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TJFは2024年、「とやまPCAMP」の立ち上げに先立ち、「多文化×芸術」をコンセプトに、2月9日~11日の日程で、富山市民文化事業団、富山市との共同主催による三つのワークショップ(WS)を開催しました。
【WS1】多文化パフォーマンス交流会(2/9、留学生対象)
【WS2】多文化演劇体験ワークショップ(2/10、市民対象)※本稿
【WS3】多文化ティーチングアーティスト(TA)研修(2/11、舞台実演者等対象)


三つのワークショップは、いずれも富山県及び周辺地域の皆さまに「多文化×芸術」ワークショップの体験を通してPCAMPについて理解を深めていただくとともに、主催側も参加者と一緒に富山県の多文化共生の現状について学び、「多文化×芸術」がどのように地域の多文化共生につながっていけるかを共に考える場として企画しました。
ここでは市民を対象とした【WS2】についてレポートします。

【WS2】多文化演劇体験ワークショップ
WS2には20名の事前申し込みがありましたが、仕事や体調不良で辞退者が出て、当日は教育関係者、芸術活動関係者、多文化共生活動関係者、一般市民、大学生、高校生を含め、計14名が参加しました。このワークショップは、これまでのPCAMPで行った演劇ワークを凝縮して体験してもらい、PCAMPについて理解してもらうとともに、地域の皆さまと交流を深めることが目的でした。
【WS2】のプログラム
ウェルカムボード
3枚の模造紙を貼り、それぞれに「うまれたところ」「とやまのおすすめ」「すきなたべもの」のお題を書き、開場からワークショップ開始までの間、一人ひとりにお題の答えをポストイットに書き出し模造紙に貼ってもらいました。これも実際にPCAMP参加者にやってもらったことです。この活動は、実はワークショップ本番での活動内容の伏線になっています。


ウォーミングアップとアイスブレーク
まずは多言語による1分間のアクティビティからスタート。そのあと、たっぷり身体を動かし、心と身体の距離を縮めてから、「Cross the circle」を行いました。参加者全員が一つの大きな輪になって立ちます。Aさんは自分から遠いところに立っているBさんの名前を呼び、自分の好きな食べものや生まれたところを言いながらBさんのところに移動。今後はBさんが遠くに立っているCさんの名前を呼び、自分のことを言いながらCさんの移動・・・。それを繰り返して最初のAさんに戻ったところで終了するアクティビティです。これは、実は次のメイン・アクティビティである「I am from」への道慣らし。





I am from 体験
「I am from」は地域版PCAMPで中高校生参加者にやってもらっているメイン・アクティビティ。アメリカの多文化演劇教育の現場で活用され、PCAMPにも取り入れています。事前にいくつかのお題(キーワード)を書き込んだワークシートを準備します。参加者はそのワークシートのお題に沿って自分の思い出や経験、大切にしていることを書き出し、各フレーズの頭にI am fromをつけてポエム風に表現します。この作業によって、参加者は改めて自分は何者なのか、自分のアイデンティティは何かを確認していきます。そして、できあがったI am fromを朗読して共有したり、グループメンバーのI am fromからいくつかのエピソードを組み合わせて演劇作品にしていきます。
このワークショップで用意したお題は以下の5つ。
- 子どものころ、あなたにとって、特別な、誰かが作ってくれた、大好きな食べもの
- 好きな歌詞、または歌手、曲のタイトル
- 生まれた場所、子どもの頃、住んでいたまちの名前、住所など。
- 勇気をもらったことば
- 将来の夢



参加者は3つのグループに分かれて、まずグループ内でそれぞれのI am fromを共有したあと、協力して演劇作品を創りました。一人ひとりが主人公でありながら、メンバーの物語がつながって一つの作品になっていました。セリフ、歌、情景描写、ユニゾン…参加者は個性とチームワークの両方を発揮してのびのびと表現していました。


【WS2】の振返り
参加後アンケートには、「楽しかったこと、おもしろかったこと、学んだこと」として以下のコメントが寄せられました。(以下、原文のまま)
- 初対面の人とのコミュニケーションが楽しかった。アイスブレークして一つの作品をつくるまであっという間の2時間でした。
- 演劇の持つ可能性。もっともっと人と人が出逢う瞬間がたくさんあって。
- 最初のワークショップで皆と仲良くなれて、その後スムーズに話ができました。
- 人と触れたり、名前を呼んだり、自分の好きなものを表現して、はじめましての人の思い出に触れて、どんどん心がほぐされていく感覚が楽しかった。
- たくさんの人と出会い、話を聞いてすごく自分のタメになりました。また、演劇も素晴らしかったです。
- 周りの方とすごく打ちとけられて、距離が近くなってもお互い相手を尊重し合って動けた。I am fromなどで相手の大切にしているもの、逆にそんなに触れてほしくないものも分かったうえでつくりあげられたものかなと思った。
- ダンス、演劇を通して人を知る、コミュニケーションをとることができて楽しかったです。皆さんの人となりが分かり、とても興味が持てました。
- 短時間だったにも関わらず、たくさんの人と知り合うことができて楽しかったです。
- アイスブレーキングゲームからスムーズに人としての中身を知るフェーズに移ったこと。
- 普段、PCでデザインなどをして身体を動かすことを全くしていないため、表現の一つとして新しい自分が少し見えた。
逆に「難しかったこと、困ったこと」については、「特になかった」人がほとんどでしたが、以下の意見もありました。
- I am fromが最初なかなか思いつかなくて、ちょっと自分を責めかけてしまった。
- 作品をつくるのが難しかった。
- 他チームはそれぞれ自分のテーマを押し出していたが、まとめることに必死でなり、(作品が)シンプルになって複雑化できなかった。
その他自由に書く欄に寄せられたコメントも紹介します。
- すごく楽しかったです。大人もなんかしたいです!
- 子どもに来年(PCAMPに)参加させたいです!
- 夏の富山開催、お手伝いしたです!
- 短時間ではありましたが、内容の豊かなアクティビティで、まわりの初対面の方々と打ちとけることができました。とても楽しい時間でした。人とのつながりってやっぱりすばらしいですね。


ワークショップ終了後、自由参加の交流会を設けました。ワークショップ参加者の多くが残り、時間の許す限り楽しさの余韻に浸りました。市民対象のワークショップには高校生から定年退職後の方まで、幅広い年齢層が参加し、活躍のフィールドも様々でしたが、その多様性こそが交流と作品の味わい深さに繋がったと感じました。
PCAMP担当 長江春子
事業データ
- 主催
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公益財団法人国際文化フォーラム(TJF)、公益財団法人富山市民文化事業団、富山市
- 日時
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2月10日(土)13:30~17:00(17:00-18:00交流会)
- 会場
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富山市民芸術創造センター 大練習室5
- 対象
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富山県内及び周辺地域在住の大学生~社会人まで
- 参加者
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14名(教育関係者、芸術活動関係者、多文化共生活動関係者、一般市民、大学生、高校生を含む)
- ファシリテーター
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柏木俊彦(俳優、演出家)
田畑真希(振付家・ダンサー)