グローバル化が進展するなか、外国語教育は熱を帯びているように感じられます。しかし、英語以外の外国語の科目を開設している高校等は*677校。全体の約13%と決して多くはありません。そしてさらに、学校が多様な外国語を学べる環境をつくろうと科目の設置を考えていても、履修希望者が必要な定員数を満たさず、開講できないこともあるようです。さまざまな言語にふれる機会が少なく、その言語を学びたい気持ちが育たないこともその要因の一つだと考えられます。
さまざまな外国語を学ぶきっかけづくりをテーマに実施している「隣語講座」の一つとして、2018年度から英語以外の外国語科目を設置している学校の生徒を対象にしたオリエンテーションプログラムの提供を始めました。2019年度から選択必修科目「グローバルランゲージ」として5つの言語(フランス語、ドイツ語、韓国語、スペイン語、中国語)を開設予定の都立王子総合高校で、1年生237名に、五つ中二つの言語にふれてもらいました。
TJFがこだわるのは、ことばを学ぶために活動するのではなく、活動をするためにことばを使うこと。各言語の担当講師に、活動を楽しむために自然とことばが必要となるように講座をデザインしてもらいました。TJFが開催している韓国語講座に通う高校生に、韓国語を学ぶ理由を聞くと、「K-POPが好き」「ダンスがしたい」など、ことば自体ではないきっかけがあるからです。
隣語講座では、卓球をしながら中国語でゲームスコアのカウントや応援をしたり、ダンスを踊るために韓国語の前後左右の言い方を覚えたり、楽しそうに取り組む生徒たちの姿が見られました。
講座後に実施したアンケートでは、オリエンテーションが言語選択のきっかけになったと答えた生徒が約94%に上りました。2019年度は王子総合高校のほかにも2校でオリエンテーションに協力します。
*文部科学省「平成27年度高等学校等における国際交流等の状況について」より
中国語
中国語で点数をカウントしたり、応援したりしながら卓球を楽しんだ。
韓国語
K-POPの紹介とダンス。講師のダンスをお手本にしながら一部を実際に踊った。
フランス語
2010 年のドイツ年間ゲーム大賞に輝いたフランス発のボードゲーム「DiXit 」で遊びながらフランス語にふれた。
ドイツ語
ドイツ語にふれながらiPod を利用したオリエンテーションゲームやクイズに挑戦した。
スペイン語
ヨーロッパ屈指のプロサッカーチームであるFCバルセロナのトレーニングの一端にふれた。
ふれて初めて育つ「学びたい」気持ち
角屋 章
東京都立王子総合高等学校教諭
講座での「外国人を交えてみんなでゲーム」という日常にはないシチュエーションは、生徒にとって大きな刺激だったようで、皆楽しそうに取り組んでいました。実施後のアンケートでも、「○○語の体験をして楽しかったから、来年は○○語を選びます」というコメントが多くあがりました。グローバルランゲージの選択に与えた影響は小さくありませんでした。元々生徒たちは国際交流や第二外国語に「楽しそう!」と関心を寄せています。しかし、日常で異文化や外国語と接することが少ないことから、主体的に学べる機会には恵まれていません。とにかく「はじめの一歩」が必要であることを痛感しています。
写真はすべて劉成吉
※事業報告『CoReCa2018-2019』に掲載。所属・肩書きは事業実施時のもの。