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TJFは2024年8月8日(木)~11日(日)の日程で、富山県富山市において、多言語・多文化交流「パフォーマンス合宿 in 富山」(通称「とやまPCAMP2024」)を開催しました。TJFが富山県でPCAMPを開催するのは初めてで、公益財団法人富山市民文化事業団(オーバード・ホール)、および富山市の共同主催を得て実現しました。富山県内をはじめ隣りの石川県に在住する中高生も含め、北陸地域から20名が参加。また、今回は海外ゲスト枠として韓国の高校で日本語を学ぶ生徒2名を招待し、合計22名の中高生が3泊4日の合宿生活を共に送り、交流し、創作活動、発表会を行いました。PCAMPで長年メイン・ファシリテーターを務める演劇やダンスの専門家3名に加え、開催地である富山県出身のアーティスト2名にサブ・ファシリテーターをお願いしました。後半の日程では富山県が誇る音楽家1名が加わり、6名のアーティストが参加者22名のパフォーマンス作品創りと最終日の発表会に伴走しました。
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これまでの経緯
TJFは2017年度に「多文化×芸術」をコンセプトに、海外ルーツを含む日本在住の多様な中高校生等を対象とする多言語・多文化交流「パフォーマンス合宿」を立ち上げました。PCAMPとは、Performanceの「P」と、合宿を意味する「CAMP」の組み合わせで、読みは「ピーキャンプ」を通称としました。2018年3月に東京を会場に第1回となるPCAMPを開催。2019年3月には第2回を開催しましたが、コロナ禍の2年間はオンライン形式で継続。2022年、対面での再開を機に、以前から構想があった「PCAMP地域版」の開催に踏み切り、縁のあった広島県の多文化共生団体の協力により、「ひろしまPCAMP2022」が実現しました。その後TJFは、「ひろしまPCAMP」を継続しつつ、他の地域でも開催できないかとリサーチをしてきました。そして2023年4月、富山市のオーバード・ホール担当者から「PCAMP地域版について詳しく聞きたい」という1本の問い合わせメールが届き、「とやまPCAMP」の実現につながりました。2023年度の準備期間を経て、ついに2024年8月に合宿本番を迎えるに至りました。本年度は、「ひろしまPCAMP2024」と「とやまPCAMP2024」を2地域同時期に開催することになりました。
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PCAMPのコンセプトと事業目的
多言語・多文化交流「パフォーマンス合宿」(PCAMP)の事業目的は「一人ひとりの個性を尊重し、多様性に富み、創造性を育む社会環境の醸成」ですが、地域版PCAMPでは、それに加えて「多文化共生の地域づくりを担う次世代リーダーの育成」も目的としています。PCAMPのコンセプトは「多文化×芸術」です。このコンセプトに則り、多様な参加者のために作成したプログラムのゴールを次のように設定しています。
①ことばと身体で自分を表現する。
②バックグラウンドの違いを越えてコミュニケーションを図る。
③創造性を刺激し合いながら異なる他者への理解を深める。
④多文化共生社会の一員として、協力・協働・共創を体験する。
PCAMPのプログラム
PCAMPでは、参加者一人ひとりが持つ言語、文化、経験、個性を尊重し合い、それらを「ありのままに」「自由に」「積極的に」表現することを推奨し、またよりよく表現できるように運営チーム全体が伴走する形で運営しています。ファシリテーター(アーティスト)と担当スタッフ(主催側職員)が運営チームを組み、事前に企画会合を重ね、事前課題(コラム1)を含むプログラムの作成と推敲を繰り返します。合宿開始直前まで今回の参加者の特性に合わせて微調整を行い、プレアクティビティ、アイスブレーク、ウォーミングアップ、メインアクティビティ(創作)、ブラッシュアップ、リハーサル、発表会の順に、分刻みの進行計画を立てて、本番に臨みます。運営チームは本番の前日から現地入りし、さらに綿密な打合せを行い、参加者に見せるためのデモ作品、Welcome Board(コラム2)、ボーカルや体系表(声や立ち方など演劇作品を創る際の要素や考え方を示した表)を作っておきます。
事前課題
参加決定からPCAMP本番までの期間、参加者への事前課題として「言語ポートレート」の作成と提出をお願いしました。「言語ポートレート」とは、自分をより表現できる言語、自分や家族にとって大事な言語、自分が話せなくても日常生活のなかでよく耳にしたり目にしたりする言語、学んでいるまたは学んでみたい、気になる言語などを書きだして、自分の身体を模した絵の各パーツに配置して、自分とその言語との関係性を表現してもらうというものです。自分自身のなかに、身の周りに、そして地域に多様な言語(外国語だけでなく、方言や手話など)に気づいてもらうことなどが狙いです。多様な言語は多様な文化の表れと考えるからです。
