ウイルスと闘う

東京国際大学

ウイルスと闘う

PEOPLEこの人に取材しました!

谷津一義さん(経営企画部)
向光晴さん(生活資材営業部)

日本バイリーン株式会社

日本ではマスクをした人をしばしば見かけるだろう。マスクを使ったことがない人はいないのではないかと思うほど、マスクは一般の人たちに普及している。特に街中や電車の中で多く見られる。マスクは風邪予防、感染症・花粉症対策など様々な場面で使われる。最近ではファッション目的、美容目的で使用する人も増えている。そこで私たちは、知っているようで知らないマスクについて知るために日本バイリーン株式会社の谷津さん、向さんに話を聞いた。

不織布マスクは新型インフルエンザの流行より普及した

Q:今使われているマスクにはどのような種類があるのですか。
向さん:マスクを大別すると、粉塵発生現場などで使用する産業用防塵マスクと家庭用の使い捨てマスクがあります。10年ぐらい前までは、マスクというとガーゼでできたガーゼマスクが日本では一般的でした。それが2009年の日本で新型インフルエンザ(豚インフルエンザ)が騒がれた時に、不織布*のマスクが一般に普及していきました。それまで、不織布マスクは病院の先生や看護婦さんなどに流通していました。
そして、新型インフルエンザの流行により簡単に使い捨てることができる不織布マスクの需要が多くなりました。
実際に不織布の使い捨てマスクを使用してみると、それまでのガーゼマスクに比べ、洗って再使用するというのが一般的であったのが、不織布マスクは使い捨てということで気軽に使用できるし衛生的にもよかったので一気に普及したと思います。さらに、3、4年前からいわゆるスッピン隠しとして気軽に着用できるアイテムとして需要が高まりました。

*不織布…繊維を織らずに絡み合わせたシート状のもの。

危険!使ったマスクはすぐ捨てて!

Q:マスクはどのくらい使用したら捨てればいいのですか。
谷津さん:基本的に1日1枚。その日その時使い終わったら交換。マスク使用中は浮遊している花粉やウイルスを捕集するわけです。それを捨てずに次の日に使えば、それを吸ってしまうかもしれないからです。使用したマスクをどこかに置いてしまったら、さらにそこから再飛散することになります。外で使用したらその日にすぐに捨てるべきなのです。そして新しいマスクを使いましょうということです。二次感染を防ぐことができます。

欧米では予防着用の習慣がない

Q:マスクはどれくらい普及しているのですか。
向さん:私が聞いた中では、マスクを一般の方が着用するのは日本独特なもののようですね。最近中国ではPM2.5が問題となり、その影響でそれを吸い込まないために中国、韓国や東南アジアで一般の方もマスクをするようになりました。
しかし欧米では、一般の方はマスクを着用していません。なぜかというと、欧米では、重大な病気を患っている方がマスクをするということで、普段マスクを使用するという習慣がないからです。風邪を引いただけではつけないですね。ちなみに欧米で利用されているマスクの種類はサージカルマスクがほとんどです。要は感染症とかそういった患者、施設で使うといったもので、欧米人がマスクを着用している人を見ると「この人は感染症」だと思い不安視されるということなので欧米ではマスクをしないほうがいいみたいですよ。だから、欧米の人が日本に来ると「なんでこんなにマスクをしているんだ?』とびっくりします(笑)。事情が分からないと、感染症が蔓延していると思われそうです。

素材製造から、そして利用者へ

Q:日本バイリーンのマスクの特徴は何ですか?
谷津さん:当社の強みは素材から開発し、製造している素材メーカーであるということです。他のマスクメーカーだと素材から開発していません。悩みは、元々素材を製造・販売するメーカーなので、一般的な当社の認知度が、まだ低いことです。広報担当としては名前をいかに知ってもらえるかが課題です。
やはり、知っているメーカーと知らないメーカーを比べた時に、知っているメーカーだと選びたくなりますよね。そしてその上で性能を評価し選んでもらえるようになりたいです。

マスクの構造を説明してくれた。

向さん:マスクは、いくつかの層に分かれていて、まず口元の部分に肌触りの良い不織布があって、その次にメインフィルターと言われる、PM2.5やインフルエンザのウイルスなどを99%カットする特殊な不織布が使われます。それを覆う表面層があり一般的なマスクは、三層ないし四層構造となっています。
呼吸した際、細かい粒子を99%以上捕集できる不織布をつくる
技術が当社にはあります。

Q:一般の人たちがこんなにマスクを使っている状況についてどう思われていますか。

谷津さん:マスクを使っていただけることは、会社としては、もちろんありがたいことです。しかし、新型インフルエンザのようなパンデミックになったときに更にマスクの売り上げは伸びますが、それは会社としては喜んでいいことなのか、社会全体で考えた時に正直、難しいです。本当はそういう病気が流行らないようになるのがいいですよね。

向さん:個人的にいうと、満員電車の中で風邪予防のためにマスクをするという海外にはない需要もありますし。
マスクで顔を隠せて安心するからという理由で使う人が多くなってきたことについてどう思うかは難しいですよね。ただ私たちのような販売側でいうと、ある時は流行ってそれが廃れて、逆にマスクを着用するのがダサいっていうことになると、あまりありがたくない。どちらかというと平均的にだんだん需要が上がっていくのが理想ですね。

不織布メーカーとして負けられない戦いがここにある

Q:これからどういったマスクを開発したいですか。
向さん:不織布は元来、その特性により、フィルター効果という機能を有しています。その効果をより高めかつ呼吸をしやすくする素材を開発する事が、メーカーとして重要になります。逆に小顔マスクや、ファッション面では当社は得意ではないので、そのあたりの改善も必要と思っています。また、新しい考えとして、例えば、マスクを着けると、冷たくなるマスクですね(笑)。真夏でも着けられるような。マスクって暑いですし。真夏に着けるとひんやりとなることで、暑さから逃れてかつ低コストのマスクを開発できたら売れると思いますよ。

谷津さん:私も同じです。素材メーカーなので、素材を活かせる新しいマスクを出していきたいです。そして消費者が欲しいと思って求めているもの。ニーズはその時その時で変わっていくものなので、それに合うものですね。いくらいいもの作っても売れないとダメなので、ニーズに合わせるのが大事だと思います。フィルター面でいうと、より小さな埃を捕集しようとするときどうしても空気抵抗が高くなってくるんですね。将来的には、抵抗が非常に低いけれども捕集効率が高い究極のマスクを開発したいですね。

(インタビュー:2017年6月)

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