第30回よみうり写真大賞高校生部門「フォト&エッセーの部」入賞作品
「moratorium」松永早百合 (三重県)
メッセージ
いずれ皆バラバラになるのは、わかっていた。でも、本当はわかってなかった。ずっと一緒にいる気がしてた。でも、入試を受けに行く子を見送り、そうじゃないことを再確認した。見ている先は別々で、卒業すればめったに会うこともないだろう。もう「ティンカーベルは、蝶か蛾か」といったアホな議論をすることもない。
写真に全てが残るわけじゃない。それでも私が今見ているものを撮りたい。本当は授業中も撮りたいが無理なので、すごい体勢で寝て筆箱落とす子、男子の奇抜な靴下、気合の巻き髪、カップルがたまに目をあわせるの、前の子の寝ぐせレベル、足のステップ、教室への光の入り方、そういうのを、ずっと眺める。
何でもっともっと皆と一緒にいなかったのか。私1人早くも寂しい。でも、ポンを含め、皆といれる今が一番楽しい。受験に苦しみながらも、ちょっぴり楽しんで、たまに廊下で「彼氏欲しー」とか叫んじゃう彼女たちが、本当に愛おしい。
卒業まで残りわずかで、実際はあと一か月程であまり会わなくなる。だからそれまでの少しの間、私は友人たちに今まで以上に全力の愛を捧ぐ。まあ断られるでしょうけど。
主人公について
私は好きなものしか撮らない。今までの写真の大半を占めるのが、ポン。モデルである。恐ろしい子。
小中高と一緒で、切っても切れない仲ではないが、私の中で中途半端な大きさを保っている。豪快な戦いを繰り広げたことも、数知れない。高校でポンはギターマンドリン部に入った。それからも交流は絶えず、写真部が廃部の危機に陥ったときは、兼部してもらった。モデル部員としてだったが、ほぼ私が独占していた。高校生活を振り返る意味も込めて、彼女を主人公に選んだ。