この作業を通して、各参加者の内なる多様性に気づいてもらうこと、また各参加者が提出した言語ポートレートを参加者間のLINEグループで共有したり、PCAMP会場に掲載したりすることで、参加者同士がお互いの多様性に気づけるようになります。また、自分の身体を絵にすることは、最初の「自己表現」でもあり、PCAMP本番への助走でもあります。運営側も参加者がPCAMP本番でのびのびとベストなパフォーマンスが発揮できるよう、言語ポートレートを通して参加者一人ひとりへの理解を深めていきます。
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Welcome Board(ウェルカム・ボード)
PCAMP本番に向けてのもう一つの助走は、PCAMPの初日、集合時から本番プログラム開始までの待機時間に行うプレアクティビティ「Welcome Board」です。異なるテーマが書かれた3枚の模造紙を貼り出します。今回のテーマは「ほくりくのおすすめ」「いきたいところ」「どうぶつ」(じぶんをどうぶつにたとえたら?)の3つでした。ファシリテーターやスタッフがテーマに沿った自分の回答(キーワード)を事前に書き出して模造紙に貼ります。参加者にもそれらを真似て自分の回答を書いてもらうというアクティビティです。
このアクティビティは、いきなり見知らぬ人や環境の中に放り込まれた参加者が手を動かすことで気が紛れたり、参加者同士が隣り合わせで書いている最中や書かれたものを互いに見て自然と会話のきっかけが掴めたり、意見や共感、使うペンの色や書き方の工夫を楽しんだりして、自然と笑顔になっていくことを狙っています。安全・安心な場づくり、入口の雰囲気作りに欠かせないアクティビティとなっています。また、事前課題同様、このプレアクティビティも自己表現の経験となります。これら三つのテーマは、参加者の興味関心や自己像を引き出すものであり、PCAMPのメインアクティビティへの伏線にもなるように考えられています。
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「とやまPCAMP2024」の4日間
1日目の様子
8月8日(木)12:30、22名の参加者は誰一人欠けることなく、会場である富山市民芸術創造センターに続々と集合しました。
Welcome Boardの活動をしている間、同時進行でプロフィール写真撮影も行いました。
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小さなポラロイドカメラで撮影し、現像の余白にニックネームを書いてもらって貼り出します。できるだけ早くお互いにニックネームと顔を一致させ、仲良くなってもらうためです。また、初日の活動が終わったあとファシリテータ―によるチーム分け作業にも活用します。
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13:00、主催者のあいさつとともにPCAMPの本番がスタート。約3時間かけて心身の緊張をほぐし、参加者がお互いを知り、コミュニケーションを図り、仲良くなるためのさまざまなシアターゲームや身体表現を行いました。
前半は、音楽に合わせて会場内を縦横に歩いたりストップしたり、ハイタッチしながらあいさつしたり、爪先と爪先など合わせる「toe to toe」、相手の顔を手のひらで操る「ハンドパワー」、ポーズの途中で固まった(凍った)相手に溶かす「氷ダンス」など、言葉を使わないアクティビティを中心に行いました。途中でミニ発表会を行い、お互いの作品を発表し合いました。
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後半は全員で一つの円になり、ファシリテーターから投げかけられた質問(例:おいしい朝ごはんを食べた人)に該当する人は動く「フォーコーナー」、遠くにいる人の名前を呼んだあと自分の好きな食べものや得意なことを言いながらその人のところに移動する「クロス・ザ・サークル」など、言葉を使い、一人ひとりの「素」の部分を引き出していきました。
