TJFは2012年に「外国語学習のめやす」(以下、「めやす」)を発表し、外国語教育の新たな役割として、多様なことばや文化的背景をもつ人びとが共生する社会をつくり、21世紀を生きていく力を育てることを提唱しました。さまざまな言語で活用してもらうために2013年度から3年度にわたって、中・韓・独・仏・西・露・英・日、8言語の高校・大学の教師を対象とする研修を行いました。そして、55人の「めやす」マスターが誕生しました。
マスターはそれぞれの言語教育の現場で、「めやす」をより広く共有するためにワークショップやセミナー、研修を企画、実施しています。複数のマスターが企画し、言語を横断して開かれることも多くあります。
2016年度は従来の研修に加え、日本語教育専攻の大学院生を対象とする合宿型の研修が実施されたり、大学教員の教育能力を高めるための研修で「めやす」が取り上げられたりしました。
2017年度は、台湾や南米でのワークショップや、オンライン会議システムを使って日韓の会場を結んだワークショップなどが行われます。TJFは引き続きこれらに協力していきます。
海外でも「めやす」が有効な理由
阪上彩子
関西学院大学講師
数年前ロシアで日本語教師対象のセミナーを行っているとき、参加者にこんな質問をされたことがあります。「日本語を勉強する意義がわからないと学生に言われたが、どう返答したらよかったでしょうか」と。確かに、その地域は日本から遠く、日系企業もないため、就職に役に立つわけではありません。文字を覚えたり、母語と違う文法のルールを勉強したりするうちに疲れて、最初には高かった学習意欲も下がってしまったのかもしれません。
そのとき私はあいまいに答えてしまったのですが、今は自信をもって答えることができます。「めやす」について話せばいいからです。「めやす」では外国語教育を人間教育の一環として捉え、グローバル社会を生き抜く力の育成をめざしています。日本語を学ぶことで日本語や日本文化だけではなく、自分の文化を再発見し、グローバル社会への理解も深めることができるから、日本語を学ぶことは必要なのです。
前述したような疑問をもつ教師の方々に向けて「めやす」のワークショップを2016年度はメキシコで開きました。2017年度は、台湾、南米などで実施する予定です。
事業データ
外国語学習のめやす韓国語教師研修
2016年9月3日(土)
東京
めやすマスター、TJF
12名
外国語学習のめやすセミナー
2017年2月11日(土)
大阪
めやすマスター、TJF
30名
大阪大学大学院言語文化研究科主催の日本語夏合宿における「めやす研修」
2016年8月18日(木)
大阪
めやすマスター
TJF
日本語教育における「外国語学習のめやす」研修会
2016年10月29日(土)
宮城
めやすマスター
TJF
立命館アジア太平洋大学のFD研修としての「めやす」研修
2016年11月19日(土)
大分
めやすマスター
TJF
※事業報告書『CoReCa2016-2017』に掲載。所属・肩書きは事業実施時のもの。