目の前にいる子たちだけでも助けたいという思いから
Q:いつごろから動物に関心を持つようになったんですか。
小学生の時からすごく好きでした。この活動をしようと思ったのは17年くらい前です。
ある日、私の友達数人がそれぞれ捨てられた犬を拾って、それを行政機関に渡したんです。でもその犬たちは、その後飼い主が見つからず、保健所に入って、結果、殺処分というふうな事態になってしまいました。それで、私が引き取りに行ったんです。引き取りに行ったら、その保健所にはまた同じような犬がいました。その子も殺処分になるということにを知って、別の日にまた連れて帰ったんです。このときに、ように、捨てられて飼い主を失った動物たちは死んでいってしまうのだということを知って、目の前にいる子達だけでも、助けていきたいと思ったんです。それがきっかけでした。このように行政機関で殺処分になってしまう動物を助けるという活動は、はじめは私一人でしていたのですが、その後私の活動に賛同してくれた近所の人含めて3-4人ぐらいでするようになりました。
団体の仕事とそれぞれの役割
Q:清水さんは、この団体でどんな役割をしていますか。
団体の代表という肩書はありますが、動物の引き取りや里親さんへのお届け、お世話、引き取り、掃除などをやっています。メンバーのみなさんは、それぞれ得意不得意がありますので、それに合わせた仕事を担当してくれています。例えば、話すのが上手な人は動物と里親さんとを引き合わせる場(「お見合い」と呼んでいますが)を手伝ってくれたりしますし、人と接するよりも動物と接するほうが好きだという人は、黙々と動物のお世話をしてくれている、といったような感じです。例えば、「犬の散歩」という仕事について言えば、誰かがお散歩に出ている間に、手の空いている人がケージの中を整えるといったような感じで、足りていないところは補い合う形で仕事をしています。ほかにも、経理担当の人や地域の人との調整役の人もいます。
見えない努力
Q:動物を保護する場所や施設はどのように確保し、どのように管理されていますか。
この施設で一階は中型犬以上の犬で、2階は小型犬、猫、鳥、ハムスター、小動物となっています。病気で他の動物と一緒にいられない動物はボランティアさんに頼んだり、別の部屋に分けたりします。
Q:団体のウェブサイトやYouTubeチャンネルを見ると、最近保護動物の数が増えているようですが、どうしてですか
以前は警察官や市役所などの行政機関からの引取りだけでしたが、範囲を少し拡大し、最近飼えなくなった人からも引き取るようになってしまったからです。例えば、亡くなった高齢者が飼っていた犬を預かったこともあります。その方が亡くなったと気づいた人が、警察や行政機関に連絡したところ、中には放置されていたチワワの犬がいました。その子は一週間何も食べていなかったようでした。このように、一般の人から突然電話がきて「動物を見つけましたが、どうしたらいいですか」というような質問を受ける場合もたまにあります。
Q:保護動物の数が増えているとのことでそれを管理する体制が気になります。動物の世話をするボランティアの人は足りていますか。
平日はボランティアの人が4人しか来ていないので、足りていません。週末のほうがもう少し人数が多いですが、それでもやはり十分ではないです。そのように人が足りない時には私がなんとか都合をつけて一人でまわしています。
Q:清水さんはどんな一日を過ごしますか。
私は大阪の小学校で教員をしてるんですが、朝、ここで5時過ぎぐらいから少しだけ管理を行って仕事に行きます。そして仕事が終わったら高速に乗ってここに帰ってきますが、行政機関、例えば警察などに引き取りに行く日もあれば、他の人に行ってもらう日もあります。48エリアの警察署と連携して引き取りを行っているので、連絡の件数も多く、その対応もしなければなりません。それから、夜、相談や動物を見に来たいという人からの電話対応をしています。
Q:ここの犬と猫の去勢手術とマイクロチップの装着の状況について教えてください。
全部済んでいます。全ての健康診断と去勢手術は済んでいて、マイクロチップは入れています。
去勢手術をしないと、例えば猫は繫殖力がすごいので、大変なことになることがあります。何も知らずにたとえば、4匹ぐらいの猫を、去勢手術をしないで飼ってしまったら、一年間で30匹になってしまうこともあります。前に、50匹ほどの猫を飼っている家から増えすぎてしまってどうしたらいいかわからない、というSOSの連絡を受けるという事例もありました。それで、その家から飼えなくなった子猫をもらってきて、うちで保護をして里親を探したんですが、最終的には全部譲渡できました。幸いなことにそこの猫は白、長毛、茶トラの猫だったのでもらわれやすかったんです。キジ猫と黒猫だったら、もらわれにくいんですが、長毛の子は人気があるから、どんどんもらわれていったんです。
