元ラグビー選手の素顔をノゾキミ

大阪大谷大学

元ラグビー選手の素顔をノゾキミ

PEOPLEこの人に取材しました!

タウファ統悦 (とうえつ)さん

花園近鉄ライナーズの普及担当

現在、花園近鉄ライナーズの普及担当を務め、子どもたちにラグビーに触れる機会を提供しているタウファ統悦さん。トンガ出身で普及担当に就く前にはラグビー選手としてプレーしていたタウファさんに普及の仕事や私生活について教えてもらった。

Q:一番気になったことなのですが、ラグビーを始められたきっかけはありますか?

トンガでは草ラグビーをすることが当たり前なんだよね。国技がラグビーで皆の憧れだから、別に誰の教えでもなく皆夕方に集まって遊んでた。広場があれば、もうゴールもポールも無く、皆集まって勝手にやってる。それもきっかけのひとつだと思う。

あと僕のお父さんも元々ラグビー選手だったからっていうのもあるなー。大人がやってる場所の狭い所に子どもたちで集まって、同じ場所で勝手にやるっていう感じ。

あと、高校の先生をしてるお父さんに「うちのラグビー見に行こう」って言われて見に行ったのが、本格的にやりたいと思ったきっかけかな。選手たちが走っていたのがすごいかっこよく見えて、絶対この高校入ってラグビー選手になろうって思ったんだよね。勉強とかよりもそれがまず先で(笑)。今でもその356年前のイメージがすごい残ってる。あとその高校、僕のお父さんの高校だからもともと憧れだったんだけどね。もしかしたらお父さんの技かもしれないな(笑)。自分の母校に行きたいようにわざと見せてくれた可能性が高いよね(笑)。とにかく、きっかけはそれだったかな。

高校生の時の写真(左:弟さん、右:タウファ統悦さん)

Q:ラグビーの現役を終えられてなぜ普及担当になられたのですか?

日本来て色んな人に助けてもらって、すごく日本人に感謝の気持ちがあって。自分が持ってるラグビーの魅力とかラグビーの面白さとか、ラグビーのいい所とかたくさん伝えていきたくて。今までの感謝の気持ちもあるしね。

僕は人と出会うのがすごい好きな人なので、人の前で喋って「ラグビーはここがすごく良いんだよ」って、次の世代に伝えられたらいいなという風に思う。ラグビーは仲間同士の支え合いが大事だからね。「All for one One for all」っていう言葉があると思うけど、ラグビーはまさにそれなんだ。皆は一人のためにね。

Q:日本に来て驚いたことはありますか?

コンビニでチョコレートが簡単に手に入ることかな。チョコレート食べ放題!もちろんちゃんと買うけどね(笑)。トンガではチョコレートが高級物やからそんな簡単に手に入らなくて、クリスマスに食べれるか食べれないかだったんだ。日本だったら、食べたかったらコンビニ行けば食べれるから、すごいなって(笑)。ちっちゃい時から「チョコレート食べたいなぁ、美味しそうだなぁ」って思ってたり、親戚がたまに海外からチョコレート送ってくれたこともあったときは、「美味しいなこれ!」って感動した。でも僕は毎日食べたいんだよね(笑)もう僕の冷蔵庫チョコレート大量だよ!水もなく、コカ・コーラとチョコレートだけ(笑)。ドン・キホーテ行ったらいっぱいあるんでまた大量に買っちゃって監督に「バカかお前」って怒られちゃった(笑)。

あとはとにかく人が多い!人が多いのと電車がすごいね!トンガは電車無いから。特に朝の電車とか(笑)。

日本の学校行くのに東京の京王線乗らないといけないんだけどお尻で人押すのがすごくって。お尻で無理矢理グッグッって。「え、押していいの?」って戸惑ったよ。それがほんとに驚いたな。東京の朝の電車見たことある?

僕最初「え?すごい人だな、次の電車待ってよう」って思って。でも次の電車来ても同じ。待つ。次も同じ。「え、どれに乗るの」って思って、周り見たら、皆がさっき言ったみたいに鞄を持ってお尻で押すから、「あ!そういうやり方な」って。皆普通なんだよね。当たり前のようにやってた。そうじゃないと乗れないから(笑)。それが一番印象的だね。

本当にレベルが違う(笑)。でも大丈夫、そういうストレスがあっても家に帰ったらチョコレートが冷蔵庫にいっぱいあるから(笑)。

 Q:家では何をしていますか?

