「日本に来てよかった」そう思えるように

法政大学

「日本に来てよかった」そう思えるように

PEOPLEこの人に取材しました!

菊野英央さん

株式会社ジャフプラザ 営業本部長

株式会社ジャフプラザは主に、ゲストハウス(J&F House)の運営・管理、仲介業、外国人向け不動産の物件紹介サイト運営を行っています。今回はその中でも、様々な国の外国人と日本人が共同生活しているゲストハウス(J&F House)に注目しました。営業部長を務めていらっしゃる菊野さんにJ&F Houseの特徴、シェアハウスの良さ・大変さ、菊野さんのライフストーリーなどについてお伺いしました。

J&F Houseとは

J&FはJapanese & Foreignersの略です。「日本国内にいながら仮想留学体験ができるコミュニティハウス」というコンセプトで運営をしています。ハウス内の日本人と外国人の割合は5:5となっており、アジアから欧米まで世界各国の人が共同生活をしています。ハウス内言語というものは存在せず様々な言語が飛び交い、お互いにランゲージエクスチェンジしながら学び、会話を楽しんでいます。

ハウス内の様子(蕨)

事業設立のきっかけ

ジャフプラザ誕生の背景には、代表の「海外の人が日本に来るにあたって、住居という死活問題を何とかしたい」という強い思いがありました。
会社が設立する2000年頃は、外国の方が日本に来られることが少しずつ増えてきておりました。しなしながら、異国から来た方が日本で住居を探すことは、現在よりもさらに困難でした。理由として多くの不動産業者で語学対応が出来ず言葉が通じない、物件オーナーが外国の方に対してネガティブな先入観を持っているという場合があるからです。
J&F Houseはそうした海外の方の受け皿であり、且つ、日本人でも海外の方と交流をしたいというニーズが多い中誕生しました。実際、来日される方々は日本語を勉強しに留学される方、日本文化や日本そのものに興味のある方がいらっしゃるため、国際交流コミュニティーとしての役割も引き続き担っています。

全く違う角度から

私は元々海外に興味があったというわけではありません。
中学生の時に見たミイラの本に面白さを感じ、ずっと考古学に関わる仕事をしたかったんです。そして大学で海外の考古学を学ぶ途中に、言語の勉強が必要不可欠だと気づいてそこから、英語の勉強を始めました。これが海外に興味を持ったきっかけですね。
勉強をする中で、海外の人の日本人にはない視点、視野の広さ、考えの深さに感銘を受けました。大学院に進むという選択肢もありましたが、それよりも、海外に行き異文化に多く触れ視野を広げてきたいということから、カナダ留学へ行くことを決心しました。留学中、ホストファミリー、海外留学生、インターンシップ等、異文化の方に触れ多くの方に大変お世話になりました。このことから、日本に来る海外の方のサポートをしていきたいという気持ちで入社しました。もし中学生の時にミイラの本を見ていなかったら海外と繋がるような仕事していなかったかもしれないですね。

大事なのは「個」と「個」

J&F Houseでのトラブルは大小含めていろいろありますが、一番多いのは人間関係です。
シェアハウスの性質上、様々なバックグランドを持っている方々がいらっしゃいます。国同士の民族的・歴史的な問題もあると思います。そのようなことは心の中にもしかしたらあるかもしれないですが、それを表立てている方はそもそもシェアハウスに入ってこないと思います。
実際に私のお客様で、台湾・中国・香港の方が同じ時期に同じハウスに入居し始めたことがあります。どうなるのか私も気になってみていましたけど、みなさん親友の様に仲良くなっていました。
つまり個人は個人ということです。しかし、人間誰でも苦手な人はいると思うので個人の性格の違いや、合う、合わないということでの人間関係トラブルが発生することはあります。これは驚くことに外国人には少なく、日本人同士の方が多いですね。
入居者を受け入れる際も、心の中ではお問い合わせをいただいた方を全員受け入れたいとは思っています。しかしシェアハウスの性質上、現実的に考えるとそうはいきません。
日本でも地方によって少し考え方や、性格が異なると思います。これが海外になるともっと違い、みなさん自国の常識を持ってきます。そこで大切にしているポイントは、お互いを尊重できる人かどうかです。これは言葉の語気や表情、メールのやり取りから読み取るようにしています。また、実際に案内をして人物審査も行っております。