「全頭譲渡」をめざし、すべての動物をハッピーに
Q:ここの動物は亡くなった時にはどうしていますか。
めったいに亡くならないんです。しかし、病気で亡くなった時はみんなでお葬式します。うちは、「全頭譲渡」、つまり、保護した動物をすべて譲渡することが目標なんです。老犬の子も病気の子も全部、引き取りを断った事がなく、最終的にはその子たちをできる限りすべて、里親を見つけて譲渡しています。ただ、その中で一年に1匹2匹は亡くなってしまう動物もたまにいます。
Q:里親になりたい人が申し込む時どんな手続きがありますか。管理はどのように行いますか。
里親は、ホームページでお問い合わせいただいたり、直接電話をいただいたりします。その中で、里親になってもらう人を決める際には、大前提として、直接見に来ていただける方を最優先にしています。北海道や九州などの遠方の方でも、見に来てくれた人がいい方だったら、距離に関係なくその方を優先します。つまり、人柄を大切にして選んでおり、住んでいる場所や距離では選びません。保護動物に対するしっかりとした考え方を持っている方、他のワンちゃんを見て優しい言葉をかけていただいてる方、子犬を見に来ていても、ほかの大人の犬にも声をかけてくれているような方、といったその方の人柄をよく見て、そこを大切に考えます。
Q:動物をもらってしばらくした後、返してくる里親さんはいますか。
今は、1年に1-2回くらいは返してくる方もいます。13-14年前、私がこの活動を始めた時はもっといました。その頃は10匹引き取ってもらったら、4匹ぐらい帰ってきたり。当時は、引き取ってくれるのであれば、だれでもいいと、まず引き取ってもらうことを第一に考えていました。しかし、しかし、そうやってもらわれていった犬が逃げ、車にひかれて亡くなってしまうということも起きました。私の、もらってもらえるのなら誰でもいい、という考えが間違っていたと深く反省した瞬間でした。
それで考え方を変え、今は、誰でもいいというのではなく、早いもの順でもなく、しっかり里親希望のかたの人柄を見て選んでいますから、ほとんど帰ってくることはありません。一年間に120匹ぐらいの犬を譲渡していますが、その中で帰ってくることは一件あるかないかです。
一番幸せなのは、苦労した子が家族に出会えた時
Q:この活動をしていて一番嬉しい、または一番大変だと思うのはどんな時ですか。
一番嬉しいのは、目も当てられないほどに汚れて発見されたり、やせ細っていたり、病気になってしまっていたり、お世話に時間がかかった動物たちが、もらわれた時です。特に、心優しい人にもらわれた時がすごく嬉しいです。一番大変なのは、ここに置いてはおけないぐらいの噛み癖がある犬が来た時です。噛む犬は誰のところにも行けるわけではないので、なかなか里親を見つけてあげられず、つらいです。このような子たちは誰にももらわれず、ずっとここにいます。10年ぐらいここにいる子もいます。それに、山羊や蛇のような世話の仕方が難しい動物もいます。例えば、山羊には庭がある環境の方がいいと思うのですが、ここにはそのような広い庭がないので可哀想だな、と思ってしまいます。
Q:今後はどのような活動をしていきたいですか。
動物保護活動周知です。命の大切さ、保護されてくる子の現状を知っていただきたい。メディアやSNSなどの発信でここ数年、数は減少しましたが施設に運ばれる子たちは後をたちません。
そして少しでも多くの動物達が幸せになれるように法人登録、施設の移転を計画中です。法人になる事で控除が受けられて、その分、寄付金に回すことができるようになるからです。
移転のときには、動物たちや、いつもご協力頂いてるボランティアさんにも快適に活動できる場所を造りたいと考えています。
Q:最後に、この記事を読む人たちに伝えたいことはありますか。
同じ事の繰り返しになってしまいますが『命の大切さ』を知ってほしいです。動物を家族に迎え入れる、迎えいれるには環境・お金・躾などが必要になります。きちんと考え、動物達と一緒に長く楽しく暮らしていけるかということを、迎え入れる前に一度、考えていただけたらと思います。
将来、保護される子たちがいなくなり、人も動物も幸せに暮らせるように。
動物保護団体「ワールド・ラブ・ハート(World Love Heart)」ホームページ
https://worldloveheart-nara.jimdofree.com/
(インタビュー:2022年7月)