家居るときは1日あったらバーベキューやりたくなる。しかも一人バーベキューしたいから、うちの子どもと奥さんは「え」ってなってる時もある(笑)。

でも基本的にあんまり家でゆっくりしようとかは思わないんだよね。一人で山登りすることもあるよ。とにかく歩く! 歩いて、音楽聴きながら緩く考え事したり。この前は吹田からここ「花園ラグビー場」まで歩いたよ。歩きながら川を見て、色んな光景見て7時に出て12時半頃にここに着いた。本当に楽しかった。足痛くてちょっとマメが出来たけど、でもそれまでにすごく楽しかったな。一人でどっか歩いて、こういう所もあるなとか、一人の時間だからこそ出来ることで、その時間が僕にとってすごく大切なんだよね。

だから家で、ぼーっと一人何か考えるよりも、とにかく外に出る! 家だとどうしても寝るしね(笑)。

できれば海の方までどこか山の中でバーベキューするのがすごい理想(笑)。まぁ休みの日はそんな感じかな。

BBQ時の写真

Q:普及担当をする中で今コロナ禍ということもあり大変だと思うのですが、一番コロナで悩まされたことは何かありますか。

大切な人たちと会えないし、僕はトンガ出身だから母親もトンガに居るし、この二年半?もうすぐ三年だけど、母親とも家族とも会いたい。さっきも言ったんですけど、僕仲間意識がすごく強くてチームメンバーたちをコロナ前にご飯連れて行ったりとか、人と会ってワイワイするのもすごく好きなので、それができなくなるのがすごい悩みですね。本当に人と出会えなくなったっていうか。今はみんなZoomだからね。インターネットで繋がるけど、あれは顔だけ見て心が通じないからあんまり好きじゃないのね。人と会ってこういう風に話して「この人良い人だな」って感じるやん。あと表情もインターネットだと分からない。頷くしかないよね。それが今コロナ入ってデメリットじゃないかなって。

Q:自分の好きなところとか、誇れるところとかありますか。

あ、自分の体? 好きなところはなんだろうな。自分のお尻か自分の腕かな。基本的に自分の体が好きなんだよね。ラグビーした中であんまり怪我してないんだよね。僕に関しては、手術したことないもん。もちろん肉離れしたり骨折れたりはするけど、それでもあんまり大きな怪我はなく、だからといって特別なことはしてないよ。だからお父さん、お母さんにめっちゃ感謝してる!すごい丈夫な体を産んでくれた母親だなって。僕13年間現役でプレーしてたけど、そんなに一年間で休むほど大きい怪我が無くて、長くても一か月あるかないか。ラグビー選手としては怪我するのが当たり前やけど、ありがたいことだね。だからお父さん、お母さんにありがとうって。

 Q:何か試合前のルーティンなどはありますか。

僕は、試合前に髪の毛をドレッドにするの。僕のルーティンになってるんだよね。これは自分の準備としての、やらないと今日の試合は気持ち悪いというか、あんまり乗り気にならない。髪の毛は毎回ドレッドする。で、あとはバイブル。僕キリスト教なので、聖書を持って行って自分のジャージの上に置いとくの。お守りみたいな。あとはもう自分でトライするので何もない、普通(笑)。喜ぶだけ! 「いえーい!!」って(笑)。

Q:2019年頃にドラマ「ノーサイド」を放送していたと思うんですけど、それで何か変わりましたか。

あれほとんどリアルな話だよね。ドラマ自体は作りやけど、そのバックグラウンドはほとんど本当の話だから。予算のこととかあるでしょ?それをその中に、作りの部分もあったけど基本的に多分七割くらいほんとの話だった。

2019年のワールドカップの後にめちゃくちゃラグビーが急に盛り上がって、僕たちもびっくりで、試合会場が何万人の人たちが見に来てくれてるのもすごいびっくりして、すごい変わりましたね。あとラグビースクールも僕が教えてるので、急に子どもたちが増えたね。ラグビーやり始める子たちが増えた。

この前もフランス対日本も5万7千人くらいの人が見に来て。ラグビー界の中の最大の記録。国立って多分6万人くらいでしょ? 57千人ってほとんど(笑)。ワールドカップよりすごかったんだよね。

そういえば前の年、僕もドラマ『不惑のスクラム』に出てましたよ。花園で。

あのドラマ良かった。ノーサイドのドラマ見てたら急に僕らが出てくるんだもん。皆「え!?」ってなって(笑)。8話の一瞬のところ俺がなんかワールドラグビーのえらいさんみたいな人として日本に来て、「皆見に来て」って僕がゆう。恥ずかしい!(笑)。

その時は僕が何か台詞を言ったんだよね。僕も覚えてないけど。「本部から来ました」かな、なんだろ。何個か言ったんだよな。ワンフレーズ言うだけで10回くらい噛んでた(笑)。

元々ね、このドラマの指導をしてたんだよ。このドラマのラグビーの皆の、「こういう走り方やで」ってずっと指導してたんだよ。で、監督が急に「統悦、出てくれない?」って、「え!?」ってなって(笑)。で、台詞も貰って「まじかよ。」って思った。一週間前に貰ってたけど寝れなくて。

あっちこっちで撮影してたから、僕らも朝六時からその現場行って、俳優さんたちの指導をしながら。しかも夏なの!今くらいやったの(インタビュー日:89日)。僕ら6時くらいから始まるからさこれが。暑かったなぁ。

ドラマ撮影後、息子さんと撮った記念写真

Q:今後の目標を教えてください。

そうだな、僕いま指導をしてるので、いつかライナーズのコーチなれたらいいなって思ってるかな。今までは普及で色んな人に興味を持ってもらったりしたんだけど。そのあとは、やっぱりこうチームのコーチになるっていう目標があったので……。それが目標かな。

花園ラグビー場グラウンド

(インタビュー:2022年8月)

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