7回目を迎える日韓のことばを学ぶ中高生交流プログラム SEOULでダンス・ダンス・ダンスは、日韓の中学生、高校生の間で関心が高く、親しまれているK-POP等のダンスをテーマに、韓国語を学ぶ日本の中高生と日本語を学ぶ韓国の中高生が、協同活動を通じて互いのことばの学びと交流に対する動機付を高めるプログラムです。日韓の民間財団である国際文化フォーラムと秀林文化財団が共催し、「様々な価値観をもつ人たちがいることを知り、一緒に何かをすることに興味関心が広がっている」「もっと韓国語、日本語を学びたくなっている」等を目標に設定しています。
今回も日韓各20名計40名の中高生がダンス活動やチームロゴの作成、舞台衣装準備のほか、起床から就寝までの共同生活をSEOUL YOUTH HOSTELで5日間行いました。
真剣に楽しめる場をデザインする
ことばの学びや交流の必然性をいかに創出するかを考えて企画したのが、ダンス・ダンス・ダンスです。ポイントは、真剣に楽しめる場づくりにあります。ダンスにこだわりがあったり熱心に取り組んでいたりする参加者は、驚くほど積極的にことばを学び交流に参加します。自分が本当に大切にしていることに必要だと思えば、わざわざ自分を奮い立たせる必要はありません。企画者側に求められるのは、参加者のこだわりや思いに応える場を用意することです。気持ちを削ぐような場づくりをすれば、学びに対する必然性も失われてしまいます。今年は、これまで以上に参加者が活動に真剣になれるような場づくりに努めました。
日本側参加者の事前研修(8月7日/秀林外語専門学校)
日本側参加者20名が渡韓前に注意事項を確認するとともに参加者間の関係を構築し、韓国での5日間を助け合いながら安全に過ごすことができるようにすることを目的に実施しました。参加者が決定してから集合するまでの約2ヶ月間、全員がSNSでの交流を通じて自己紹介やグループでの話し合いを重ねていたので、はじめはぎこちなさも見られましたが、すぐに打ち解けた様子でした。今年から事前研修のファシリテーターをTJFのスタッフから引率教師の先生に変えたことで、参加者と引率の関係も早くから築くことができました。
ソウルでの初日は日韓合同オリエンテーション(8月8日/金熙秀記念秀林アートセンター)
日韓の参加者40名が初めて顔を合わせ、これから過ごす仲間の顔を覚えるための活動を行いました。自己紹介活動に続いて、事前に決まっていたダンスチーム毎にわかれて、チーム名、チームリーダー、発表会で踊る曲の決定や、練習会場や本番までのスケジュールの確認を行いました。今回初の試みとして、過去6回で撮影した本プログラムの記録写真を展示した写真展を開催しました。生徒は写真を見ることでプログラムのイメージをつかんだようです。続いて、発表会場を下見しました。ステージがライトに照らされた瞬間参加者からどよめきがおこり、そして何度もステージの奥行きや横幅を確認する姿が見られました。これから始まるダンスの練習に真剣に取り組むきっかけとなったことは間違いありません。
ダンス練習・買物活動(8月9日/Seoul Youth Hostel、東大門)
本プログラムにダンスのコーチはいません。各チームの練習は、ダンスが得意な参加者がリードして始まります。練習計画の立案やダンスの音源編集、チームロゴ(ポスター)の作成など、役割分担しながら進められます。グループは日韓の参加者それぞれ数人ずつで構成されており、互いのことばが必要になるようにデザインされています。両者をつなぐ通訳者も重要な役目となります。とはいえ、グループ毎のダンス練習初日は、なかなかチームになじめない人もいて手探り状態でした。
午後は、発表会で着る衣装を揃えるために地下鉄で東大門のショッピングモールへ出かけました。今年のソウルは記録的な暑さだったので、建物の中でのショッピング。チームメンバーとの交流を促進する時間となりました。
発表会はもう明日(8月10日/Seoul Youth Hostel、明洞)
朝からダンス練習。皆が大体の振りを覚えて踊れるようになる中、集中力が切れて練習に参加できなかったり、発表会前日のプレッシャーで焦ったり、自分のこだわりが実現できずに悩んだり、どのチームにもさまざまな不安が広がっているように見えました。
