新しい形にして、また巻いて欲しい
日本は昔、おもてなし料理として太巻きをずっと巻いてた。日本がまだまだ貧しかった時に、おばあちゃんやお母さんたちが干瓢や玉子を入れて巻いてきた太巻きは、最高のご馳走だった。でも今は、どこの家庭でもお母さんが巻かなくなってしまって・・・アートと連動した巻き寿司で、若いお母さんたちや、もう巻かなくなっちゃったお婆ちゃんやお母さんたちが、また太巻きを巻くようになれればなと思い、絵巻寿司教室をやっているの。
最初は家族のため
最初に作ったのはコスモスのお花。家族の夕飯に、ただの海苔巻きや、かっぱ巻きとかじゃなくて、ピンクのお花の海苔巻きを巻いてあげようと思ったの。桜でんぶを使って、ピンク色の細巻きを8本巻いて、その中に玉子を入れて、お花にした。それが最初に巻いた絵巻寿司だったの。
そのお花の寿司を作ったら、家族はみんなキレーイとか、かわいいとか、大喜びだったのよ。そんなに難しくないし、ただピンクのお花なのに、それでもみんなはとても驚いたり喜んでくれたりしてくれたので、そこから「じゃ、うさぎを巻いてみようかな」って思ってうさぎを巻いたり、いろんなものを巻くようになったの。
アルツハイマー病を抑える効果も!?
アルツハイマーになっちゃったらもう治らないって言うよね。私みたいな年になると、段々と物忘れが多くなったりすることがあるの。絵巻寿司を作ったら、アルツハイマー予防にいいとよく言われる。指先も使うし、食材のお買い物や、買った食材でどんな目にしようとか、どのように色を使うか、どんな顔にするのかを考えることで頭を使う。だから、病気を進ませない、抑える効果があるんじゃないかなって私自身も思っているわ。
海外から日帰りの参加者!
絵巻寿司教室に参加してる外国の方は、台湾の方が多いの。息子さんがラーメン屋さんをやっていて、自分はパンダを巻いたり、梅の花を巻いたりして、商品として一緒に出したいって方もいれば、娘さんが幼稚園に行ってる間に飛行機に乗って習いに来て、それでまた飛行機にのって帰る若いお母さんもいたわ。最近飛行機の運賃も安くなってるから、台湾の方が多いのよ。
その他日本で働いてる中国のOLさんや、海外へ出張する旦那のために、わざわざ巻き寿司を習いに来る奥様もいるわ。
食に関しての学校で学んでる台湾の高校生とか、日本の伝統文化として、食文化として学びたいっていう10代の子供もいたわ。本当に外国の方の「学びたい」という気持ちが凄いって思うの。
家族の幸せになるための一つのツール
パソコンが出てから、お父さんは仕事だけじゃなくてパソコンのお勉強をしなくちゃならなくなって、とても大変だと私は思うんです。お母さんも、生活のために外にでてお金を稼がなくちゃいけない。そうすると子供は置いてきぼりにされたり、一人ぼっちになったり…家族との会話が段々なくなっていく。でも一週間に一度、または月に何度かでもいい、家族で気楽に巻けるような、プレッシャーにならない一つのことが一緒にできれば、家族の関係もよくなり、笑顔も増えて、みんなは一つになれるんじゃないかな。絵巻寿司は、年齢や性別など関係なく、小さいお子さんから、80代のおじいさんおばあさんまで楽しめるものだから。お孫さんにかわいい絵巻寿司を「はい!」って出したり、小さいお子さんと一緒に巻き寿司にいろんな顔を作ったり、一緒に楽しむのもいいし。だから絵巻寿司は、家族の幸せになるための一つのツールだと思う。
失敗なんてない、笑ってしまえば大成功
あるレッスンの時に素敵な外国の男性が参加して、みんなでアナと雪の女王のオラフを巻いてた。そのキャラクターでは、前歯が1本見えるんだけど、パーツを作って組み立てて、巻き上がって切ったときに、その男性の方のキャラクターの前歯が、頬のところにズレたの!その青年は「えー!?どうして歯がそこに行っちゃうんだ!?」ってすごくびっくりして、そんな青年の姿が可愛くて本当に面白かったわ。
やっぱりみんなが同じようにやってても、ちょっと勘違いを起こすとそういうことになって、作品が面白いことになってしまう、でもそれも楽しいことだと思うわ。
失敗した人にとっては、がっかりするかもしれないけど、でも周りの人を喜ばせて、笑わせて、それは大成功なんじゃないかって思う。決して失敗じゃないと思う。当時はみんなで逆に拍手してあげたくらいみんな喜んでたわ。
どんなものを巻いても、自然に笑顔になっちゃう。絵巻寿司にはこのような笑顔の輪を広げていく力があると私は思う。だから笑顔をたくさん作って行きたいのは、私たちが最も大事にしているところ。
食べてなくなってしまうこと、それもまた、次へつなげる一歩
家庭内で気楽に一緒にできるものは絵巻寿司が一番なんじゃないかなって思う。芸術作品のような高尚なものだと子供が嫌がったりするし、優れた芸術作品をつくれるお父さんお母さんばっかりじゃないから、だからこの失敗がない絵巻寿司は一番いいと思うの。笑顔を作るために、巻いて食べてしまえばなくなってしまうから失敗がない、それでいいと思う。作品が残って、一生ずっと残るのもいいと思うけど、残さずに食べてなくなって、そこで笑顔を生み出して、みんな一つになれるんだから。これもまた、次へ繋げる一歩ではないかなと思う。
(インタビュー:2019年5月)