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1日目の終盤はPCAMPの演劇創作のメインアクティビティであるI am from(アイ アム フロム)を導入。これはアメリカで確立した多文化演劇教育プログラムの一つです。まず、経験や思い出、アイデンティティを引き出すための質問シートを参加者に配付します。参加者はそれぞれの質問にキーワードやフレーズで答えを書き、さらに詳細な説明を加えて詩にしていきます。書き出しに「I am from」ということばを付けて、それを繰り返すことで詩のリズムが生まれることから、「I am from」はアクティビティの名称にもなっています。I am fromはその人が来た場所だけでなく、その人を形作るものも表すということで、アイデンティティの探求、自他理解、自己表現を目指すPCAMPにも導入しました。初日は書けるところまで書いてもらい、シェアしたい人だけ読み上げてもらったところで終了。Googleフォームへの入力と書き足しは宿題としました。
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多文化交流会
PCAMP初日の夜は宿泊所である富山県呉羽青少年自然の家で多文化交流会を行いました。富山国際学院の宮田妙子理事長に協力頂き、モンゴル、ミャンマー、ベトナム、ネパール、バングラデシュ、マレーシアからの留学生、計6人が来てくれました。学院の在籍生、学院を卒業して富山大学に進学した人、既に大学を卒業して就職した人が含まれていました。
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一緒に花火を楽しんだ後、PCAMP参加者は5グループに分れ、各グループに留学生が1、2名入って、故郷のこと、留学生活、将来の夢をテーマに話してもらいました。
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さまざまな国のお菓子を食べながら、参加者たちは留学生の話を前のめりになりながら聞き、たくさん質問をしていました。「彼女はいますか」と留学生に投げかける参加者もいました。留学生一人ひとりにすべてのグループを回ってもらい、PCAMP参加者には多様な文化について学ぶ貴重な機会となりました。
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2日目の様子
8月9日(金)、朝9時にスタート。まずはチーム分けの発表! 各チームにファシリテーターが一人ずつ付き、チームのカラーも決まりました。ピンク、水色、黄色、オレンジ、緑の5チームで、それぞれチームカラーの名札を付けて、創作活動に入ります。
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午前中は、ウォーミングアップのあいさつゲーム、多言語じゃんけん、ラジオ体操、様々な身体活動をしてから、ダンス担当のファシリテーター田畑真希さんが「とやまPCAMP」のために振り付けをしたユニゾン(全員で踊るダンス)を練習しました。手招きの動きから始めることから、ユニゾンの愛称は「おいで、おいでダンス」となりました。
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そのあとは、チームダンスを創りました。チームメンバー一人ひとりが思い思いに好きなポーズをとります。それらのポーズの順番を考えながらつなげたり、繰り返したり、つなぎを入れたりして創っていきます。ここまでの活動を通して「表現する身体」になっていたので、ものの15分で各チームともダンスの雛形が完成し、早速発表しあいました。
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その後も、身体で「立山連峰」、ボディパーカッションなど、作品のピースになる身体表現活動が続きました。
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続いてファシリテーターたちは、演劇での声の使い方、立ち位置やフォーメーションなど、図(ボーカル&体系表)で示しながら説明し、PCAMP前日に準備した2バージョンのデモ作品を披露。実際にやって見せることで、参加者の頭の中に詩「I am from」のことばから作品を立ち上げるイメージを膨らませておいて、午前の活動を終了。
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2日目の午後は「I am from」のライティングの続きと共有です。グループ内でそれぞれの詩のどの部分を選び、どういう順番で並べ、どのような立ち位置で動きやセリフをつけていくのか、話し合いつつ、実際に動きつつ、形づけていきました。
