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TJFは2024年、「とやまPCAMP」の立ち上げに先立ち、「多文化×芸術」をコンセプトに、2月9日~11日の日程で、富山市民文化事業団、富山市との共同主催による三つのワークショップ(WS)を開催しました。
【WS1】多文化パフォーマンス交流会(2/9、留学生対象)
【WS2】多文化演劇体験ワークショップ(2/10、市民対象)
【WS3】多文化ティーチングアーティスト(TA)研修(2/11、舞台実演者等対象)※本稿


三つのワークショップは、いずれも富山県及び周辺地域の皆さまに「多文化×芸術」ワークショップの体験を通してPCAMPについて理解を深めていただくとともに、主催側も参加者と一緒に富山県の多文化共生の現状について学び、「多文化×芸術」がどのように地域の多文化共生につながっていけるかを共に考える場として企画しました。
ここでは実演者等を対象とした【WS3】についてレポートします。

【WS3】多文化ティーチングアーティスト(TA)研修
- シアターエデュケーションとは?
- ティーチングアーティストってなに?
- 「多文化×芸術」ってどのようなコンセプト?
- アーティストはどうやって地域の多文化共生や社会包摂に貢献できるの?
- ファシリテートのコツを知りたい!
そんなテーマや関心事について、体験的、対話的、ケーススタディ的に学んでいただくためのプログラムを組みました。舞台芸術の実演者や大道芸パフォーマーを中心に、小学校教員志望の大学生、放送部全国大会で優勝経験を持つ高校生まで、計12名が参加しました。
【WS3】のプログラム
富山の多文化共生について学ぶことから
「多文化×芸術」について体験的に学ぶ前に、まず「富山の多文化共生の現状について」の30分レクチャーを聴講してもらいました。講師を務めた宮田妙子さん(NPOダイバーシティとやま代表)によりますと、富山県には100万人弱と言われる人口の2%に当たる約2万人の外国系住民が住んでいて、コミュニティもでき、地域住民との交流や防災ボランティアで活躍している方も多いそうです。そして、日本文化と異なった多様な「あたりまえ」を受け入れていくことが共生につながる、と参加者に伝えていました。


ウォーミングアップとアイスブレーク
他の二つのワークショップ同様、身体を動かしながら心理的距離も縮めていくというアクティビティを体験してもらいましたが、研修という位置づけから、体験したワークをどのように発展させるのか、参加者にグループで考えてもらい、試してもらい、発表してもらう活動も織り込みました。



世界地図と世界旅行
フロアーを世界地図と見立て、どこに行きたいか、そこで何をしたいか、移動したり、ポーズを取ったり、説明したりして表現してもらいました。仲間が行きたいところにも行ってやることを真似たり、想像力をフル活用しながら世界旅行を楽しんでもらいました。



10年後の自分
世界地図と世界旅行のアクティビティは、叶いたい夢、未来の自分を思い描くことで、「10年後の自分」についての作品づくりの伏線となっていました。
- 10年後に実現したいこと、実現したらいいなと思うことを紙に書き出す。
- それをもとにベスト10を選んで新しい紙に書いてグループ内で共有する。
- 自分ではないグループメンバーの「10年後の自分」を一つ発表する。(この時点ではまだ誰の将来なのか聞いている人には分からないようになっていて、想像を掻き立てられます。)
- 10年後なりたい自分を一つ選び、新しい紙に簡潔に書き出して発表。
ここで初めてどの人がどの夢を持っているのかが種明かされ、聞いている人の想像通りだったのか、意外性があったのかを楽しみ、一人ひとりへの理解が深まっていきます。 - 最後にグループメンバーが10年後にばったり再会するシーンを劇にして発表する。
最後の発表では、あの時(2024年2月11日)のワークショップで語り合った「10年後の自分」の姿になっているのか、お互い何をしているのかを見ている人にもわかるように表現してもらいました。さすがはパフォーマーたち。どれも即興性、臨場感たっぷりの作品に仕上がっていて、観ている人を大いに楽しませました。



発表後、「演じている最中に、本当に10年後にこうして再会している、という気持ちになり、劇の中であってもリアルな嬉しさを感じました」という声が複数の人からあがりました。2日目のメインアクティビティであるI am fromは思い出や経験など、自分を形作る過去と現在にウェートがおかれているが、自分の近未来を想像して表現する「10年後の自分」というアクティビティも、その人の大切に思っていること、夢、希望、憧れなどを知ることができ、温かく励まされる作品となっていました。



