Q:Friends Barにはどんなこだわりがありますか?
Friends Barのこだわりは、2階がレズビアンバーで、女性オンリーであることです。 下の1階がゲイバーになっています。ゲイバーはオープンして5年、2階のレズビアンバーはオープンして1年になったばかりです。他にも日本で中国人が経営しているLGBTQバーはいくつかありますが、それはゲイとレズビアンがミックスしているバーで、女性オンリーの中国人バーはFriendsだけです。女性オンリーのスタイルを取る理由は、女性と女性同士が安心して、女性だけの空間で気楽にお酒を飲めるようにしたいからです。
外国人を中心とする、日中韓英4言語がしゃべれるバー
Q:あなたの店の看板には日中韓英4ヵ国の言語OKと書いてあるんですが、中国人以外の国の人もお店に来るのですか?
そうですね。二丁目は観光地であり、オリンピックの時も多くの外国人記者が来ていました。 例えば、オーストラリアやイギリスのジャーナリストが自国の選手を取材するために日本に来たりします。 日本のバーは夜8時や9時には閉まってしまうことが多いのですが、二丁目はいつも遅くまで開いているんです。 あと、うちの店は他のバーと違ってスタッフは全員英語が話せます。今は中国人のお客様は7割、日本人が2割、残りの1割がその他の国の方々です。
Q:Freidns bar に中国人が多い理由を教えてください。
最初はTwitterやInstagramなどのSNSで宣伝した後、お客さまが増えて、お客さま同士で店を紹介するようになりました。 RELA(中国人に人気のレズビアンレズビアンマッチングアプリ)を使って来る人も多いですね。(相手と)初対面の時は、レズビアンバーで会った方が安心です。あとお店のスタッフさんたちも、レズビアンのWechatグループに入っているので、少し店の宣伝効果にもなりました。
二丁目の変化
Q:以前と比べて二丁目はどのような変化がありますか?
お酒は今よりずっと高かったんです。 例えば、今は4,000~5,000円の「鏡月」は、2007、2008年には10,000円程度でした。 当時は日本の経済が悪かったんです。(今は)当店で販売しているお酒は、カラオケで販売しているお酒より安いんです。 昔と全然比べものにならないほどお酒は安くなっています。
Q:コロナ中の経営も大変でしょうか?
コロナの流行の最盛期から見ると、(コロナ禍の売上は)ほぼ半減しました。 2月と8月のローシーズンはもっと酷く通常は150万円のところ70万円も稼げませんでした。でも、今年の年末には流行前の時期までにほぼ回復しています。
二丁目の人のつながり
Q:二丁目にはたくさんの店があるのですが、店と店の間は繋がっていますか?中国人同士にもつながりはあるのでしょうか?
二丁目の店はみんな仲間意識があって、店と店との間は繋がっています。よく二丁目に通う人は、一晩で5、6軒の店を回る習慣があったりします。 お客さん自身も(店の人に)先にどこの店に行ったかを言いますし、他の店のスタッフたちもよく自分以外の店に行ったりします、自然に仲がいいです。
中国人と中国人の間にもつながりがあります。中国人店を経営する仲間には、Wechatグループがあります。困難がある時、中国人の仲間と相談することができます。みんな熱心に自分の同胞を応援しています。例えば、当店5周年の時には、他の中国人の店長さんに来ていただいて、ワインを開けて応援していただきました。
上さんのそれまでの人生
私は2001年に大学に入学し、大学卒業後しばらくは中国でバーの経営をしていました。 そして、父が日本にいるという理由で、日本に留学しました。 23歳で来日したため、当時は専門学校でしか勉強していませんでした。3年目に日本の永住権を取得したので、派遣社員として働き始めました。 派遣時代には、中国人向けのサービスが増えたため、ソフトバンクとビックカメラで働きました。その後、上海でバーを経営した経験を生かして、自分でバーをオープンしました。今も日中は楽天のオンラインショップで仕事をして、夜はバーで仕事しています。
Q:レズビアンであることはどのような体験がありますか?