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終盤にはさっそく中間発表を行い、お互いに感想を述べあいました。どのチームの発表も見ている人の胸を打つシーンがたくさんありました。中間発表では、他チームの作品から新な刺激をもらい、自チームの作品に磨きをかけていくことになります。
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コラム4:スペシャルチーム
PCAMP地域版の創作活動は、毎回、規定のチームの演劇作品とダンス作品、そして参加者全員で踊るユニゾンを中心に据えています。これに加え、参加者の自主性と自由な表現を引き出すために、スペシャルチームも作っています。これまでのひろしまPCAMPではダンスが特に好きな参加者からなるスペシャルダンスチームが結成され、チームメンバーだけで作ったダンスを披露してもらいました。今回のとやまPCAMPではダンスに限らずやりたいことをやっていいですよ、と呼びかけたところ、ダンス、歌、ジャグリングという3つのスペシャルチームが結成されました。また、ギターが得意な参加者はスペシャルチームの伴奏を買って出ました。
規定のプログラムだけでもタイトスケジュールの中、スペシャルチームを希望する参加者は夜や休み時間に創作したり練習したりしなければなりません。
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それでも「やりたい」というのは、強い自主性とチャレンジ精神の表れにほかなりません。その「やりたい」をファシリテーターチームは全力で支え、最終日の発表会の作品に組み込めるように工夫を凝らしました。
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3日目の様子
8月10日(土)、会場を富山市民芸術創造センターからオーバード・ホール 中ホールに移しました。この日は、最終日の発表会を行う舞台を使ってのリハーサルを行う1日となります。初めて見る中ホールの舞台と数百の客席に圧倒される参加者たち。劇場スタッフからホール内でのルールや禁止事項の説明を受けたあと、いよいよ舞台を使って発表作品を仕上げていきます。
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前日の夜、ファシリテーターたちは各チームの演劇作品とダンス作品、全員で踊るユニゾン、スペシャルチームの各作品から発表会の全体構成案を練り上げました。その構成案に沿って実際に舞台上で作品たちを並べて行き、つなぎの部分を新たに創り、参加者たちの細かい動きまで稽古を重ねていきました。
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参加者たちは流れの順番を間違えたり、理解が追い付かなくて混乱したりする場面もありましたが、気合いで乗り切り、午後4時半に通しリハーサルに漕ぎつけました。「一度舞台に立ったら最後までやり通すこと」を合言葉に、セリフや動きを忘れても、仲間たちでカバーしあってリハーサルは無事終了。気づいた点、直すべき点を確認して、夕食休憩を挟んだ後も夜遅くまで各チームの稽古が続きました。
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最終日、発表会
8月11日(日)、朝9:00から最終リハーサルを行い、開場し観客を入れるぎりぎりの時間まで細心の調整が続きました。そして11時に開演!出会ってから実質2.5日で創り上げた33分間のパフォーマンス作品を約100名の観客の前で上演しました。中間発表やリハーサルから見ていた運営側からすると、発表会での出来栄えは最高点に達していて、参加者たちの急成長に喜びと驚きが覚えるものでした。参加した中高生自身の創造性と懸命な努力、そして彼ら彼女たちの可能性を信じ、皆の才能を引き出してくれたファシリテーターチームの力が凝縮されたパフォーマンス発表を終えると、会場からは大きな拍手が起こりました。
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パフォーマンス発表後、出演者によるアフタートークを公開で行いました。やり切ったという清々しい笑顔でステージに再登場した参加者たち。アフタートークは各チームに寄り添ったファシリテーターからインタビューする形で行いました。一人ひとりに「作品を発表してみてどうですか」「3泊4日間の合宿生活自体どうでしたか」という質問を投げかけ、マイクを回すと、多くの参加者たちの目から涙。そして言葉を詰まらせながら訥々と語られたのは、さまざまな不安を抱えて参加したけれど、活動が楽しくて、仲間もファシリテーターもやさしくて、たくさんの友だちができ、いっぱい助けられ、自分たちもめちゃめちゃ頑張ったので、最高のパフォーマンスができて満足している、という心情でした。観客席からまた大きな拍手、感嘆の声が起こり、感動の涙を誘いました。
