何もしないことが幸せ? フィンランドの人生観

法政大学

何もしないことが幸せ? フィンランドの人生観

PEOPLEこの人に取材しました!

Noora Sirola(ノーラ・シロラ)

株式会社フィンコーポレーション 北欧のカルチャーが体験できるカフェ&ショップ「Hyvää Matkaa!」プロジェクトマネージャー

世界幸福度ランキング6年連続1位のフィンランド。一方の日本は47位(2023年度)。これは主要七か国(G7)の中で最も低い。フィンランドの魅力を知ることで、新しい価値観を得ることができるのではないかと考えました。そこで日本とフィンランドを繋ぐノーラさんの人生観について伺いました。
プロフィール
フィンランドタンペレ市出身。2019年から駐日フィンランド大使館商務部兼フィンランド政府観光局に勤務。2022年からは株式会社フィンコーポレーションが表参道で展開する北欧カフェ「Hyvää Matkaa!」のプロジェクトマネージャーを務めている。またフィンランドと日本をつなぐため、サウナのプロデュースや、「モルックアンバサダー」として活躍。2020年には「世界ふしぎ発見!」にミステリーハンターとして出演した。

Q.どんなお仕事をしているんですか。

株式会社フィンコーポレーションで、観光プロモーションの仕事をしています。フィンランドの魅力を日本で発信したり、日本の魅力を海外に発信したり、コネクターとして活動しています。また表参道にあるカフェ「Hyvää Matkaa!」のマーケティングと広報の仕事をしています。「Hyvää Matkaa!」はフィンランド語で「どうぞ良い旅を」という意味で、コロナ禍で海外にいけなかったとき、フィンランドや北欧について感じてもらいたいという思いから始まりました。カフェでは、日本にはないフィンランドのショップがポップアップされていたり、イベントが行われたりします。空間を広くとったシンプルなデザインで、細かいところまでフィンランドの食器や食材を使っていて、ゆっくりのんびり北欧スタイルの時間をすごせます。

サウナ小屋をイメージしたボックス席

 

Q.お仕事をはじめたきっかけはなんですか。

フィンランドの第三都市にあるタンペレ大学でマーケティングを専攻していたときに、日本語の授業がありました。もともと日本の可愛いカルチャーが好きで、マーケティングと日本を組み合わせたら面白いんじゃないかと思って、大学三年生のときに交換留学で日本に来ました。実際日本とフィンランドは相性が良くて居心地が良かったです。それでいろんな人たちと縁があって、今の仕事につながりました。

Q.お仕事のやりがいと心がけていることはありますか。

人に喜んでもらえることと、新しいつながりができることがやりがいです。いろんなつながりを通じて、笑顔が増えたりハッピーな気持ちになってもらえるのは、うれしいですね。

心がけていることは自分の好きなことや、個性を大事にすることです。もちろん他の人を尊敬することも大切なんですけど、正しいとか正しくないとか関係なく、自分の好きなことをやりたいと思います。そうすると他の人にも良い影響が与えられるかなと。

Q.フィンランドの働き方に特徴はありますか。

特徴はオンとオフがはっきりしていることです。仕事は一日だいたい8時間で、働く時間はフレキシブルに選べることが多いです。なので自分の生活スタイルとか状況に合わせられます。

あとはコーヒー休憩があって、ランチ休憩とは別に1日2回、だいたい15分くらいの休憩があります。フィンランドは効率的に働くことが重要視されていて、コーヒー休憩でリフレッシュする人が多いです。コーヒーの消費量は世界一なんですよ!仕事の時間が終わったら、友達や家族と過ごす人が多くて、仕事とプライベートははっきり分かれています。なのでオンとオフを上手に使いこなしているのがフィンランドらしいかなと思います。

Q.ノーラさんはフィンランドでどんな暮らしをしていましたか。

私を含めてフィンランド人は自然の中で過ごすことが多いです。日常生活と森はすごく身近で、首都でも徒歩10分ほどで森にいけます。フィンランドに住んでいた時は、夕方森に走りにいったり、散歩したり、ベリーを摘んだりしていました。

学生のときやっていたことは新体操とダンスです。でも日本と違って部活とかサークルはなくて、あとは塾もないんです。なのでみんな趣味に時間を使う人が多いです。「選べる自由」があって、趣味とかやりたいことを自分で決められます。なので趣味はみんなそれぞれで、授業も好きなことを勉強できる時間がありました。フィンランドには個性を大事にするっていう考え方があるからです。

フィンランドは夏休みが長いことでも有名です。だいたい社会人でも一か月くらい休みをとって、森のコテージで過ごします。サウナで温まって、湖に飛び込んで、おいしいご飯を食べたり、森を散策したりします。日本みたいにイベントだったり街の刺激とかはないんですけど、シンプルでゆったりとした生活をしています。

Q.フィンランドの幸福度が高いのはなぜだと思いますか。

フィンランドの生活スタイルを考えると、税金が高いかわりに国からのサポートが受けられるからだと思います。例えば、健康・ヘルスケアだったり、質の高い教育が無料で受けられます。ライフロングラーニングという考え方があって、特に教育に力を入れています。大学まで国立でも私立でも国の税金でまかなわれていて、親の職業に関係なく教育を受けられるのが魅力です。教育費だけじゃなくて、生活費のサポートもあります。例えば一人暮らしの人に月200ユーロの支援があったりします。どんな背景でもみんなに同じ可能性を与えるという考え方があるので、「誰でも大統領になれる」と言われているんです。そういう意味で、みんな平等というのを大事にしてますね。政府への信頼度も高いので、困ったら国が助けてくれるという風に考えてて、そういう信頼を大事にしてみんな頑張っているんだと思います。

Q.なぜフィンランドには平等という考え方が根付いたのでしょうか。

一つ背景にあるのは、第二次世界大戦がありフィンランドが貧しい国だったことです。借金はたくさんあるけど、資源はあんまりなくて人口も少なかったので、再建のためにみんなで協力する必要がありました。それで早い段階から、女性の社会参加が進んで男女平等の考えが広まったのだと思います。

Q.日本の幸福度が低いのはなぜだと思いますか。

フィンランドの良いところを考えると、仕事と休みをはっきりと分けていることだと思います。オフのときは自然の中で過ごして日常生活を大事にします。日本人ももともと自然とのつながりを持っていたと思うんですけど、今は東京とか都会に人が集中していて、自然から離れていると思うんです。イベントを楽しむのも大事ですけど、家の中で好きなことをする時間とか、シンプルな生活が幸せの秘訣かも知れません。

Q.ノーラさんはこれからどんな活動や挑戦をしていきたいですか。

コロナが収束してきて、海外旅行に行く人も増えました。最近は海外から日本に来る方も多いので、日本人と外国人、双方につながりを作れたらと思います。外国人が知らない日本の魅力ってたくさんあって、小さい街だったり、山とか川の自然とか。そういうことを伝えていきたいです。あとは人々だったり会社だったりを、日本と外国、日本とフィンランドでつなげていきたいと思います。

Q.フィンランドのカルチャーで日本に広まってほしいことはありますか。

何もしなくていいということですね。何もしないともったいないと感じてしまうかもしれないんですけど、ゆっくりのんびりする日も全然良い日だと思うんです。何もしないからこそ、リラックスできますし、やっぱり自然の中で過ごすシンプルなライフスタイルが好きです。

ノーラさんが愛するフィンランドの森

(インタビュー:2022年11月)

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