EVENT REPORTS実施報告

「多文化×芸術」ワークショップ in 広島_【WS1】開催レポート

「多文化×芸術」ワークショップ in 広島_【WS1】開催レポート

2024.09.24

対象
演劇教育等関係者
参加費
無料
期間
2024年6月23日(日)
TJFは「ひろしまPCAMP2024」(広島県福山市にて8/19-22の日程で実施)のプレイベントとして、6月23日から25日の3日間、それぞれ演劇教育等関係者【WS1】(本稿)、小学生【WS2】、小学校教員【WS3】、中学生【WS4】を対象とする計4つのワークショップを実施しました。

PHOTOS

TJFは「ひろしまPCAMP2024」(広島県福山市にて8/19-22の日程で実施)のプレイベントとして、6月23日から25日の3日間、それぞれ演劇教育等関係者【WS1】(本稿)、小学生【WS2】、小学校教員【WS3】、中学生【WS4】を対象とする計4つのワークショップを実施しました。

今回の連続ワークショップでは、次の4点を主な目的としました。
①「多文化×芸術」がどのように地域の多文化共生につながっていけるかを共に考える場を作る➁地域の方々にワークショップでの体験を通してPCAMPについて知ってもらう
③「ひろしまPCAMP2024」の開催地である福山市の多文化共生の現状について学ぶ
④小中高校生、そして小中高校生の教育に関わる大人たちにシアターエデュケーションを経験してもらう

ここでは、演劇教育関係者等を対象とした【WS1】をレポートします。

【WS1】ティーチングアーティスト(TA)研修

WS1には、教育関係者、芸術活動関係者、大学の教員、中学校の教員、一般市民、大学生を含め、計17名が参加しました。次のテーマや関心事について、体験的、対話的、ケーススタディ的に学んでもらうためのプログラムを組みました。

  • シアターエデュケーションとは?
  • ティーチングアーティスト(TA)ってなに?
  • 「多文化×芸術」ってどのようなコンセプト?
  • アーティストはどうやって地域の多文化共生や社会包摂に貢献できるの?
  • ファシリテーションのコツを知りたい!

また、「多文化×芸術」をコンセプトとする活動の理解者、実践者を増やし、地域の多文化共生に日常的、恒常的に関わっていく人材を地域で育成するとともに、参加者の方々に「ひろしまPCAMP」 についても知ってもらうことを目標としました。

【WS1】のプログラム

ウェルカムボード

3枚の模造紙を貼り、それぞれに「自分を動物に例えるなら」「ソウルフード」「雨の日といえば」のお題を書き、開場からワークショップ開始までの間、参加者一人ひとりにお題の答えをポストイットに書いて模造紙に貼ってもらいました。この活動はPCAMPの参加者にもやってもらっていることであり、来場者の緊張をほぐし、コミュニケーションの掴み効果を狙ったアクティビティですが、実はワークショップ本番での活動内容の伏線にもなっています。

1分間あいさつ

「1分間で、ここにいる参加者全員とあいさつしましょう」というお題でWSは始まりました。次々と相手を見つけてあいさつを交わさないといけないので、皆さんは必死に動き回り、会場内は笑顔と活気で溢れ、一気に盛り上がりました。

ウォーミングアップとアイスブレーク

参加者が身体を動かしつつ緊張をほぐし、互いに知り合うために、まずはノンバーバルコミュニケーション(言葉を使わないコミュニケーション)のアクティビティを行いました。楽しい音楽に合わせてファシリテーターの田畑さんの動きをみんなで真似していく「真似っこダンス」、ファシリテーターの掛け声に合わせて腕や頭など全身を使って1本足から5本足までポーズを決める「何本足ポーズ」、足の爪先と爪先、人差し指と人差し指、頭と頭を突き合わせてペアをつくる「toe to toe」、田畑さんが演奏するフエの音に合わせて体を動かしたり止まったりする「フエダンス」、相手の顔を一定の距離を保ちながら掌で操る「ハンドパワー」などにじっくり取り組んでもらいました。参加者の表情は最初よりも豊かになり、toe to toeで全員が「合体」する時はお互いに「こっちだよ!」「もう少し!」「いい感じ!」と声を掛け合うなかで自然と一体感が生まれていました。

レクチャー:福山市の多文化共生の「いま」

たっぷりと身体を動かし、心と身体の距離を縮めたところで、次は宮野宏子さんによるレクチャーの時間です。福山市に実際どれくらいの外国人が住んでいて、どのような事情で日本に来ているのか。また外国につながる子供たちを取り巻く現状と、彼らが福山で学び成長していく過程で大人は何ができるのか、などについて「びるど」の活動の経験を交えながら話してもらいました。地元からの参加者が多い中、「こんなにたくさんの外国籍の人が福山に住んでいるとは知らなかった」と驚く方も。