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観覧者の声(アンケートより)
発表会終了後、多くの観覧者がアンケートに回答してくれました。いくつかご紹介します。
「発表会のパフォーマンスで特に気に入ったシーンはありましたか。それはなぜですか」という質問に対し、一般の観覧客から次のような回答がありました。
・全員で順番に発信していくシーン。一人ひとりが主役でとてもよかったと思いました。
・子ども達の表現力、イキイキした表情、全て良かった!チェスト(木箱)を各々のパフォーマンスにあわせた使い方をしていたのが、空間をより立体的に感じて良かった。
・大きな舞台で緊張しながらも一人一人がセリフがあり表現している所が良かったです。ダンスシーンも楽しそうにいい笑顔で踊っていたのが印象的でした。
・オープニングダンス。全員が動きをそろえて堂々と、元気で踊りました。一番魅力的なところは笑顔です。
・「I m from」として全員が自分自身のことを自分の言葉で話してくれた事。各グループで個性の違うものを造って見せてもらえた事。
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また、参加者の家族から次のような感想が寄せられました。
・ウクライナや韓国の子が発する言葉を翻訳してパフォーマンスに一体化しているところ。
・ダンス。スポーツが苦手な娘が、しっかりとパフォーマンスしていた姿に感動しました。
・自己表現のパフォーマンス。ダンスを習うキャンプかと思っていましたが、一人ひとりが自己表現をして、輝く表情で踊る姿に感動しました。これまでの学校教育の中では決して体験できないことだからです。
・3日間の取組みがよくわかるグループごとのパフォーマンスがよかったです。音楽やリズム、木箱の使い方、マイク回しなどや、移動や間のダンスなどもよかった。それぞれの本音や気持ちが伝わり感動しました。
・「I am from」一人取りの思いを伝えるシーン。何か1つを決めて伝える。参加者の大切にしている気持ちを感じて感動しました。
・「I am from」のパフォーマンス。歌やダンス、ギターなど自分の得意なことの発表。パーカッションとのコラボです。一人ひとりの個性を大切にしながら、みんなで一つのものを作り上げようとする姿がステキだったからです。
・最初と最後のダンス。ダイナミックでよかった。木箱を使って色々な道具にみたてた演出もよい。自分の生い立ちや様々な境遇の基に、今と未来を語れる場があったこと、それを一人ではなく仲間たちと共有できたことも嬉しく思えた。ウクライナのこと、能登の地震のこと、それ以外にも一人ひとりの背負ったものと生活、手料理が支えになったこと、云々が見えたところがとてもよかった。
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「参加中高生たちのアフタートークをお聞きになって、どのように感じられましたか」という質問に対し、一般の観覧者から以下の感想がありました。
・聞いていて自分も涙が出ました。
・思春期で難しい時に自分の言葉で表現し、仲間と最後までやり切る達成感、充実した時間だった事が分かるアフタートークに感動しました。
・生徒たちにとって素晴らしい思い出の夏休みになりました。新しい絆ができて、感情も豊かになりました。
・「やりたいことができた」「やればできる!」最後にこう言った彼の言葉が4日間と発表会を表しています。意義ある事業だと思います。
・中高生たちのピュアな感想に涙が出て感激しました。不安から始まり、皆さんが協力してパフォーマンスができたことはとても貴重な体験だったと思います。
・参加されていた皆さんの背景には色んな事があったんだろうと推察され、ソレでも仲間とのものづくりに楽しさとか満足感、達成感を味わう事ができたって話されていてとても素敵な時間をすごされたんだなぁと羨ましく思いました。そして””仲間””との協調の大切さが今後の彼らの宝物になって成長される事に期待します!
参加者のご家族から、以下の言葉をもらいました。
・3泊4日がとても実りのあるものになったことを感じました。感性豊かなこの時期の体験は一生の宝物だと思いました。
・参加させてよかったです。10年後の未来につながる体験になったと思います。
・大変な合宿に参加しながらも達成感を得ていることに事業の価値を感じました。
・沢山の人たちの前で自分の事を話せる場が貴重な体験だったと思います。また、短い合宿の中で生まれた信頼関係も知ることができ、楽しかった様子が伺えて嬉しくおもいました。
