稲垣忠・東北学院大学教授を講師に、プロジェクト学習や探究学習について理解を深め、実践力を高めるワークショップを2015年度から実施しています。2016年度は、「探究する学びをデザインしよう―プロジェクト学習でことばと情報をフル活用する単元づくり」と、「プロジェクト学習、探究学習のリフレクション&ブラッシュアップ」を東京で開催しました。
どちらも、「子どもたちが主体的に情報を集め、吟味して、じっくり考え編集、創造し、切実感をもって他者と伝えあう」という情報活用型プロジェクト学習の考え方がベースになっています。
前者は実践経験の有無にかかわらず参加できる内容で、全国から30人の先生方が参加しました。児童・生徒にとってのゴールの設定から始まり、収集・編集・発信の3つのステップを意識した学習活動づくり、学びの質を見極めるためのルーブリックづくりなどに取り組みました。
後者は、稲垣先生が個別にフィードバックできるよう、実践経験者を5人に限定して実施しました。まず、プロジェクト学習デザインの点検シートを使いながら、参加者それぞれが自分の実践を振り返りました。その結果をもとに、「生徒の振り返りを深める質疑応答とは」「学習者が自分の成長を実感するには?」の2点に課題をしぼり、グループに分かれてアイディアをじっくり考えました。
2017年度も同様のワークショップを実施する予定です。ほかの教員向け研修のお知らせも含めて、メルマガやFacebookでご案内します。
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収集・編集・発信の3 つのステップを、インタビュー、観察・実験、
集約、関連づけ、プレゼンテーション、発表、ふりかえりなどの
21 の具体的な学習活動に分けたカードを使って考える。
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「探究プロセスのシミュレーション」「思考x 表現ルーブリックの設計」
「学習活動の詳細化」という4つの演習がバランスよく組み込まれ、
一日でプロジェクト型の単元が設計できるようにデザインされている。
稲垣先生はグループをまわりながら、個別の質問に答える。
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でグループの課題について議論を深める。
*情報活用型プロジェクト学習の詳細は、稲垣先生のホームページをご覧ください。
参加者の声
- 頭のなかでイメージしてきたことを整理しながら書き出すことで、あいまいにしていた部分に気づき、組み立てなおすことができた。
- 子どもたちがやってみたい、意味があると感じられるゴールや活動を考えることが大事だと気づいた。
- 学習活動カードが扱いやすく、全体の構成を考えやすかった。
- ワークショップの構成、進め方、ツールの使い方が参考になった。1 日でこういうふうにプロジェクト学習の計画をつくれるのだとわかった。
- ルーブリックの記述の良し悪し、ルーブリックの質をどう上げるかについてのワークショップもあるといい。
授業の軌道修正のヒントになった
戸上和正
東京大学教育学部附属 中等教育学校教諭(英語)
前年度の情報活用型プロジェクト学習のワークショップで学んだことを生かしながら外国事情の授業でプロジェクト学習に1学期間取り組んだあと、リフレクション&ブラッシュアップのワークショップに参加しました。学習のステップごとに振り返りをし、自分の課題を明確にしてから次に進むということを生徒と共有して授業を進めていましたが、必ずしもピンときていない生徒がいることを感じていました。
ワークショップでほかの先生方のお話をうかがううちに、「説明すれば生徒はわかって、ついてきてくれる」と無意識に思っていたことに気づきました。生徒の学習の出発点も理解度もさまざまなのに、かれらに寄り添うような振り返りができていませんでした。今は、生徒を教師についてこさせるのではなく、様子を見ながら、こちらから個々の生徒の状況にあわせて、フレキシブルにフィードバックをしたり、振り返りを促したりするようにしています。
事業データ
「プロジェクト学習、探究学習のリフレクション&ブラッシュアップ」
2016年8月25日(木)
東京
稲垣忠(東北学院大学教授)
小中高校の教員5名
「探究する学びをデザインしよう―プロジェクト学習でことばと情報をフル活用する単元づくり」
2017年3月26日(日)
東京
稲垣忠(東北学院大学教授)
小中高校の教員約30名
※事業報告書『CoReCa2016-2017』に掲載。所属・肩書きは事業実施時のもの。