ディスカッション
研修ということで、さまざまなアクティビティを体験したもらったあと、シアターエデュケーションのためのワークショップについて、以下の問いから参加者とディスカッションする時間を設けました。
- 一般的な演劇やダンス講座とどう違うのか。
- TA(ティーチングアーティスト/ファシリテーター)とはどのような存在なのか。
- どんな場を作ることが大事か。
- プログラムをつくるうえで大切なことは何か。
- 発表の質についてどう考えるか
ファシリテーター経験の有無に関わらず、参加者の皆さんは真剣に考え、積極的意見を発表しあいました。今回のようなワークショップの目的、意義については、作品づくりを通して「自分と向き合える」「他者と共有してつながっていける」「この場にいていいんだ、という空間、場所をつくるのが大事だとわかった」などの意見に集約されました。



【WS3】の振返り
参加後アンケートには、「楽しかったこと、おもしろかったこと、学んだこと」として以下のコメントが寄せられました。(以下、現文のまま)
- 参加される方々のことを知ること、コミュニケーションをとること、表現すること、表現を見ることが興味深く、楽しかった。
- 10年後の自分から創作したのが大変面白かったです。何より安心安全でリラックスして楽しめる場でした。
- 心を開いて、心がつながって、居場所になっていく、あたたかな時間でした。もっとたくさんの人に知ってもらいたい。興味をもってもらいたいと心から思いました。もっと広める!
- 最初から最後まで全部楽しかったのです。他人のこともよく知り、自分のことも示すことができてうれしいです。
- 他己紹介が面白かったです。人を紹介しているのに、その人が浮かび上がってくる。コミュニケーションの原点かなと思いました。
- バースデーライン!(注:ことばを使わないで誕生日順に並べるアクティビティ)上演を目的としない演劇ワークショップがあることをはじめて知った。
- 心も体も解放できて、振り返れたことで、皆さんと多くを共有し、学びが多かったです。 ・ちょっとしたお芝居ができたこと。みなさんの空間の使い方が上手で勉強になりました。

一方、難しかったこと、困ったことについては、以下の意見が出ました。
- 10年後の自分、自己開示。少しブロックがかかっていました。書き出した後で、そのことに気づけてよかった。
- 日本語が下手でつうじるかなってすごく心配だったんですが、みなさんがよく聞いてくれたり、分からなかったことを説明してくれたので、困りませんでした。
- ありませんでした。楽しすぎて困っちゃう。 ワークショップについて考えるのが難しかったです。
自由記述の欄には以下のコメントが書かれていました。
- 自分も演劇ワークのファシリテーターになりたいです。自分はそのための勉強がしたいんだなって改めて思いました。
- 多文化×芸術はダンスが好きな自分、たくさんの個性とぶつかる、働く自分の大きなテーマでもあります。
- 今回は海外ルーツの方が2名でしたが、もっと多文化、多国籍のワークショップにも参加してみたいと思いました。まったく言葉が通じない方とも交流してみたいです。ワークショップにおいて気を付ける点を伺えてよかったです。
- また参加したいと思います。
- 締め切ぎりぎりだったけど応募してよかったです!
今後の予定
TJFとオーバード・ホールのはじめてのコラボ企画である三つのワークショップ(WS1:留学生対象、WS2:市民対象、WS3:実演者等対象)は、参加者の皆さんに安心して表現したり人とつながったりすることの楽しさ、演劇や身体表現の面白さに気づかせ、特に実演者等対象のWS3(TA研修)では、さまざまな学びが起こり、3日間の連続ワークショップを締めくくることができました。
そして、次のTJFとオーバード・ホールのコラボ企画である多言語・多文化交流「パフォーマンス合宿 in 富山」(愛称:とやまPCAMP2024、8月8日~11日)に繋げていきます。とやまPCAMPは海外ルーツを含む富山県内及び周辺地域在住の多様な中高校生年代を対象に開催します。
PCAMP担当 長江春子
事業データ
- 主催
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公益財団法人国際文化フォーラム(TJF)、公益財団法人富山市民文化事業団、富山市
- 日時
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2月11日(日)10:00~16:00
- 会場
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富山市民芸術創造センター 大練習室4
- 対象
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シアターエデュケーションについて学びたい富山県内及び周辺地域在住の芸術実演者等
- 参加者:
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12名(舞台芸術や大道芸のパフォーマーを中心に、小学校教員志望の大学生、放送部全国大会で優勝経験を持つ高校生を含む)
- ファシリテーター
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柏木俊彦(俳優、演出家)
田畑真希(振付家・ダンサー)
- 講師
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宮田妙子(射水多文化子どもサポートセンター代表。NPO法人富山国際学院理事長、NGOダイバーシティとやま代表)