まずは来てみて!

法政大学

まずは来てみて!

PEOPLEこの人に取材しました!

⽥辺俊介さん、⽥村久教さん

NPO法⼈ ⻄東京市多⽂化共⽣センター 理事

外国⼈にとって住みやすい社会をめざして⽀援を⾏うNPO 法⼈⻄東京市多⽂化共⽣センター(NIMIC)の理事を務めている⽥辺さん、⽥村さんにお話を聞きました。NIMICは、西東京市から西東京市多文化共生センター(以下センター)の業務運営を受託事業として行っており、外国人の方の相談を受けたり、電話やメールでの問い合わせに対応したりしています。また、そうした事業のほかに、NIMICの独自事業として子ども日本語教室を開催するなどしています。どのような相談が多いのか、コミュニケーションを取ることが難しい場合どのように対応しているのか、そしてお⼆⼈が考える国際交流の在り⽅について語っていただきました。

⼦供の教育や⾔語あらゆる相談が⾏き交う

Q:どんな相談をよくうけますか。

田辺:外国⼈だけじゃなく⽇本の⽅も含めて諸々の相談があります。外国人相談は昨年で100件くらいありました。特に外国⼈で多いのは⽣活に関わること。例えば⼦どもさんの教育とか学校のことですね。年間⾏事のスケジュールとお知らせが来ても分からないとか、⼦どもがなかなか⽇本の学校に馴染めないあるいは保育園はどうしたらいいのか、幼稚園はどうすればいいのかとか。それとやっぱり⾔葉。⽇本語は難しい。どこで勉強したらいいのか、しかもそんなにお⾦はかけられないとか。それからもう1つ多いのは市役所への⼿続きをどうしたらいいかということ。子どもの教育に関してだと、子どもが学校の教育についていけなくて今の学力だと子どもも学校も困るというお子さんを対象にNIMICが独自で子ども日本語教室を開いています。これはNIMICの事業の柱でもあります。

やさしい⽇本語の難しさ

Q:外国人の方とコミュニケーションが取れない場合はどのように工夫されていますか?

田辺:⽇本語のルーツはやっぱり中国から来た漢字なので、私は難しい漢字のみの言葉をそのまま使って話すことはしません。送り仮名が付いた言葉に変えて説明しています。例えば、言葉の難しさのレベルをなるべくN4-N5程度のものを使って文章を分かり易くするということです。二つの⽂章でも三つの⽂章でも良いから理解してもらえるような単語を⾒つけて、助詞なんかも付けながら文章にしていく。これはね結構難しくて、要するに分かり易いやさしい⽇本語に変える。結構みんな悩むんですよ。これで分かるかなって。

既に外国⼈の⽅が同じ市に住んでいる

Q:国際交流をする上で何か⼼がけていることや信念はありますか︖

田辺:私は人間は皆同じだと思うんですよね。この活動をして本当に思うのは外国⼈であろうが日本人であろうが隣⼈だということです。だから隣⼈がもし困っているようなことがあれば助けるのは当たり前。こちらが助ける場合もあるし助けてもらう場合もある。ただ外国の⽅はやっぱり⾔葉の壁があるのでなかなか難しいですよね。今回のコロナもそうなんだけどそういう時に、ある意味外国⼈はもっと弱い⽴場にいるので何かあったら助ける。それが隣⼈。単にその国際交流の⽬的のためにやっているんじゃない。我々の⽣活の場がね、国際交流じゃなくてもうすでに外国の⽅が⻄東京市に2.5%いるってことですね。住んでいるんです。同じ住⺠なんです。住⺠台帳に⼊ってるんだから。

「こんにちは」と⼀声かけること

田村:さっき⾔った隣⼈って⾔葉だけど隣にその外国の⼈がいたとして、どういう国でどういう考えでどう育ってきたか分からないまま隣同⼠で住んでいるとなんかちょっと怖いような感じになってくるじゃないですか、そこに⼈が集まったりすると何か悪いことするんじゃないか騒がれるんじゃないかとか変に思っちゃうんだけど、ここでひと声かけて「こんにちは」ってちょっと仲良く親しくなれば全然怖くない。お友達になれるわけですよ。すると⼼穏やかに毎⽇の⽣活もできるし時には⾃分の知らない新しい話も聞けるしそこでまた⼼豊かに穏やかに⽣きていけると。そういうことが分かるのは多⽂化共⽣の良いとこじゃないかなって思いますね。

活動する上での悩み、⼼配

Q:活動している上で⼼配していること、悩みはありますか︖

田辺:⼼配してるのは、周りの住民と同じように住⺠サービスを受けたいのに日本語が分からなくて受けられない⼈がいるんじゃないかなってことです。ひょっとしたらこのセンターがあること⾃体知らない外国人の住民がいるかもしれない。知っていれば相談しに来るんだけど情報が届いてないから来てないっていうのもあるのかもしれない。相談で来る⽅はリピーターが多いんですよ。一回来てくれればこのセンターの良さが伝わるのに。だから例えばブラジルならブラジルのコミュニティ、韓国だったら韓国のコミュニティで上⼿くこのセンターやNIMICの活動のPRができないかなって思っています。