・等身大の高校生の感想が聞けて良かったです。合宿へ行くと決まったとき、友だちができるか不安そうでしたが、LINEを交換したり、自己紹介の自画像(注:言語ポートレート)を描いたりして、どんどん同じ趣味の人をたくさん見つけて、行くのを楽しみにしていたので、実り多い合宿だったことが分かり、もらい泣きしました。今の時代の子になかなかできない経験ができたことを感じました。
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コラム:能登半島地震の被災地枠
「とやまPCAMP2024」の開催準備中に令和6年能登半島地震が起きました。被災地の中高生にも多く参加してほしいと考え、公募枠に加え被災地枠を設けました。そして、被災地支援ボランティア活動を行っている「ダイバーシティとやま」代表の宮田妙子さんに相談したところ「輪島高校に聞いてみる」と動いてくれました。また、オーバード・ホールの担当者を通じて七尾東雲高校の関係者にも情報を伝え、その結果、2校から合わせて6名の生徒の被災地枠に応募。また、宮田さんの奔走により富山市に拠点を置く十全化学株式会社がこの6名の参加費用を寄付してくれました。そのほか、金沢市から一般応募枠で参加してくれた中学生は4名でした。
大好きな街が地震によって壊されたこと、避難生活中に支援コンサートに励まされた、辛くても仲間と「負けないで」を歌い励まし合ったこと、などをパフォーマンス作品にしてくれた被災地の中高生たち。想像もできないような困難や不安な環境に置かれながら、勇気を振り絞ってPCAMPに参加してくれた中高生たち。少しでもPCAMPから元気がもらえたらと願っています。PCAMPに生徒を送り出した学校の先生は発表会を観覧したあと、「本当に今後の人生の糧になっていくような幸せな気持ちになった(当該生徒も)」という感想を寄せてくれました。
参加者の感想(アンケートより)
楽しかったことや難しかったこと
PCAMP終了後、参加者全員にアンケートに答えてもらいました。楽しかったこととして「友だちができた」「一つの部屋で寝泊りしたこと」「ゲームやアクティビティ」「アイディアの出し合い」「発表会」を挙げる人が多くありました。さまざまな面で楽しんでくれたことが分かりました。難しかったこととして、「言語の壁」「知らない人とのコミュニケーション」「振り付けやセリフ」「作品をつくること」「発表会の細かな流れを覚えること」「体力」が挙げられていました。また、「PCAMPを友だちや後輩に勧めたいか」という質問では、「とてもすすめたい」「少しすすめたい」「すすめない」の選択肢の中から参加者全員が「とてもすすめたい」を選んでくれました。
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参加前と参加後の気づき、学び、変容
アンケートから3泊4日の合宿生活と創作活動を通じて、参加者一人ひとりにたくさんの気づき、学び、変容があったことが分かりました。特に多様な人と関わったことや多文化に接したことが各人の気づき、学び、変容につながったようです。詳細に紹介します。
・人と関わるのが少し苦手だったけど、たくさんの人と関わって楽しいという思いになった
・国によって文化が大きく異なることを知った。
・言語が違ってもジェスチャーや簡単な言葉や翻訳機を使えばいろんな人と交流できると分かりました。
・言語が通じなくても、相手の気持ちを考えてわかりやすく伝えれば分かってくれると気づいた。
・いろんな人に話してもらうことや、話すことが、PCAMPの前は面倒くさかったが、PCAMPか始まってから楽しくなった。
・人それぞれ違うってことを改めて感じたし、恥ずかしがらず相手に歩み寄っていけば相手も優しく自分と関わろうとしてくれると思った。あと、見た目にとらわれないことが大事だと思った。
・たくさんの国の人がいて、いろんな言葉、いろんな人がいるけど、全ての人が得意なことも苦手な事も持っていることを学んだ。
・最初は韓国人の2人とあまり話せなかった。でも、勇気を出して話してみると、びっくりするくらい優しくて可愛かった。話す言語が違っても、盛り上がる話題は似ているし、日本のことを教えたときに、「わかった!」と返してくれるのがとても嬉しかった。日本語以外の言語がカタコトでしか話せなくても、いろんな国の人と話してみたいと思った。
・英語や日本語以外の言葉を話すのが苦手で韓国の子とはなかなか喋れなかったけど、喋ってみると楽しくて自然と笑顔になれていたから少しだけ日本語以外の言葉もいいんじゃないかなぁ?って思えた!!”
・たとえ言語が違っても、とても深く関わることができて、友達になれること。
・自分のやりたいことを追いかけても怒られないっていう世界があること
・じゃんけんの言い方は違うけど形は同じだと思ったし、言語を少し学びました!
