猫も家族の一員
Q:カフェを始めてから、猫に対する気持ちが変わりましたか?
カフェで猫たちとずっと一緒にいられるわけですが、営業を離れて一緒にいられるのは、夜になってからの1時間位なので、以前よりずっと短くなったような気がします。だからより一層愛情が生まれます。面白いですよ、猫たちって。ここにいる時は猫スッタフなんです。でも、お疲れ様ですって言って、ここのBGMが消えて、2階の猫の専用寝室に上がると、もう甘えん坊なんです。
Q:猫の世話をされる中で、どんな事が一番大変でしたか。
猫に平等に接することです。また、猫の間には序列があります。私たちは、そのピラミッドをちゃんと作ってあげるようにしています。猫も焼きもちをやきます。中には他の猫がいる時、抱っこをすることも嫌います。だけど、一対一の時には甘えん坊なんです。
Q:店の洗面台にはなぜタオルがおいてありますか?
衛生管理上、猫の部屋に入る前に手を洗ってほしいからです。洗面台にタオルが置いてあれば、手を洗いたくなりませんか。そうすることによって、きちんと手を洗ってもらうということが私たちの意図です。大きいショッピングモールなどのようなところのトイレには、ドライヤーみたいな手を乾かすものがありますよね。同じものを猫の部屋の前に置いたら、猫たちは大きい音にきっとびっくりするでしょう。ストレスが溜まりますよね。なので、お客様がご使用の都度、洗濯をし、清潔にしたタオルをご用意しておきます。そのほうがちゃんと洗ってくれます。これは他の店ではやっていない、私のこだわりのひとつです。
コーヒーをもっとおいしくする魔法
Q:食器についてのこだわりは?
コーヒーカップなんですが、カップの持ち手に指を入れるのはアジアの人に多いです。紅茶文化の発祥の地であるイギリスでは、高級品のカップは薄くって、持ち手の部分がすごく狭くて、指が入れづらいです。だから、イギリスで紅茶を飲むときのマナーとしては、持ち手に指を入れない、ということですよね。でも、指を入れないで持つのということは日本人にとっては馴染みがありません。指一本でも入れられれば、若い人と大人は安心して持てます。でも、お年寄りや小さい子だったら、指一本だけでは、不安定です。だから、必ず指2本が入るものを探したんです。重いカップの場合、3本入れたほうが安心できます。このように、私たちは、カップの持ち手に指を2本か3本入れた方が安定するということを考えて、持ち手に指を入れやすいカップを使っているんです。これも、私たちのこだわりです。
Q:このようなタイプのコーヒーポットは初めて見ました。
群馬県でこのタイプでコーヒーを出しているのはうちだけじゃないでしょうか。これはフレンチプレスポットと言います。多くはペーパーフィルターを使用しています。コーヒー豆はやはり大豆と同じように、豆ですから、精製すると、油が出ます。ペーパーフィルターを使うと確かにコーヒーは綺麗になりますが、旨味も全部ペーパーフィルターに吸われてしまいます。ところが、このフレンチプレスポットで淹れると、油は出ますけど、旨味がしっかり入ります。コーヒー豆を入れて、プレスするだけで、濃くも薄くもなく、苦みもまろやかになります。
私は、人と違うことしかやらない。
主人がリストラされて、いろいろなことを検討したけれど、自分たちで仕事を作ろうと決めたんです。それでカフェをやろうと思いました。そして、やっぱりカフェというのは、商売ですから、利益がないとやっていけません。それなのに、普通のカフェにしたらどうでしょうか。元々サラリーマンでしたから、その道のプロフェッションナルではないですよね。何か付加価値をつけてあげないと、お客様が入って来ないですよね。お客様にとって、カフェに求めることといったら、癒しを求めるとか、おいしいコーヒーが飲みたいとか、そういうことだと思うんです。でも、それは頑張って、努力しても、プロには勝てないです。だったら違うもの、そして、群馬県にないもの、ましてや日本にないものを作りたいと思ったんです。私は、人と違うことしかやらないです。
きちんと周りを見て、ライバルを見つけて、成長すること
Q:最後には、今の就職に悩む未来に不安を感じる若者たちに、どんなアドバイスがありますか?
脱線しますけど、私はデザイン企画の仕事をしているので、お客さんの顔が見えない時があります。例えば、印刷会社の営業さんが仕事を持ってきたりしますよね。依頼の会社はこういうふうに作りたいって言って、先方の担当員の年齢や性別によって、その人に接する姿勢を変えてやります。周りをちゃんと見て分析すれば、失敗は少ない。同じように、若者は会社の社風をちゃんと下調べしたほうがいいです。だから、面接で、自己アピールするとき、私だったらこうします、私はこう思います、そればかり言っていてはだめなんです。面接官がひいてしまいますから。
そして、ライバルがいなければ、たとえば、スポーツ選手でも、金メダルは取れないでしょう。ライバルがいなければ、競り合うこともできないし、自分はどのレベルはわからないものですよね。
(インタビュー:2017年6月)