2017年8月12日、TJFの設立30周年記念事業の第一弾として、『にじいろのさかな』シリーズの著者、マーカス・フィスター氏によるワークショップを実施しました。絵本を使った教育活動に関心のある方、40名の参加がありました。ワークショップでは、さまざまな魚を描くことを通じて、多様な存在がいること、多様性のある社会の豊かさを体感する活動を実際に体験し、参加した方々が関わっている教育活動に生かしてもらうことをねらいとしました。
最初にフィスター氏からスイスでの多言語状況などについて話を聞いた後、魚の描き方のレクチャーを受けました。さまざまな魚を描くために、魚の形や大きさ、うろこやひれの形、さらには喜怒哀楽の感情、色をどのように描き分けるのか、実演を交えた話でした。
レクチャー後は、参加者が自分を表す魚を描きます。フィスター氏の「一般的な魚の形にとらわれなくていいですよ。自由な発想で描きましょう」ということばを受けて、帽子を被った魚、ト音記号の形をした魚、ハートのうろこをもった魚などさまざまな魚ができあがりました。
描き終わると、切り取った魚を頭につけ、海に見立てた会場を自由に泳ぎまわります。ひとしきり泳いだ後、ひとりずつ自分がどんな魚かをことばと動作を交えて発表しました。
「私はDigital Block Fish。目立ちたくないのに目立ってしまうから、コンピュータを使って自分の姿を自由に変えたい!」
「私はギターの魚。きれいなメロディーを奏でて泳ぎ回り、みんなを楽しい気持ちにしたい!」
自分とは違う魚が次々と現われ、その自己紹介に驚きの声や笑いそして拍手が起こりました。
最後の質疑応答では、参加者からたくさんの質問が出ました。絵本の主人公を魚にしたのは魚に何か思いいれがあるのかという問いに、フィスター氏は、特に魚が好きなわけではないが、絵本の主人公というとふんわりしたかわいらしいものが多いので、魚を主人公にすることは自分にとってチャレンジになると思ったと答えていました。そして、常にチャレンジすることが描き続けるモティベーションになっているとも語っていました。
また、フィスター氏は自身が暮らすスイス・ベルンの小学校では、多様な文化背景をもつ子どもたちが増えていることで、一つの教室に10人いたら10言語になる場合もあることを紹介しながら、こうした状況は教師にとっても大変なこともあるが、絵を描くときに文化的な違いや国境を越えて来たかどうかも関係ないので、子どもたちが自由に自分を表現することができることと述べました。そしてこの日のような活動をすることで、子どもたちは魚を通じて互いの違いを知って、認め合うことができるのだというフィスター氏のことばに、日本の状況も重ね合わせて多くの人が共感していたようです。
小学校の英語教育に長年携わっている参加者からは、「小学校の英語の時間でも多様な文化背景をもつ子どもたちのことを考えた活動が必要です。今日の活動に子どもたちが喜んで取り組む姿が目に浮かんできました」という感想があがりました。
ほかにも、「日本語指導員の他に地元で小学生向けの塾をやっています。夏期講習中ですが最後にお楽しみ会をやるので、授業の一環としてやってみようと考えています」といった声もありました。