・今までも外国に行った人の話は好きでしたが、今回は、また違った国の文化の話を聞く機会があり、良かったです。
・今までは、ダンスは興味がなかったのですが、今回みんなでダンスをしたことで、意外と体力もつかうけど、かっこいいし面白いなと思いました。”
・日本語をもっと勉強したほうがいいです。(ウクライナルーツ)
・学校というところが狭いところと知ったことと、自分が他の人と違って良いという事
・色んな国の留学生のみんなと会った時に色んな国の言葉を話せるか不安だったけど、留学生のみんながすごく日本語が上手で、色んなことを話せることが出来ました。色んな国のお菓子はめっちゃおいしくてまた食べたいなと思った。
・性別、国境、年齢、関係なくこんなにも楽しく過ごせると驚きました。
・学んだことは、言葉遣い。やさしい日本語ってこと。変化したことは、しゃべる事が好きになった。普段知らない人と喋らないし、学校の人よりも早く仲良くなれた。
・私も歳が違ったり、言語がちがう人と仲良くなれるんだ!とおもいました
・様々な人々との出会いを通じて、自分がとても柔軟になったことを感じました。 みんなが最初に他人に近づき、エネルギーに満ちていて驚きました。 この姿を見て私も次第に恥ずかしさをなくすことができ、見習いたいと思いました。 童心に(子供心)返ったような気がしました。日本の友達の純粋な心を感じることができました。(韓国から参加)
・それぞれの事情と大変さがあり、違う経験を持っているという考えをするようになりました。外国人として参加したのですが、皆さんとても親切に気遣ってくれてとてもありがたかったし、逆に私だったらここまで気遣ってあげられたのかなという気もしました。日本の友達のようにこれから生きながら私と違っても人々にたくさんの配慮をしながら生きて行こうと思いました。(韓国から参加)
個人目標とその達成度(参加者の自己評価)
次に「PCAMPに参加する前に立てた個人目標は何パーセント達成できましたか」という質問の回答を紹介します。
・1億%達成 1名
目標:たくさん友達を作る!
・200%達成 2名
目標:頼まれたことはやる!!!やり遂げること/何があっても全力でやりきること。
・100%、100%以上、120%達成 合計10名
目標:相手の文化を理解して協力して活動する/自分からいろんな人に声をかけてとにかく楽しむ/たくさんの人と話すことや、パフォーマンスが苦手だったからそれに挑戦して楽しくしたい/みんなと仲良くなって最高のパフォーマンスをしたい/正直に言うと友だちが誘ってくれたから参加しようと思っただけだった。少しでも友だちができたらいいなと思って参加した/最初の目標:友だちをたくさん作る!とにかく楽しむ!後からの目標:最高のダンス、演技にする!笑を忘れない!/自分らしさを出すこと、色んな人と話すこと/友達をつくる(ウクライナルーツ)/いろんな人と交流する/よく発表する時頭真っ白になるから楽しいことをたくさん考えて緊張をほぐすこと。発表内容、セリフとか振り付けとかを飛ばさないようにすること/新しい友だちをたくさん作ること
100%に近い達成度を挙げた参加者は5名いました。
・90%達成 1名、80%達成 4名
目標:まず演技が苦手なので演技を克服することと、私は人見知りなので自分から話すこと/前よりダンスや演技を上手く披露したいと思っていました。/自分から話せるようになったり、人前でも緊張せずパフォーマンスできるようになること/新しい友達を作り、クリエイティブなパフォーマンスを作ることに積極的に参加する<韓国、TJF翻訳>/日本の友達と仲良くなること、日本の文化についてたくさん学ぶこと、日本語の実力向上<韓国、TJF翻訳>)
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一方、自己評価が低かった参加者も若干いました。
・65%達成 1名(目標:新しい事を学ぶことと、人や世界を知る事)
・40%達成 1名(目標:自分から人に話しかける)
・2%達成 1名(目標:自分に自信が持てなくなっていたので、少しでも自信をつけたい。そして、みんなと仲良くなりたい。)
目標達成についてもっとも低い自己評価をした参加者の合宿全体についての感想を見ると「たいへんなことも多かったし、あまり上手くいったキャンプとは言えないけど、最後までやりきることはできたので、良かったです」と書いてくれました。また、最後の自由記述では「自分らしさを出せなかったこと、友達をあまり作れなかったこと、自分が思う演技ができなかったこと、自分の目標が達成できなくて、とても悔しかったので、何か機会があれば、次こそは、積極的にチャレンジしたいと思いました。」と前向きなコメントを残しています。
