二次元に宿る三次元の愛 〜推し活の世界へ〜

大阪大学

二次元に宿る三次元の愛 〜推し活の世界へ〜

PEOPLEこの人に取材しました!

かなさん

奈良女子大学留学生

奈良女子大学文学部に通う中国出身の留学生のかなさんは、日々の生活の中で「推し活」を楽しんでいます。推しキャラクターへの愛を語る彼女の姿からは、二次元の世界への情熱が伝わってきます。今回は、かなさんに推し活や普段の生活についてお話を伺いました。

小学校時代からの憧れ

Q:これまで一番面白かった推し活経験はなんですか?

実は一番面白かったのは好きなK-POPアイドルのコンサートへ行く時インタビューされた経験です。でも私にとっては、三次元か二次元かはあまり関係ありません。ただ、かわいい女の子が好きで、アイドルが好きです。アイドルであれば次元に関係なく、かわいいと思えば推したいという気持ちになります。キラキラしたアイドルの女の子がとても好きで、やっぱりかわいいと思って推したいです。

Q:推しの影響を受けて変化したことや始めたことはなんですか?

最初の推しは二次元のキャラクターでした。小学校の6年生の頃、二次元のキャラクターに魅力を感じるようになり、それがきっかけで日本に行きたい、日本語を勉強したいという気持ちが芽生えました。その結果、日本語の勉強を始めました。また、自分も推しのように可愛くなりたいという気持ちが強くなり、その影響でおしゃれに関心を持つようになりました。自分に似合う可愛い服を選んだり、メイクをしたりするようになり、それが自信につながったと思います。

Q:推しがいるイベント、コンサートなどには全部参加しますか?

全部とは言えないです。参加するかどうかは、プロジェクトによって異なります。元々イベントが少ないプロジェクトの場合は、すべて参加することが多いです。自分が好きな作品の中には、イベントが少ないものもあり、例えばコンサートやポップアップショップがあまり開催されていない作品もあります。そのような場合、必ず参加したいという気持ちがあります。一方で、ライブが多いプロジェクト(例えば『ラブライブ』や『バンドリ』*1)では、ライブイベントが多いので、特に興味があるイベントには参加します。イベントに参加する際には、チケット代や、開催場所も考慮します。例えば、大阪と東京で同じライブが行われる場合、私は距離や移動の負担を考えて大阪の方に参加します。また、珍しいイベントが開催される場合は、できる限り参加したいと考えています。

*1 アイドルとガールズバンドというテーマで展開される二次元作品。

Q:どのような活動に参加しますか、決める条件は何ですか?

私は、ライブのようなイベントに優先的に参加します。ライブはその場での臨場感や感動を味わえる特別な体験なので、カフェ*2よりライブのほうがいいです。もしカフェがあったら時間に余裕があれば行きます。忙しくて時間がないなら別にいいって感じなので、どうせカフェの食べ物もおいしくないし、グッズだけだったらメルカリにもあるから、直接メルカリで購入したら時間も節約できますし。カフェはあんまり考えたことがありません。

*2 ここではアニメやゲームなどの二次元作品をテーマにした二次元カフェを意味している。作品の世界観を体験できるデコレーションや限定メニューがあり、グッズ販売などが特徴的。

推しと共に歩む

Q:今まで手に入れた一番満足度の高いグッズは何ですか?

一番満足度が高いグッズは、和泉つばす先生が2017年にコミコン*3で販売していた星の色紙の再販です。そのグッズは今年(2024年)の8月に再販して、再販通販で購入したグッズです。一番満足度が高い理由は、その色紙はもともと7年前の場販限定でしたが、今年は再開して購入してきました。もともと中国市場での値段は18万円くらいだと思います。今は安くて手に入れられたことはとても満足です。元々値段が高かったから全然買えなかったグッズなのに、今年は再販して簡単に手に入れましたから、心からうれしくて、一生愛したいという感じなので、一番満足度が高いかもしれません。

*3 コミックやアニメ、ゲーム、映画などの二次元文化全般をテーマにした大規模イベントで、コスプレや限定グッズ、ファン同士の交流を楽しめる場として世界中で知られている。

Q:推しがいると推し活は必要なことだと思いますか?

お金がかかるのが推しです。お金がかからないなら、推しではなく普通に好きなキャラクターというだけです。推しには特別な意味があります。推しは、全力でお金も心も出して自分の愛が溢れる人です。ただ可愛いと思うだけなら普通に好きなキャラクターということです。

私は顔より性格を重視します。例えばこの子は、リリサちゃんと呼びます。作品の中ではコスプレーヤーさんなので、自分で衣装を作ったり、メイクを研究したり、仲間とか太陽みたいな存在で元気な人です。「おはよう」とか「一緒にやろう」とか、こういうセリフにも私はドキドキするので、こういう子が好きです。輝いています。私は、もともと陰キャなので、輝いている人が好きって感じです。ただ可愛いだけなら推しではありません。推しはやっぱり心から憧れるって感じかな。

Q:推しが変わったことはありますか?

基本的に、推しが変わることはあまりありません。二次元のキャラクターは性格や設定が変わることがないため、一度推しになればそのまま推し続けることが多いです。もし作者が性格を変えたら、私はその推しをやめますけど、普通は作者はそういうことをしませんよね。ですから、二次元の推しは変わりません。三次元の推しは変わるかもしれません。例えばファンと恋愛したら絶対やめます。

推し活は一人ではない

Q:一番負担になった推し活は何ですか?