お花見交流会

⼀定の年齢層と資⾦不⾜

Q:活動している⼈たちに若者や学⽣はいるんですか︖

田辺:多くが6、70代で(笑) 日本語スピーチコンテストだとかそういう単発のイベントなんかだと当日ボランティアで若い皆さんや学生、例えば地元の武蔵野⼤学の学⽣さんなんかが⼿伝いに来てくれる。若い⼈と活動したいと思うんだけど現実はおばさんやおじさんばっかなんですよ(笑) 結構おじさんがね、頑張っているんですよ。

田村:あと自治体はお⾦がない。ないから出来ないことが多いんです。コーディネーターとか、児童の学習⽀援とか不充分なんですよね。逆に⾔うと税⾦を使うわけだから市⺠の皆さんがここにそれだけのお⾦を使うことを賛成してくれないことにはね。

田辺:こういうのは市⺠活動としてそれはそれで良いんだと思うんだけどやっぱり自治体が国の⽅針が出るんだったらそれに合わせてお⾦を使えるような形でもっと主体的に働きかけないと駄⽬だと思うんだよね。

半分以上がボランティア

田辺:市報ってあるじゃないですか。市報の中で生活に役立つ情報を「くらしの情報」として、やさしい日本語・英語・中国語・韓国語に翻訳して発行しています。記事の選定・やさしい日本語へのリライト・翻訳・編集・印刷の一連の工程も僕たちスタッフでやるんですよ。これも市からお⾦がでていますが、これらを作成するのに多くの人が携わっていているけど、ほとんどボランティアです。NIMICでの活動も皆ボランティア。僕たちも週に1 回ここに当番で来るんだけど、もらうのは謝金が少々。

Q:コロナ禍でどんな活動をされましたか︖

田村・田辺:普段は、いろんな国をテーマにしてゲームをしたりしながら、その国のことばでコミュニケーションをとる「多文化サロン」というのをやっているんだけど、3密になっちゃうからできないなって。だいたい市と共催してやっているから市が中止する判断をするとできなくなります。公⺠館とか市の施設でやろうと思っても市の施設が閉鎖になったり、そんなこんなで⽇本語教室も今ズームでやったりズームが使えないところはラインのビデオ通話でやったり。

子ども日本語ボランティアフォローアップ講座

若者や外国人の方へメッセージ

Q:今後の⽬標、将来こちらで働こうとしている若者や来訪される外国⼈の⽅にメッセージがあればお願いします。

田辺:NIMICとして、僕がさっき⾔った外国⼈だから、⽇本⼈だからは関係なく「⼀緒なんだ」ってこと。やっぱりお互いにその違いを尊重した上で助け合いましょうって。でも今は⾔葉が弱いからそこは頼ってもらい、⽀援をできるだけしていくと。それは単にNIMICの仕事じゃなくて⾃治体も含めた⼤きな形でやっていってもらいたいなって。本来的にも主体は自治体だと思います。

田村:⼤変なところも少しあるんだけどそれ以上に皆さんが楽しんでくれるから嬉しい。⾃分らもそういう活動をやっていくのがリタイア後の⼈⽣を豊かに過ごせるからね。そういう意味合いでも若い⼈たちと⼀緒に活動することで視野も広くなるだろうし知り合いも増えるだろうし、ひょっとして海外旅⾏に⾏ったとき、その友達に泊めてもらえれば、⾯⽩いし。というようなより良い仲になってほしいなと思ってますけどね。私もねリタイアするまで3、40年ここに住んでるけど地元を全然知らないのね。若い⼈も来れば刺激になるし、多⽂化っていうのか多世代だね、いろんなものを取り⼊れてやっていけたらなと思いますけどね。

(インタビュー:2020年11月)

Related Articles関連記事

境界線を越えて協働する
何もしないことが幸せ? フィンランドの人生観

境界線を越えて協働する

何もしないことが幸せ? フィンランドの人生観

株式会社フィンコーポレーション 北欧のカルチャーが体験できるカフェ&ショップ「Hyvää Matkaa!」プロジェクトマネージャー
Noora Sirola(ノーラ・シロラ)

世界幸福度ランキング6年連続1位のフィンランド。一方の日本は47位(2023年度)。これは主要七か国(G7)の中で最も低い。フィンランドの魅力を知ることで、新しい価値観を得ることができるのではないかと考えました。そこで日本とフィンランドを繋…(続きを見る)

私たちが
取材しました

法政大学

私のヘアメイクの仕事 〜在日コリアンの結婚式を支える〜

境界線を越えて協働する

私のヘアメイクの仕事 〜在日コリアンの結婚式を支える〜

ヘアメイクアーティスト
任志向さん

在日コリアン*3世で、在日コリアン向けのブライダルヘアメイク担当。小学生から高校生まで朝鮮舞踊を習い、舞台衣装やメイクに触れる機会が多く、もとから関心があった。そのため、在日コリアン専門のヘアメイクアーティストがいることを知り、技術を習得す…(続きを見る)

