日韓の校長交流プログラムは、韓国の校長等教員の招聘と日本の校長等教員の派遣による2度の交流で構成しています。2019年度は、11月21日(木)~24日(日)に、韓国から3校、9名を東京に招聘し、12月26日(木)~29日(日)に、日本から6校、10名をソウルに派遣しました。
それぞれの訪問先では、校長や教師のほかに、日本語・韓国語を学んでいる高校生、留学中の大学生、大学関係者などさまざまな方たちと交流する場を設けました。さらに2019年度から、過去に本プログラムに参加した学校を対象にフォローアップ事業を始めました。2回の交流後に事務的な手続きを含めた会合を持つことが学校間交流の実現に大きく近づくことがわかったからです。
日本での交流
学校訪問1:韓国語を学ぶ高校生と出会う
羽田空港に到着したその足で訪問したのは、空港から近い蒲田女子高校。同校の特徴などについて鈴木一彦先生より説明を受けた後、3つのグループに分かれて、韓国語を学んでいる生徒の案内で校内を見学しました。その後、韓国語学習のきっかけや高校生活などについて質問したり、韓国の高校生の様子を日本の高校生に紹介したりするなど交流しました。
本プログラムでは最初に高校生に出会ってもらうことにしています。一生懸命韓国語で説明する姿に感動し、自分の生徒と交流させたいと思う先生も多く、このインパクトが学校間交流の第一歩となるといっても過言ではありません。
学校訪問2:教師と情報交換
2日目は東京都立王子総合高校を訪問。仁井田孝春校長から、総合学科高校のシステムや特徴について説明を受けた後、教師の案内で校内を見学するほか、学校ごとにグループにわかれ、各グループに王子総合高校の教師が1名加わり昼食をとりながら交流しました。韓国では現在、自立的な学習を促すための教育改革に取り組んでいることもあり、総合学科のシステムに関心を寄せていました。
大学職員、留学生に話を聞く
韓国からの留学生の案内で上智大学四ツ谷キャンパスを見学したのち、上智大学、拓殖大学、明治大学の大学職員7名、それぞれの大学の留学生4名と交流しました。2018年度の派遣時に韓国の大学関係者から話を聞く機会を設けたところ好評だったことから、今回は日本招聘時でも試みました。日本留学を考えている生徒のために貴重な話が聞けた、韓国からの留学生の話は具体的でたいへん参考になったと感想があがりました。
日韓の校長および教師交流会
12月の派遣プログラムに参加予定の東京、千葉、兵庫、岡山の5つの高校の校長、教師が参加しました。3つのグループに分かれて、20分程度交流した後はグループをかわり、全員と話ができるようにしました。事前に日韓両言語に翻訳した学校紹介資料を参照しながら、学校の教育目標やカリキュラム、交流に対する考えや意向についてやりとりしました。
韓国での交流
学校訪問1:日本語を学ぶ高校生と出会う
仁川空港に到着後、一番に訪問したのは、日本語を第二外国語科目として設置している廣南高校です。まず日本語教育の状況について同校日本語教師の黄貞姫先生から説明を受けたあと、生徒による童話『桃太郎』の口演と詩の朗唱を聞きました。生徒の流暢な日本語に驚いたのはもちろん、桃太郎にゆかりのある岡山からの参加者にとってはうれしい出会いとなりました。
その後、4つのグループに分かれ、日本語を学ぶ高校生の案内で学校を見学した後、日本語学習のきっかけや高校生活などについて質問したり、日本の高校生の様子を紹介したりして交流しました。
大学関係者および留学生との交流
高校卒業後、韓国の大学への進学を希望する生徒が増えてきていることから、生徒のキャリアデザインを考えてもらうことをねらいとして、2018年度より大学の関係者と話をする場を設定しています。2019年度は韓国外国語大学、延世大学、韓国カトリック大学の3校の大学関係者及び留学生とそれぞれ20分程度の交流を行いました。韓国の大学職員から留学のための説明や、留学生の実体験が紹介されました。その後、韓国外国語大学キャンパスを見学し、韓国の大学生活の一端に触れました。
日韓校長及び教師交流会
日本の6つの高校と、韓国の6つの高校が、1回15分程度の1校対1校の交流を行いました。11月につづく2度目の交流となる学校が多く、具体的な交流について話をするところもあり、多くの学校が今後も互いに連絡しあうことを約束していました。
韓国のユースホステル・市内見学
このプログラムでは、学校交流が始まったときのことを念頭に、想定される行程を先生方に体験してもらうことにしています。宿泊先をユースホステルにしているのも、地下鉄に乗り、スーパーマーケットで買い物をするなど市内をめぐるのもこのためです。こうすることで、生徒の訪韓が具体的にイメージできるようになるのです。
フォローアッププログラム
12月の派遣プログラムにあわせてフォローアッププログラムを実施しました。2018年度の校長交流プログラム参加者が韓国に渡航し、事務的な話に結び付けたことで、すぐに教師交流の話がまとまり、2020年1月に釜山の高校から8名の先生方を迎え交流しました。今後も交流が続くことが期待されます。
プログラムを終えて
招聘事業では、これまで韓国の高校の校長に日本語教師1名が同行してきましたが、今回は2名にしました。校内で日本の学校との交流を推進するためには他教科の教師の後押しが重要であることがわかったからです。また、これまではグループにわかれて交流するときに、できるだけ多くの人たちと交流してもらいたいという思いから、1グループを複数校で構成していました。しかし、複数校の場合、具体的な話になりにくいという課題がありました。そこで、今回は、学校間交流に直接つながる機会となる日韓校長及び教師交流会(12/27)や韓国の中等教育で活躍する日本語教師との交流会(12/28)は参加者人数を調整し、1人対1人の環境を整えました。結果、交流を通じて具体的な話へと進展するケースが増えるなどの成果を得ました。
(事業担当:中野敦)
事業データ
日韓の校長交流プログラム
東京韓国教育院、神奈川韓国綜合教育院、韓国国際交流財団、国際交流基金ソウル日本文化センター、TJF
李熙健韓日交流財団
ANA
(株)HANATOUR JAPAN
●韓国の高校校長等招聘
2019年11月21日(木)~24日(日)
東京
韓国・京畿道、ソウル、釜山の3校9名
(交流会に日本側からは東京、千葉、兵庫、岡山より5校9名が参加)
●日本の高校校長等派遣
2019年12月26日(木)~29日(日)
韓国・ソウル市
東京、千葉、兵庫、岡山より6校10名
(交流会に韓国側からは京畿道、ソウル、釜山より6校15名が参加)