けてくれる知恵」として学びなおす。
・ 五感をつかい、リアリティをともなった探究をする。
・ ものごとの構造と連鎖を捉え、本質的な解決を見出す。
・ ものごとを領域で隔てず、包括的に学ぶ。
◆ これまでに実施した講座
【01】東南アジアの楽器「竹のコリトン」を作ろう
【02】手と木の棒で火を起こす
【03】草から縄をなってアシナカ草履を編む
【04】焚き火の炭で木を彫ってスプーンを作る 「チャコールディギング」
◆ 今後の開催予定
【05】人類はまだ鉄器時代! 鉄板を叩いて丸めて鈴を作る(2025/2/24)
【06】竹を編んで巨大なドームを作る(2025/3/30)