公益財団法人国際文化フォーラム

好朋友文化体験の場報告

日本語の授業で制服のデザインにチャレンジ

TJFと大連教育学院が共同で制作した日本語教材『好朋友』が提案する日本語教育をめざし、これまでにもさまざまプログラムを実施してきました。

2018年度は、共同事業の一環として「制服」をテーマにしたプロジェクト「わたしたちの学校の制服をデザインしよう」を実施することにしました。これは、大連市内の中高校の日本語の授業で、生徒が自分の学校の特徴を考えて制服をデザインし、日本語でプレゼンするものです。デザインやそのプレゼンを通して、日本語の運用能力だけでなく、思考力、想像力、プレゼン力を磨くことを目標としています。5月に教師研修、6月から9月にかけて日本語の授業で実施し、11月にプレゼンを行うという半年にわたるプロジェクトです。

第一弾として5月26日に大連教育学院と共催で中高校の日本語教師研修を実施しました。研修には、大連市内から50名、「好朋友日本文化体験の場」*を有する5校から10名、計60名が参加しました。

*『好朋友』を使った日本語の授業に長く取り組んでいる学校と共同で校内につくった日本文化を体験できる場。場所は学校が用意し、TJFは教材・教具や資料を提供するとともに、学校のある地域に暮らす日本人とのネットワークをつくり、日本人とつながる活動ができるようにしている。5校は黒龍江省ハルビン市朝鮮族第一中学、遼寧省大連市第31中学、上海市工商外国語学校、中山市外国語学校、華南師範大学付属第2中学・付属南沙小学校。

研修会場の会議室は先生方で満杯
大連研修 会場全体

研修は、①日本語の活動づくりの理論的バックグラウンドへの理解を深める、②制服をテーマにした日本語の活動に必要な知識の習得と授業案づくりを目的としました。

そこで、日本語の課程標準(日本の学習指導要領に相当)の改訂(2018年1月公表)に関わった北京師範大学の林洪副教授に、課程標準がめざすことについて講義をお願いしました。新課程標準では、学習者の協同学習や自律学習を重視し、その評価方法としてルーブリックを取り入れるとしています。今回の講義でも、教える内容と評価の整合性を図ることや、活動の導入時のテーマ、学習の軸となるシチュエーション(解決すべき問題はなにか)、そして日本語の使用の動機づけとなるタスク(問題解決の方法を考えること)が重要であることを強調されていました。

90分の講義に用意されたPPTスライドは86枚!

次に、制服をデザインするときに必要となるポイントについて、制服製造・販売を行っている株式会社このみの横山豊子副社長に講義をお願いしました。横山氏は、制服のデザインに関わってきた経験から、実物の制服やパンフレットに掲載されている写真を見せながら、「ベースとなるのは、校風や学生らしさ」「毎日着る制服は、見た目だけではなく、制服に適した素材を選ぶことが大切」「ブレザーとスカート・パンツの色の組み合わせ、スカートの長さにも注目」「季節によって制服もアイテムが変わること」などについて話してくれました。

制服のデザインには考えるポイントがたくさんあることを実感

午後は、グループにわかれ、「制服のデザイン」をテーマにした授業案づくりに取り組みました。まず、韓国の仁川大学東北アジア国際通商学科で日本語を教えている岩間晶子講師に、ご自身の日本語教師としての経験から今回の「わたしたちの制服をデザインしよう」プロジェクトに参考になることを話していただきました。岩間氏はプロジェクト型・テーマ型授業の良さは、学生が話したい内容や伝えたいことがあること、また生教材を使うことで自文化との比較だけでなく、自分自身についての振り返りや自分とのつながりを考えることができるからだといいます。また、学習者が今していることとつながるだけでなく将来とつながること、日本語科以外の授業とつながることをめざした授業づくりを大事にしていることも話してくれました。

が今していることとつながるだけでなく将来とつながること、日本語科以外の授業とつながることをめざした授業づくりを大事にしていることも話してくれました。

岩間講師の実践報告に興味津々
知恵を出し合い教案づくりに取り組む
一つひとつのグループをまわってアドバイスする岩間講師

岩間講師の話や、午前の講義の資料、制服のパンフレットなどを参考にしてできた授業案では、さまざまな活動が提案されました。

  • 同級生や先輩、先生に意見をきいてまとめる。
  • インターネットで海外のドラマを見て、流行している制服を調べてみる。
  • 学校創立以来、採用されたことのある制服の写真(卒業写真)をみて、どこは残してどこを直したらいいかを考える。
一人で考えても出てこないアイデアが続々

今後に向けて

研修に参加した先生方は、それぞれの学校で「制服のデザイン」をテーマにした日本語の授業を行い、9月末には各学校の代表1グループ(3-5人)が、自分たちのデザインした制服を紹介するプレゼンを撮影したビデオを提出します。10月に実施するビデオ審査を通過したグループは、11月に予定されている「自分たちの制服をデザインしよう-学習成果発表会」に出場し成果を披露することになっています。成果発表会の様子はまた報告します。

(事業担当:千葉美由紀、水口景子、宮川咲)

事業データ

中高校日本語教師研修

共催

大連教育学院、TJF

期日

2018年5月26日(土)

場所

中国・大連市

助成

(公財)三菱UFJ国際財団

講師

岩間晶子・韓国仁川大学東北アジア国際通商学科講師、横山豊子・株式会社このみ副社長、林洪・北京師範大学外国語言文学学院日文系准教授

参加者

60名