
「多文化×芸術」ワークショップ in 広島_【WS2】開催レポート
2024.09.24
- 対象
- 外国につながりを持つ小学生
- 参加費
- 無料
- 期間
- 2024年6月24(月)
PHOTOS
TJFは「ひろしまPCAMP2024」(広島県福山市にて8/19-22の日程で実施)のプレイベントとして、6月23日から25日の3日間、それぞれ演劇教育等関係者【WS1】、外国につながりを持つ小学生【WS2】(本稿)、小学校教員【WS3】、中学生【WS4】を対象とする計4つのワークショップを実施しました。
今回の連続ワークショップでは、次の4点を主な目的としました。
①「多文化×芸術」がどのように地域の多文化共生につながっていけるかを共に考える場を作る➁地域の方々にワークショップでの体験を通してPCAMPについて知ってもらう
③「ひろしまPCAMP2024」の開催地である福山市の多文化共生の現状について学ぶ
④小中高校生、そして小中高校生の教育に関わる大人たちにシアターエデュケーションを経験してもらう
ここでは、外国につながりを持つ小学生を対象とした【WS2】をレポートします。

【WS2】呉市立白岳小学校児童向けWS
WS2には、インドネシア、中国、ミャンマー、ブラジル、ベトナム、フィリピン、ネパールにつながりを持つ白岳小学校の2年生~6年生の児童20名が参加しました。学校で子供たちの国際教室を担当している江口修三先生によると、子どもたちは、普段それぞれのクラスで授業を受けていて、 各人の日本語力等に応じて、国際学級でも授業を受けているそうです。また週に1度放課後に集まり、宿題をしたり読書したり全員で活動したりして過ごしているとのことでした。普段のクラスではどうしても萎縮してしまう子どもたちが多く、ぜひこの時間では思いっきり自分を出して解放されてほしいという江口先生からのリクエストを受け、このワークショップは次の3つを目標にしました。
- 異学年の子どもたちが心と体を解放し、仲間としてつながること
- うまく表現できなくてもお互いに補い合いなが一つのもの(作品)をつくれた体験をすること
- 「つながり、受け止められた」「相手のことを意識しながら行動できた」とことでエンパワメントできた経験をしてもらうこと
【WS2】のプログラム
ウォーミングアップとアイスブレーク
日本語を聞いたり話したりすることが苦手な子でものびのび参加でき、自然と心と身体がほぐれるようなアクティビティで構成されていました。まずは「まねっこダンス」から。身体の柔らかい田畑さんのしなやかな動きを見て、子どもたちが思わず「すごい!」と声を上げます。慣れない活動に最初はクスクス笑っていた子どもたち。低学年の子ほど夢中になって動きを真似っこしていきます。次はWS1でも登場した「stop&go」、ファシリテーターの掛け声に合わせて腕や頭など全身を使って1本足から5本足までポーズを決める「何本足ポーズ」、田畑さんが演奏するフエの音に合わせて体を動かしたり止まったりする「フエダンス」を続けて行いました。
体育館という開放的な空間で、子どもたちは大声で笑ったり、独奏的なポーズを見せ合ったりして楽しんでいました。高学年の子たちは少し恥ずかしそうにしている様子も見受けられました。「5本足になる!」「もっと早く、もっと小さくなる!」など、掛け声の日本語があまり理解できず戸惑う参加者もいました。そういう時は江口先生と他の支援員の方々にフォローしてもらいました。



メイン・アクティビティ
前半でたっぷり身体を動かし、心と身体の距離を縮めてから、メイン・アクティビティである「ハンドパワー」(相手の顔を一定の距離を保ちながら掌で操るアクティビティ)と「氷ダンス」(動きの途中の氷のように固まり、ペアの人が体を絡ませて「溶かす」アクティビティ)に移ります。ことばによる説明があまりなくても、子どもたちはファシリテーターの柏木氏さん田畑さんの動きを観察して、少しずつルールをつかんでいきます。ハンドパワーも氷ダンスも、やっている最中は「話さない」が基本ルール。アクティビティが始まると、体育館が一気に静かになり、子どもたちはみんな集中モードに入りました。
ハンドパワーでは小学生ならではの柔らかい身体能力を使って、いろいろな方向へと身体を動かしていました。背後や横にいる相手の姿が完全に見えなくても、声をかけなくても、触れ合う二人の息でリレーがつながっていく氷ダンス。やっていくうちにみんなとても真剣な顔になっていました。二つのアクティビティとも、どんどん新しい人とペアを組んで続けます。最後は「ハンドパワー」と「氷ダンス」を掛け合わせた動きを2つのグループに分かれて順に発表してもらいました。一緒にやる人数も、「ハンドパワー」から「氷ダンス」に切り替えるタイミングも、無言の中で自由自在です。一人ひとりがアートピースのように見える、美しい時間でした。


【WS2】の振返り
終了後、子どもたちに今日の感想を聞くと、「楽しかった!」と口々に笑顔で答えてくれました。参加児童からアンケートを取ることはありませんでしたが、普段から子供たちの様子を見ている外部支援員の方から以下のフィードバックをもらいました。
- ある6年生の子について
→欠席が多くて、あまり会えない子です。この日はいい笑顔で活発に動いていました。
- ある5年生の子について
→去年から編入したのですが、日本語の力がなかなかつきません。いつも顔を隠すようにしている子です。 この日は、聴き取りもあまりできない子だから、初めは私たち支援員のところに逃げてきて、体育館の隅で少しゆっくり過ごしました。そこへ友達がやって来たので、一緒に練習をして理解できたらみんなのところへ戻っていきました。その後は楽しそうに活動していました。 私たちは、初めて素の満面の笑顔を見られたので大感激でした。両親にも写真を送って報告し、喜んでもらえました。
- 参加した児童の後日の作文より抜粋(以下、名前以外は原文のまま)
→今日の月曜日の五時間目と六時間目でみんなとゲームしてあそびました。まず1つ目はみんなで「まきまっちょ」さん(TJF注:ファシリテータ―の田畑さんのこと)の名前を知り終わったあと、まきまっちょさんのおもしろいダンスを見せてくれました。体がやわらかくて、おもしろい顔でおどったりするのがびっくりしたり、笑ったりする。(中略)先生がまねすると私たちもまねする。1目のゲームは手のひらを見て、移動する。わたしとコ●●●、し●●で3人でやってみた。同時にするのは難しくて、大変だった。手を高くすると、わたしは、とどかなくなっちゃう。なんだか高すぎて、天国へ行けそうだった。

WS2を終えて
WS2に参加してくれた児童たちには、中学校にあがったらぜひPCAMPに参加してほしいと思いました。もっとゆっくり時間をかけて心と身体をほぐしていき、自分を表現することの楽しさ、すがすがしさ、自分でいることのすばらしさを実感することで、これから生きていく上での自信につながれば、と思います。
担当 長江春子、シムヒョンミン
事業データ
- 主催
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公益財団法人国際文化フォーラム
- 共催
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呉市立白岳小学校
- 協力
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ワールド・キッズ・ネットワーク
- 日時
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6月24日(月)13:15~14:50
- 会場
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白岳小学校 体育館
- 対象
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白岳小学校に在学中の外国につながりを持つ児童
- 参加者
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20名(2~6年生)
- ファシリテーター
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柏木俊彦(俳優、演出家)
田畑真希(振付家・ダンサー)