Cross the circle

メイン・アクティビティに入る前に、もう一度場をほぐす意味で「Cross the circle」を行いました。参加者全員が一つの大きな輪になって立ちます。Aさんは自分から遠いところに立っているBさんの名前を呼び、Bさんのところに移動。続けてBさんは自分から遠くに立っているCさんの名前を呼び、Cさんのところへ移動・・・(アクティビティの名前通り円を横切る動きになる)。それを繰り返して最初のAさんに戻ったところで終了です。一周出来たら、もう一度同じ順番で、同じ人の名前を呼んで2周ほど繰り返し、自分のことを呼んでくれる人と自分が呼ぶ人のことを覚えていきます。みんなが戸惑うことなく呼び合えるようになったら、次のステップでは相手の名前の後に自分の好きな食べ物を続けて言って全員で回していきます。その後はお題を変えて名前の後に自分の好きなところを言う、などして何度か繰り返します。そうやっていくうちに、自然とみんなの息が合ってきて、テンポよく進めるようになります。このアクティビティはお互いのことをより知っていくと同時に、実はメイン・アクティビティの「I am from」への道慣らしでもあるのです。

メイン・アクティビティ:I am from 体験

「I am from」は地域版PCAMPで中高校生の参加者にやってもらっているメイン・アクティビティ。アメリカの多文化演劇教育の現場で活用され、PCAMPにも取り入れています。事前にいくつかのお題(キーワード)を書き込んだワークシートを準備します。参加者はそのワークシートのお題に沿って自分の思い出や経験、大切にしていることを書き出し、各フレーズの頭にI am fromをつけてポエム風に表現します。この作業によって、参加者は改めて自分は何者なのか、自分のアイデンティティは何かを確認していきます。そして、できあがったI am fromを朗読して共有したり、グループメンバーのI am fromからいくつかのエピソードを組み合わせて演劇作品にしていきます。

このワークショップで用意したI am fromのお題は次の4つです。

  • ソウルフード/子供の頃好きだった家族の手料理、(誰かと)よく食べた料理、など
  • うた/好きなうた、くちずさむうた(誰かと聞いた思い出のうた)、など
  • そら/(誰かと見た)思い出のそら、など
  • わたしの2025/わたしの少し先の未来、夢、希望、など

3つのグループに分かれた参加者たちは、各自が書いたI am fromをシェアし、どのストーリーを選び、どんなふうに表現するかアイデアを交わしていきます。ファシリテーターとスタッフからなる運営チームで作ったデモ作品を見てもらい、演劇的要素を盛り込む際の参考にしてもらいました。

最後は発表の時間。一人ひとりが主人公でありながら、メンバーの物語がつながって一つの作品になっていました。セリフ、歌、情景描写、ユニゾン……。参加者は個性とチームワークの両方を発揮してのびのびと表現していました。全チームの発表が終わったあとは、ファシリテータ―の柏木さんによる、今回のTA研修の種明かしの時間をもちました。各アクティビティがどのような効果があり、次のステップにどう影響するのか、WSの全体がどのようにデザインされているのかを説明してもらいました。

【WS1】参加者の声

  • 他の人のI am fromを理解していく過程が嬉しかったです。演じたことがない人にとって、恥ずかしさを感じない内容になっていて、よかったです。
  • 最後の発表会が楽しかったです。普段役者や演出をやっているのですが、チームメンバーの豊富な想像力に触れて、勉強になりました。
  • 〇本足が楽しかったです。壁がとれてその後にワークに入り込みやすかったです。
  • 自分を語ることは、演劇を好きか嫌いかにかかわらずみんなやりたいことなのではないかと思うので、I am fromはそれをやりやすく、共有しやすくするとても良いツールだと思いました。ぜひ実践したいです。
  • 「多文化共生とは個人個人が出会うこと」というお話が興味深かったです。
  • ファシリテーター向けのワークショップがなかなかない地域なので、こんなにたくさんの参加者がいることに嬉しくなりました。
  • 人に興味を持つこと、それが今の子どもたちには欠けていると感じるので、この研修はとても有用だと感じました。
  • 一連のウォーミングアップ、I am fromを作り上げるプロセスが面白かったです。

【WS1】を終えて

最後の振返りでは、ワークショップについての感想だけでなく、普段どのような活動をしているのか、一人ひとり語ってもらいました。よく知っている方同士でも新たな一面が見えたり、それぞれの現場での遣り甲斐や悩みが打ち明けられたり、誰かの創意工夫がみんなの参考になったり・・・・・・。TA研修は予め用意されたプログラムを通じて学ぶだけでなく、参加者同士の語らい、対話からも互いに学び、共に成長する場となっていました。

担当 長江春子、シムヒョンミン

事業データ

主催

公益財団法人国際文化フォーラム(TJF)

日時

6月23日(日)13:00~18:30

会場

西交流館 本庄コミュニティセンター

対象

シアターエデュケーションや演劇・ダンスワークショップのファシリテーションについて学びたい広島県及び周辺地域在住の舞台芸術実演当者等(ファシリテータ―未経験者も―含む)

参加者

17名(教育関係者、芸術活動関係者、大学の教員、中学校の教員、一般市民、大学生を含む)

ファシリテーター

柏木俊彦(俳優、演出家)
田畑真希(振付家・ダンサー)

講師(多文化レクチャー)

宮野宏子(びんご日本語多言語サポートセンター「びるど」代表)

SHARE

  • Twitterでシェア
  • LINEで送る
  • Facebookでシェア
  • WeChat
  • KakaoTalkで送る