会社員の時は、普段の生活と職場においで自分はレズビアンであることをあまり公表していなかったです。 でも親しい同僚はもちろん知っていますし、もし職場で他人に聞かれたら、わざわざ否定しません。なぜ公表しないかと言うと、日本の職場はもっとプライベートな雰囲気で、個人的なことをあまり言えない雰囲気となっているため、多くのLGBTQ自身も公表しないからです。だから、みんな週末に二丁目でリラックスさせてくれるんです。 でも、自分でバーを経営した後、堂々とレズビアンを認めることができるようになったんです。
中日のLGBTQの違い
Q:そういえば、中国では男性的な格好をする(レズビアンの)女性の存在が思い浮かびますが、日本ではほとんどいないのでしょうか?
日本にも(男性的な格好をするレズビアンは)いますが、中国ほど目立ちません。 日本にはいろいろなルールがありますから、それも関係しているのでしょう。 例えば、刺青を入れない、髪を染めないなど、流行ブランドショップならピアス、髪方、刺青などに少し余裕がありますが、一般的なところは女性にメイクを要求したり、自由に装うことはできない点は、女性には厳しいです。 (男性的な格好をするレズビアンは)台湾と香港が実は一番多く、台湾で同性婚が合法化されたことと関係があるんです。RELA(中国人に人気のレズビアンマッチングアプリ)は最初中国語はなかったんです。RELAは実は最初「The L」 としか呼ばれていませんでした。初期のレズビアンテレビ番組や映画の影響もあるようです。 当時、東京では香港や台湾の人のように多くは、RELAを使っていたのですが、今は少なく、大陸の中国人が中心に使うようになっています。当時は、RELAで知り合った人は二丁目で待ち合わせるような風潮がありました。
日中のレズビアンの「結婚」に対する価値観の違い
Q:中国と日本のレズビアンの結婚に対する価値観に違いはありますか?
中国において、女の子なら遅かれ早かれ結婚しなければならないというのが中国の伝統的な考え方です。私の母も「結婚しなくても子供くらいは産んでおきなさい、子供を産むと老後が安心」と話していました。
しかし、中国ではレズビアンカップル同士で子どもを産む人は少ないです。人工授精して、子供を産む人たちも存在するんですが、中国も日本も同性結婚制度がないため、2人が別れたら子供の扱い方が難しくなるので、子供を産む人は少ないのです。同性カップルの養子縁組も少ないです。親のためにゲイとレズビアン同士で偽装結婚する人たちも存在します。しかし中国は学歴社会で子供の学費がかかるため、子供を生まない偽装結婚カップルが多いのです。
一方、日本では(レズビアンは子どもを産むとき、偽装結婚を選ぶよりも)シングルマザーの方が多いんです。 私の周りの70代の日本人女性は、妊娠に対して、「子供は天がくれたプレゼントです、妊娠したら産むべき」と言っていました。 これは、日本の保育制度にも関係しています。日本は、何しろ高齢化社会で出産を補助する政策があり、子育てにかかる費用は中国ほど高くはありません。 安心して使えるおむつや粉ミルクなどの育児グッズも日本では簡単に買えます。
中国のLGBTQの人びとの日本における偽装結婚問題
Q:日本に来た中国のカップルの偽装結婚はありますか?あるとしたらどういうふうに披露宴を開催するのでしょうか?
前に話した通り、実は日本にいても偽装結婚する人はいます。私の周りには子供を産む中国人ゲイとレズビアン偽装夫婦が存在します。(この夫婦には)それぞれお互いに他に付き合っている同性の恋人がいます。しかし、実際には毎日一緒に暮らしているので、子どもは親が偽の夫婦であることを知りません。 つまり、外見は普通の家庭と同じで、偽物の夫婦であることは誰にもばれることはないと思います。その夫婦はお互いのことが好きではないから、日本で披露宴はしません。でも一応結婚しているから、中国に帰る時、親との折り合いをつけるために披露宴をしています。
Q:偽装結婚する原因は、ビザと関係がありますか?
はい、もちろんビザも一つの原因です。普通では結婚して3年経てば、永住権を取得することができます。ですから、偽装結婚の夫婦のどちらかが永住権を持っていると、ビザを取得しやすくなります。
Q:もし日本で同性婚の制度があったら、このような現状は減ると思いますか?
もちろん同性婚があればいいのですが、偽装結婚の現象は減らせないと思います。ビザは大きな問題です。偽装結婚が正しいかどうかは我々は当事者ではないので、当事者たちが幸せにしているのであれば、部外者の我々が判断するわけにはいかないです。彼らのことを尊重するべきだと思います。
(インタビュー:2022年11月)