ルワンダでの「写ルン族プロジェクト」 ~一人ひとりが自分の人生の主人公(ヒーロー)である世界へ〜

法政大学

ルワンダでの「写ルン族プロジェクト」 ~一人ひとりが自分の人生の主人公(ヒーロー)である世界へ〜

PEOPLEこの人に取材しました!

香川智彦さん

株式会社Brave EGGS代表取締役社長

サラリーマンののち大病を二度経験し自分のやりたいことができなくなった時、命の使い方を考え「圧倒的にわがままに生きる」と、自分が大切だと思うことのために自分の命を使うことを決意。
写真家としての活動の他、地方創生やアート系プロジェクトなど様々な活動を開始。
アートを通じた世界中の子供たちの経済的・精神的な自立の実現を目的に活動している香川さんにその思いを聞きました。

会社員からアーティストへ

Q. アーティストに興味をもったきっかけはなんですか?

まず、自分のことをアーティストとは思っていないんです 笑

きっかけをお話すると、まず僕は会社員をしていて、ずっと体育会系の人間だったから社会人になってもロードバイクやトライアスロンをしていました。でも病気で自分の身体が動かなくなる経験を短い間に二回体験しました。「自分の本当にやりたいことができない」って感じたそのときに自分の命の使い方を考えて、次何ができるだろうってなった時にそれが僕にとって写真でした。もともと写真は好きだったので学び直して、複業でプロのカメラマンになりました。

Q. 社会課題を解決するツールとしてなぜ写真・アートだったのでしょうか?

以前の会社員時代から薄々、人はロジックだけじゃ人は動かない。感情が動いた瞬間に動くってことに気づいていたんです。心の底からの表現で人の感情は変わると思っていて、それでその人の行動が変わっていく連鎖が生まれると考えているんですね。その一つがアート、写真でした。アートを社会課題にぶつけてみたときに、どんな連鎖が生まれるんだろうと思ったのがきっかけです。

ルワンダでの活動で感じること

Q. 香川さんの行われている活動について、教えてください。

株式会社Brave EGGsが主催している活動に「写ルン族(しゃるんぞく)プロジェクト」というものがあります。

「写ルン族プロジェクト」とは、まず「写ルンです」のカメラをルワンダのスラムの子供たちに渡し、「仕事」として撮影を依頼します。その後報酬として撮影後の「写ルンです」を買取る、というプロジェクトです。

またその子供たちが撮影した写真をアート作品にし展示・販売もしておりその利益から現地カメラマンやアーティストを育成する学校を設立し育成もしています。

カメラの技術について教えている様子

Q. 「写ルン族」の活動を通して感じた苦労はなんですか?

一番大変なのは「続けること」ですね。やはり社会貢献活動といってもまだ運営費を賄いきれない部分があるんです。構造的にわかってはいたけれど、やはりこのままだと活動が止まってしまう。このプロジェクトだけでお金がグルグル回る仕組みを作っていく必要があるんですけど、色んなことを試しながら「あ、これは筋がよさそうだな」「これはダメそうだな」っていうのを繰り返しています。あとは教育って部分で、実際学校を現場に作っていますが、そこのクオリティをいかにあげていくかとか、あとはこちらもいかにモチベーションを維持して教えていくかとか、とにかく続けることが一番大変ですね。続けることは簡単ではないです。

Q. 逆に「写ルン族」の活動を通して感じた嬉しいことはなんですか?

活動の日々のなかでたくさんの喜びを感じながら活動しているのは大前提なのですが、最近でいうと教え子の子供たちの作品が売れた時ですかね。あとは自分たちの活動に賛同してくれる人が多くて、そういった人たちの存在に嬉しさを感じます。色んな人の心に響く活動にはなっているんじゃないかな、今の方向性は間違っていないなと、嬉しさというか活動していてよかったなと思う部分です。

Q. ルワンダの子供と日本の子供たちの違うところはなんですか?

ルワンダの子も日本人がそうなように一人一人に個性があるので一概には言えないんですけど、今を生きているなと感じる部分が強いです。過去を悔やむでもなく、未来を憂うでもなく、本当に今に向き合っている子が多いなと。そこが違う部分ですかね。まぁ先を考えてなさすぎて「貯蓄せぇ!」と思う時もありますけど 笑

ルワンダの現地スタッフと香川さん

一人一人がヒーローの世界

Q. 写ルン族の活動を通して伝えたいことはなんですか?

まず、僕が色んな活動の根っこに置いていることは「一人一人が自分の人生のヒーローである世界を作りたい」ということなんですね。もう年齢も関係ないんです。おじさんでもおばさんでもおばあちゃんでも、国籍も関係なく、あなたが人生のヒーローであってくれって。人に自分の人生を委ねることなく、そういった自立した人が増えていけばこの世の中ってもっとよくなっていくと思うんですよね。こういった世界観の活動に共感してくれる仲間がもっと増えていけば素敵だなと思います。

実はルワンダだけじゃなく、活動する国や場所はこれからどんどん増やすつもりなんです。

たくさん世界中の輪やネットワークを広げていけば僕は本気で世界の戦争の一個二個なくせると思っているんですよ。いくつかある戦争の原因の一つは貧困で、もう一つは相互不理解だと考えています。アートや写真を通じて経済的に自立した子供達のネットワークが世界中に広がり、同時にオンラインで学ぶことでお互いの文化や宗教的背景に対する理解が深まる。こんな感じで戦争の原因のうち二つを解消できると思います。結果、写ルン族は世界平和にちょっと貢献できるんじゃないかと。

作品の展示会の様子

Q. この活動を通じて、日本の学生に伝えたいことはなんですか?

日本の子はちょっと真面目すぎるかもしれない。

僕は全部遊びでいいと思っていて、というのもみんな遊びの方が真剣にやるんですよね。仕事と遊びを分けすぎず、ゲームでいうと「これは経験値上げのためだな」「これで武器を手に入れたな」みたいな感じでいいと思います。

あとは自分ベースで考えること。会社の中に自分がいるのではなく、自分の中に会社があるという考え方がいいのかなと思います。

自分主語に考え、目の前のことに没頭することを大切にしてほしいですね。

(インタビュー:2022年10月)

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