昼食は観光地としても有名な明洞で食べました。グループごとに余った時間で街を散策することにしたのがよい気分転換となったようです。戻ってからダンスのリハーサルでは、2チームごとに集まり、互いにアドバイスを出し合うようにしました。ここで曖昧だった課題が明らかになり、また自分の不安も出し合うことができたようです。発表会が翌日に迫った中で突きつけられた悩みや課題に、自然と沸き起こる「大丈夫!自分たちはできる」という仲間の声にそれぞれがそれぞれを励まし 、協力していく様子が感動的でした 。夜遅くまで続く練習では、看護師の先生をはじめ引率の先生が生徒の体調変化に注意を配ってくれました。
本格的ステージで踊る!(8月11日/金熙秀記念秀林アートセンター)
宿舎から金熙秀記念秀林アートセンターまでバスで移動し、発表会直前までダンスの振り付け等の確認が続きました。会場には参加者の友人や家族、プログラム参加者OGOB、団体関係者など60名を超える観客が集まりました。来場者が待ち時間に退屈しないよう、開会までの間、ギャラリーで写真展を見ていただけるようにしたり、ステージのスクリーンで期間中に撮影した写真を投影したりしました。開会と同時にオープニングMOVIEを上映したことで、これからはじまる発表会の期待感が高まりました。
発表は、1:LIKEY/2:7pink/3:木漏れ(こもれ)日(び)/4:キヨミランド/5:Twice/6:プラムの順番で行いました。チームロゴ(ポスター)が入場とともにスクリーンに投影され、ステージが更に華やかになりました。 ダンスは一般客でも楽しめるように各チームそれぞれに工夫されていましたが、なにより友情というスパイスがステージを輝かせ、私たちの胸をあつくさせました。満員の客席から喝采を浴びる参加者の姿がまぶしくみえました。
ひとつだけ思い出そう!(8月12日/Seoul Youth Hostel)
最終日、ソウルでの4日間を振り返り、チームごとに集まって一番印象に残ったことをポストイットに書いて貼るという振り返りの時間をもちました。ポストイット一杯に想いを書き込むひともいれば、ことばにできずひとことだけ大きな字で書くひとも。直前にせまった別れのさびしさに涙ぐむひとも。別れの時間になっても、なかなかバスに乗り込むことができない様子に、困難を共に乗り越えたものの間に育まれる絆を垣間見たような気がしました。
今後の展開
K-POPダンスという共通の関心のもと、多様な個人と出会い、ぶつかり、意見を調整しあいながら発表会に向けた作品づくりに取り組むことで、今年度も参加者にとって必然性の高い交流が実現できました。今年は発表会場に本格的な舞台を用意することで、例年以上に参加者がステージパフォーマンスに向かう意欲を高めることができました。更に、過去6回の記録写真の展覧会をアートセンターにおいて開催することで、これまでの参加者に再会の場を提供できたほか、プログラム関係者以外にも周知を広げることができました。
本プログラムが参加者に与える影響は大きく、プログラム後の人生に力となることはわかっています。しかし、参加者数にはどうしても限りがあり事業効果が限定的なことが課題となっています。参加者枠を拡大したり実施回数を増やしたりすることは難しいですが、今回開催した写真展のように広く一般に参加していただける場を設けたりするなど、より開かれたプログラム作りに挑戦したいと考えています。
(事業担当:中野敦、沈炫旼)
事業データ
SEOULでダンス・ダンス・ダンス2018
2018年8月7日(火)~12日(日)(5泊6日)
東京(事前研修)、韓国・ソウル
財団法人秀林文化財団、TJF
秀林外語専門学校、韓国日本語教育研究会、TJF
公益財団法人日韓文化交流基金
高等学校韓国朝鮮語教育ネットワーク
ANA
国際交流基金ソウル日本文化センター
ジエイエツチシー株式会社
7名(看護師含む)
韓国語を学ぶ日本の中高生
北海道、岩手、秋田、福島、新潟、群馬、東京、神奈川、静岡、愛知、岐阜、大阪、鳥取、山口、長崎
より20名(高校生18名、中学生2名/女子16名、男子4名)
日本語を学ぶ韓国の中高生
江原道、ソウル、仁川、京畿道、忠清北道、忠清南道、慶尚北道、大邱、蔚山、全羅北道、全羅南道
より20名(高校生15名、中学生5名/女子14名、男子6名)