ハウス内の様子(大阪)

ハウスマネージャーの聴く力

私たちが他社と異なるのは、住み込みでハウスマネージャーを配置している点です。
実際、ハウスではイベントをしたり日本人・海外の方々の入退室、お問合せ対応、案内、その他に住人の相談相手になることもあります。ハウス内では楽しいこともたくさんありマネージャー自身も世界中の方と出会うことで傾聴力、そして、マネジメント能力を養うことができます。
もちろんトラブルが発生をすることもあり、その対応もしなければなりません。しかし普段より住人とのコミュニケーションが十分に取れているので、大きなトラブルになることは多くありません。この点はハウスマネージャーを配置している強みとなります。
ハウスマネージャーという仕事は常に”人”と向き合う仕事であり、マニュアルはありません。そのため、日頃より”傾聴する”ということを心掛け、物事を俯瞰的に見ていく視点が大変重要になります。
このことは日々全てのマネージャーに伝えていることです。また、ハウスに住まわれた全ての方々に満足していただけるよう日頃より改善を行い、また帰って来たくなるようなハウス創りを行っています。

日本のことを知り、好きになってほしい

この仕事では、海外のことを知るということも大切ですが、相手の方にも日本のことを知ってもらうことが大切です。
例えば、初めて日本に来る方には「靴をここで脱いで、ここでスリッパに履き替えるんだよ」ということから話していきます。こうした意識から日本の文化やマナー、習慣等について話をして理解してもらえるようにし、日本での生活をスムーズに送れるようにサポートをしております。
また、海外の方との交渉でどうしても無理な場合、はっきりと「できない」と伝えるようにもしています。多くの日本人は物事をはっきりと言わないという性質があります。しかし、あいまいな表現では海外の方には伝わらなく、さらなる誤解を与えてしまうことにもなりかねません。そのため、物事は論理立てて相手が納得するように意思を伝えるようにしています。
私たち社員全員思っていることですが、日本を好きになってほしいと考えながら働いています。きっかけが何であれ、海外として日本を選んでくれて、その中でも滞在先として私たちを選んでくれたということは私たちからしたら感謝でしかありません。選んでくれた人全員をハッピーな気持ちにしたいですね。
海外の方が初めて日本に来られる場合、私たちは最初に接する日本人であり、いわば日本代表でもあります。そのため、私たちが一歩間違った対応をすれば、日本・日本人に対して悪い印象を持ったまま帰国される可能性があります。逆に言えば、様々な国に影響を与える立場でもあります。
海外の方へ単純に住居や他のサービスを提供するだけでなく、スタッフを介して日本での生活を快適に過ごし、帰国する時には「やっぱり日本に来てよかった」と感じてもらえるように努めています。

ハウスの住人さんたちが地域のお祭りに参加した時の様子

世界中に知り合いができる

この仕事のやりがいは世界中に知り合いができることだと思います。
私は基本的にはヘッドオフィスで働いていて、ハウスに住み込みではありませんが、それでも様々な国に友人や知り合いができました。
ハウスマネージャーとなれば日々様々な国の方と一緒に住んで、食事を共にし、苦楽を共にし、揉めることもあると思いますが、仲直りして、家族のような関係になりますよ。例として、2、3年マネージャーをやっていた男性が会社を辞めて、ロンドンへワーキングホリデーに行ったことがあります。その際、ヨーロッパ中を回って自分がハウスマネージャーだった時のお客様を歴訪するというのをやっていましたよ。
この仕事をやっていなかったらなかなか会えなかったような国の方々に会えたり、もしかしたら留学に行くよりもいろいろな人に会えたりする可能性があると思います。
マネージャー職はハウスマネジメントやコミュニケーション能力等を磨くだけでなく、人生において多くの方に出会えるきっかけでもあり大きな財産にもなります。