私たちが
取材しました

法政大学

二丁目の私たち ~在日外国人のLGBTQ~

境界線を越えて協働する

二丁目の私たち ~在日外国人のLGBTQ~

friendsbarのオーナー
上一佳さん

中国人レズビアンで、日本に来て15年。新宿二丁目でFriends barというLGBTQバーを経営している。日中英韓OKで、今年でオープンして5年目。誰でも気楽に来れる店を目指している。名前の通りこの店は自由でみんなフレンドリーだ。店のスタ…(続きを見る)

私たちが
取材しました

法政大学

ルワンダでの「写ルン族プロジェクト」 ~一人ひとりが自分の人生の主人公(ヒーロー)である世界へ〜

境界線を越えて協働する

ルワンダでの「写ルン族プロジェクト」 ~一人ひとりが自分の人生の主人公(ヒーロー)である世界へ〜

株式会社Brave EGGS代表取締役社長
香川智彦さん

サラリーマンののち大病を二度経験し自分のやりたいことができなくなった時、命の使い方を考え「圧倒的にわがままに生きる」と、自分が大切だと思うことのために自分の命を使うことを決意。 写真家としての活動の他、地方創生やアート系プロジェクトなど様…(続きを見る)

私たちが
取材しました

法政大学

「漢服」を通して伝えたい ~伝統文化に対する意識の変化~

境界線を越えて協働する

「漢服」を通して伝えたい ~伝統文化に対する意識の変化~

漢亭序オーナー
紀 恒さん

中国出身。10年前、大学三年生の時に交換留学生として来日してから日本に定住している。現在は横浜中華街で「漢亭序」という漢服のレンタルショップを経営している。ショップでは中国から直々に輸入した唐・宋・明朝時代の漢服や、デザイナーである幼馴染が…(続きを見る)

私たちが
取材しました

法政大学

おせっかいの輪を広げる

境界線を越えて協働する

おせっかいの輪を広げる

NPO法人こあら村スタッフ
佐藤法子さん、嶋田朝子さん、藤岡邦子さん、藤野令子さん

東京都大田区で活動するNPO法人こあら村。2002(平成14)年、前理事長の故高山久子さんが、「使用していない自宅二階部分を地域の福祉に役立てたい」と周囲の友人知人に相談したことから始まりました。「子育て中のお母さんが、楽しそうに見えないと…(続きを見る)

私たちが
取材しました

法政大学

夢と個性を「つくる」音楽

境界線を越えて協働する

夢と個性を「つくる」音楽

指揮者 / クラシカルDJ / アーティスト
水野蒼生さん

音楽界に史上初の「クラシカルDJ」という斬新で独創的な風を吹き込む事に成功し、メジャーデビュー。ザルツブルク・モーツァルテウム大学 オーケストラ指揮及び合唱指揮の両専攻の第一ディプロム(学部相当)を首席で卒業し、世界を股にかけた指揮者として…(続きを見る)

私たちが
取材しました

法政大学

着物はファッション

境界線を越えて協働する

着物はファッション

着物研究家
シーラ・クリフさん

イギリス出身。着物との出会いは、日本に訪れた際に立ち寄った骨董市。当初は日本について何も知らなかったが、着物文化や日本のファッションについて、様々な勉強や研究を行ってきた。現在は着物研究家として着物に関する研究を行う傍ら、大学での講義や著書…(続きを見る)

私たちが
取材しました

法政大学

「日本に来てよかった」そう思えるように

境界線を越えて協働する

「日本に来てよかった」そう思えるように

株式会社ジャフプラザ 営業本部長
菊野英央さん

株式会社ジャフプラザは主に、ゲストハウス(J&F House)の運営・管理、仲介業、外国人向け不動産の物件紹介サイト運営を行っています。今回はその中でも、様々な国の外国人と日本人が共同生活しているゲストハウス(J&F House)に注目しま…(続きを見る)

私たちが
取材しました

法政大学

アートを通してつながる世界~Kids helping Kids~

境界線を越えて協働する

アートを通してつながる世界~Kids helping Kids~

子供地球基金代表
鳥居晴美さん

息子さんのために作った小さな幼稚園から始まった「子供地球基金」。創設以来40か国以上の国々に足を運び、世界中で絵を描くワークショップを行い表現することの大切さを伝え、子どもたちの思いを文化や国境を超えたメッセージとして発信している。アートを…(続きを見る)

私たちが
取材しました

法政大学

やさしい日本語でつなぐ外国人との絆

境界線を越えて協働する

やさしい日本語でつなぐ外国人との絆

日本語教師・一般社団法人やさしいコミュニケーション協会代表 
黒田友子さん

皆さんは、やさしい日本語を知っていますか。やさしい日本語とは、日本で暮らす外国人にとってわかりやすい日本語であり、外国人へ情報伝達の方法として誕生した言葉です。現在のコロナ禍でも、日本には多くの外国人が住んでおり、情報を必要としている人々が…(続きを見る)

私たちが
取材しました

法政大学