お金で負担になったイベントはあまりありません。日本は抽選制度だからチケット代も一律なので、当たったら行く、落ちたら行かないというスタンスです。お金のことはあんまり心配したことはない一方、体の負担はいっぱいありますよ。例えば、コミックマーケット104*4は、本来より高い値段でチケットを購入し、入場まで4時間かかりました。気温も2829度で蒸し暑かったです。それでも友達が初参加だったため、一緒に楽しんでもらいたい気持ちで続けることができました。もし友達がいなかったら、あの状況では参加を諦めていたと思います。友達がいることで支えられ、一緒に戦う仲間がいると感じられました。

ライブは自分一人で行く時もありますけど、やはり友達と一緒の方がいいと思います。一人だと、周囲の視線が気になり、不安に感じることがあります。特に、私が好きな男性向けプロジェクトでは会場の観客の多くが男性なので、一人での参加だと少し心細いです。友達の存在は推し活を楽しむ上でとても大きな助けになっています。

*4 2024年8月に開催された世界最大規模の同人誌即売会で、創作同人誌を中心にアニメやゲーム関連のグッズ、コスプレイベントなど色々なコンテンツが楽しめるイベント

Q:一緒に推し活をしている人はいますか?もしいればその人からの影響は受けていますか?

普段、私は一人で推し活をすることが多いです。推し活を始めると、可愛い写真を撮ったり、その時間を楽しんだりすることが主な目的なので、隣にいる人にはあまり影響されないタイプです。友達が一緒に行く予定を辞めたとしても、それは私にとって特に問題ではなく、他の人を探すこともあります。そのため、周りの影響はあまり受けません。もし自分と同じように二次元が好きな友達がいれば、一緒に好きなプロジェクトについて語り合ったり、イベントに行ったりする気持ちもあります。実際、そういう経験もよくあります。ただ、自分の好きなプロジェクトが男性向けのものだから、男性ファンが多すぎる場合は、少し距離を感じることがあります。そのような時、誰かに「これ、可愛いから見て!」と勧めることもありますが、最終的にその人が好きになるかどうかは本人次第なので、あまり強く勧めることはしません。逆に、友達から新しいプロジェクトを勧められて、自分もその魅力に気づくこともあります。

Q:推し活をして、周りの人に理解してもらえなかったことありますか?もしあればその時の気持ちと状況を教えてください。

私の場合、周りの友人たちはほとんど二次元が好きなオタク仲間なので、推し活を理解してもらえないと感じることはほとんどありません。友人以外の人から意見を言われることもありますが、それは少ないです。もし誰かから「気持ち悪い」と言われたとしても、「あっ、そう」と軽く受け流すだけで、特に気にすることはありません。自分の推し活は自分の楽しみのためにやっているので、他人には関係のないというスタンスです。この考え方のおかげで、精神的にとても楽に推し活を楽しむことができています。また、最近はネットを活用して、推し活の写真を投稿することも楽しみの一つです。好きなキャラクターやイベントの写真を共有することで、同じ趣味を持つ人たちと繋がれるのが嬉しいです。

生活とのバランス

Q:ネットで推し活写真をアップロードする活動と学生のバランスはどのように取れていますか?

私にとって、推し活と学生生活は矛盾しないものであり、わざわざバランスを取る必要性を感じていません。普段は週末の休憩時間を利用してたくさん写真を撮り、平日の空き時間に12枚投稿する程度です。週末に課題や仕事が少ない時は、より多くの時間を推し活に充てることもあります。大学の休憩の時間には、気が向いたら写真を投稿することもありますが、特に意識的にバランスを取ろうとはしていません。推し活は私の生活の一部であり、自然に組み込まれている趣味の一つだからです。推し活は、他の趣味と同じように楽しむものだと考えています。例えば、バスケットボールやバレーボールが好きな人に「学生生活とのバランスはどう取っていますか?」と尋ねたら、「矛盾しない」と答える人が多いはずです。それと同じように、私は推しが好きで、推し活が好き。それが私の日常の一部なのです。もちろん、時には推し活と学生生活の予定が重なることもあります。一番印象に残っているのは、大学一回生の時に地下アイドルの推しの卒業式が期末試験の時期と重なったことです。試験の間の短い空き時間を活用し、試験が終わるとすぐに夜行バスで東京へ向かい、卒業式を見届けました。その後、また夜行バスで帰って翌日の試験に挑むというギリギリのスケジュールでしたが、「この瞬間を逃したら、もう二度と見られない」と思い、一生懸命両方をこなしました。その推しは今は卒業して推していませんが、あの時の選択には後悔していません。疲れるけど、それ以上に「会いたい」という気持ちが強かったのです。少し「ガチ恋」に近かったのかもしれませんね。ただし、どちらを優先するかといえば、やはり学生生活や試験など、自分の基盤となるものが最優先です。自分を愛してから推しを愛するという考えで、まずは自分の生活を整えることを意識しています。

今後仕事をするようになっても、推し活は続けます。給料ももらえるので、今より推し活の頻度が増えるかもしれません。

(インタビュー:2024年12月)

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