学生へのメッセージ ~世界が変わる~

もし日本に来る機会があれば利用してほしいです。日本人の方でも、特に学生はいろんなことを吸収できる世代だと思っています。社会人になってしまうと海外に行くことすら難しくなる可能性もあると思いますので、行くのが難しいと思ったときは私たちのハウスに来れば世界が変わると思います。
ハウスマネージャーも入居者も、入居する前は外国語に関心があるけど話せないという状態だったのが、ハウスを出るときにはペラペラになっているというのがよくありますね。海外の方だとそのまま日本に就職する人も少なくないです。本人の努力の成果もあるとは思いますが、このようなことを可能にする環境は整っているといえます。またこのような経験を多くの人に体感してもらえていると考えると、ハウスに来ることで世界が変わるのではないかという風に思います。

(インタビュー:2020年11月)

Related Articles関連記事

境界線を越えて協働する

NEW!

「武士に二言はない」文化に飛び込んだ経験

境界線を越えて協働する

「武士に二言はない」文化に飛び込んだ経験

モンテレイ工科大学の教授 (リサーチ・プロフェッサー)
ラファエル・バトレスさん

メキシコ国立自治大学(UNAM)で学位取得後、フランス石油研究所、豊橋技術科学大学、東京工業大学資源化学研究所といった研究機関で、研究にも指導にも活躍してこられたラファエル・バトレス先生に、日本企業、また、研究分野で体験されたことについてお…(続きを見る)

私たちが
取材しました

関西外国語大学

関西外国語大学

何もしないことが幸せ? フィンランドの人生観

境界線を越えて協働する

何もしないことが幸せ? フィンランドの人生観

株式会社フィンコーポレーション 北欧のカルチャーが体験できるカフェ&ショップ「Hyvää Matkaa!」プロジェクトマネージャー
Noora Sirola(ノーラ・シロラ)

世界幸福度ランキング6年連続1位のフィンランド。一方の日本は47位(2023年度)。これは主要七か国(G7)の中で最も低い。フィンランドの魅力を知ることで、新しい価値観を得ることができるのではないかと考えました。そこで日本とフィンランドを繋…(続きを見る)

私たちが
取材しました

法政大学

私のヘアメイクの仕事 〜在日コリアンの結婚式を支える〜

境界線を越えて協働する

私のヘアメイクの仕事 〜在日コリアンの結婚式を支える〜

ヘアメイクアーティスト
任志向さん

在日コリアン*3世で、在日コリアン向けのブライダルヘアメイク担当。小学生から高校生まで朝鮮舞踊を習い、舞台衣装やメイクに触れる機会が多く、もとから関心があった。そのため、在日コリアン専門のヘアメイクアーティストがいることを知り、技術を習得す…(続きを見る)

私たちが
取材しました

法政大学

二丁目の私たち ~在日外国人のLGBTQ~

境界線を越えて協働する

二丁目の私たち ~在日外国人のLGBTQ~

friendsbarのオーナー
上一佳さん

中国人レズビアンで、日本に来て15年。新宿二丁目でFriends barというLGBTQバーを経営している。日中英韓OKで、今年でオープンして5年目。誰でも気楽に来れる店を目指している。名前の通りこの店は自由でみんなフレンドリーだ。店のスタ…(続きを見る)

私たちが
取材しました

法政大学

ルワンダでの「写ルン族プロジェクト」 ~一人ひとりが自分の人生の主人公(ヒーロー)である世界へ〜

境界線を越えて協働する

ルワンダでの「写ルン族プロジェクト」 ~一人ひとりが自分の人生の主人公(ヒーロー)である世界へ〜

株式会社Brave EGGS代表取締役社長
香川智彦さん

サラリーマンののち大病を二度経験し自分のやりたいことができなくなった時、命の使い方を考え「圧倒的にわがままに生きる」と、自分が大切だと思うことのために自分の命を使うことを決意。 写真家としての活動の他、地方創生やアート系プロジェクトなど様…(続きを見る)