言語に不自由したり、何らかの生きづらさや苦手意識、障がいなどを抱えていたりする参加者の目標達成に関する自己評価が低かったことが分かりました。そのような参加者ももっと自分らしく表現し、もっと自信が持てるよう運営側はサポートしていくことに努めたいと思いました。
参加者22名の「PCAMPを一言で表現すると?」
アンケートの最後に、PCAMPを一言(one word)で総括してもらいました。
最高/信頼と経験と友情/私の人生にとって、とても重要で大切な思い出。/「たくさんの人と関われる楽しい」という言葉/最高の経験(おもいで)/PCAMP関係者、メンバーみんなが全力で楽しめる3泊4日/1人 1人の力が必要/宝物/最高な宝物!!/最高の思い出と学び/友情/自分を認めてくれる場所/成長/自分を考える良い機会/居心地/ドキドキワクワクワイワイ/仲間との絆/最高の思い出です/思い出/さいこう/新しい自分を発見し、一緒に成長する忘れられない経験/忘れられない思い出
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「とやまPCAMP2024」を終えて
TJF、オーバード・ホール、富山県や石川県の協力団体や協力者、ファシリテーターの皆さんの力が一つとなり、PCAMP地域版の2地域目での初開催となった「とやまPCAMP2024」は、所期の目的を果たし、想定以上の成果を得ることができました。もっとも感謝したいのは、参加してくれた22名の中高生たち。そして、その中高生たちを送り出してくれた保護者や学校です。
課題も多く残りました。開催地で暮らす海外ルーツの中高生年代により多く参加してもらうにはどのように情報を届け、安心材料を提供するのか。どうしたら参加者が持つさまざまな課題(言語、障がい、生きづらさなど)をよりよくサポートできるのか。3泊4日という限られた時間の中で芸術を用いた自他理解や多文化体験、共創体験のプロセスと作品のクオリティとのバランスをどのように取っていくのか。次回の「とやまPCAMP2025」の開催(2025年8月予定)に向けて、共同主催団体、運営チームとともに模索していきます。
事業データ
- 主催
-
公益財団法人国際文化フォーラム(TJF)、公益財団法人富山市民文化事業団(オーバード・ホール)、富山市
- 共催
-
北日本新聞社
- 後援
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富山県教育委員会、公益財団法人とやま国際センター、富山市民国際交流協会
- 協力
-
NGOダイバーシティとやま、NPO法人アレッセ高岡、NPO法人富山国際学院、射水多文化子どもサポートセンター、劇・あそび・表現活動Ten Seeds、公益財団法人黒部市国際文化センター、富山県障害者芸術活動普及支援センターばーと◎とやま、南砺市友好交流協会
- 助成
-
公益財団法人三菱UFJ国際財団
- 寄付
-
十全化学株式会社
- 期間
-
2024年8月8日(木)〜11日(日)
- 活動会場
-
富山市民芸術創造センター(8月8日、9日)
オーバード・ホール 中ホール(8月10日、11日)
- 宿泊場所
-
富山県呉羽青少年自然の家
- 参加者
-
富山県、石川県、韓国仁川広域市在住の中高生等22名
※中学生9名、高校生12名、専門学校生1名
※つながりの国・地域:ウクライナ、韓国、日本など
- スタッフ
-
アーティストチーム
柏木 俊彦(メイン・ファシリテーター/演出家・舞台俳優)
田畑 真希(メイン・ファシリテーター/ダンサー・振付家)
森永 明日夏(メイン・ファシリテーター/舞台俳優・ティーチングアーティスト)
木本 千晴(サブ・ファシリテーター/俳優)
長谷川 万葉(サブ・ファシリテーター/舞台俳優、専門学校教員)
ヤマダ ベン(音楽/パーカッショニスト)撮影・記録チーム
映像撮影・編集:山泉貴弘(映像ディレクター)
スチール撮影:柳原良平(カメラマン)運営チーム
進藤由美(TJF:事務局長)
長江春子(TJF:PCAMP総括)
シムヒョンミン(TJF:PCAMP担当)
税光華(オーバード・ホール:PCAMP担当)
中村則明(現地サポートスタッフ)
※その他、発表会の受付ボランティア、会場係、オーバード・ホール技術スタッフ等がPCAMPの運営に携わりました。
- 取材
-
MRO北陸放送、朝日新聞社、北日本新聞、読売新聞社、雑誌『地域創造』、オーバード・ホール劇場情報誌[ Mite Mite ]