私たちが
取材しました

法政大学

「漢服」を通して伝えたい ~伝統文化に対する意識の変化~

境界線を越えて協働する

「漢服」を通して伝えたい ~伝統文化に対する意識の変化~

漢亭序オーナー
紀 恒さん

中国出身。10年前、大学三年生の時に交換留学生として来日してから日本に定住している。現在は横浜中華街で「漢亭序」という漢服のレンタルショップを経営している。ショップでは中国から直々に輸入した唐・宋・明朝時代の漢服や、デザイナーである幼馴染が…(続きを見る)

私たちが
取材しました

法政大学

おせっかいの輪を広げる

境界線を越えて協働する

おせっかいの輪を広げる

NPO法人こあら村スタッフ
佐藤法子さん、嶋田朝子さん、藤岡邦子さん、藤野令子さん

東京都大田区で活動するNPO法人こあら村。2002(平成14)年、前理事長の故高山久子さんが、「使用していない自宅二階部分を地域の福祉に役立てたい」と周囲の友人知人に相談したことから始まりました。「子育て中のお母さんが、楽しそうに見えないと…(続きを見る)

私たちが
取材しました

法政大学

夢と個性を「つくる」音楽

境界線を越えて協働する

夢と個性を「つくる」音楽

指揮者 / クラシカルDJ / アーティスト
水野蒼生さん

音楽界に史上初の「クラシカルDJ」という斬新で独創的な風を吹き込む事に成功し、メジャーデビュー。ザルツブルク・モーツァルテウム大学 オーケストラ指揮及び合唱指揮の両専攻の第一ディプロム(学部相当)を首席で卒業し、世界を股にかけた指揮者として…(続きを見る)

私たちが
取材しました

法政大学

着物はファッション

境界線を越えて協働する

着物はファッション

着物研究家
シーラ・クリフさん

イギリス出身。着物との出会いは、日本に訪れた際に立ち寄った骨董市。当初は日本について何も知らなかったが、着物文化や日本のファッションについて、様々な勉強や研究を行ってきた。現在は着物研究家として着物に関する研究を行う傍ら、大学での講義や著書…(続きを見る)

私たちが
取材しました

法政大学

アートを通してつながる世界~Kids helping Kids~

境界線を越えて協働する

アートを通してつながる世界~Kids helping Kids~

子供地球基金代表
鳥居晴美さん

息子さんのために作った小さな幼稚園から始まった「子供地球基金」。創設以来40か国以上の国々に足を運び、世界中で絵を描くワークショップを行い表現することの大切さを伝え、子どもたちの思いを文化や国境を超えたメッセージとして発信している。アートを…(続きを見る)

私たちが
取材しました

法政大学

やさしい日本語でつなぐ外国人との絆

境界線を越えて協働する

やさしい日本語でつなぐ外国人との絆

日本語教師・一般社団法人やさしいコミュニケーション協会代表 
黒田友子さん

皆さんは、やさしい日本語を知っていますか。やさしい日本語とは、日本で暮らす外国人にとってわかりやすい日本語であり、外国人へ情報伝達の方法として誕生した言葉です。現在のコロナ禍でも、日本には多くの外国人が住んでおり、情報を必要としている人々が…(続きを見る)

私たちが
取材しました

法政大学

まずは来てみて!

境界線を越えて協働する

まずは来てみて!

NPO法⼈ ⻄東京市多⽂化共⽣センター 理事
⽥辺俊介さん、⽥村久教さん

外国⼈にとって住みやすい社会をめざして⽀援を⾏うNPO 法⼈⻄東京市多⽂化共⽣センター(NIMIC)の理事を務めている⽥辺さん、⽥村さんにお話を聞きました。NIMICは、西東京市から西東京市多文化共生センター(以下センター)の業務運営を受託…(続きを見る)

私たちが
取材しました

法政大学