商連かながわの役割
Q:商連かながわは、どんな組織ですか 。
神奈川県商店街連合会は1952年に設立されました(1970年に社団法人となり、2010年に「公益社団法人 商連かながわ」と改称)。商店街には肉屋さんや、パン屋さん、本屋さんなどありますが、自分のお店のためだけでなく、街のために何かをしたいとき、たとえば、お客さんがたくさん来るように、街をもっときれいにしたいとか、何かイベントをしたいというとき、商店街で組織をつくってお金を出し合って、事業をします。そうやって、一つのお店だけではできないことをやります。そこに、市や県も補助金を出します。私たちは、県の連合会なので、商店街の人たちが何かしたいという時に、市や町だけではできないことを実現していくお手伝いをします。
https://shotengai-kanagawa.com/tour/list.html
優れた商店街の事例を他の商店街に知ってもらうために「かながわ商店街大賞」を県や関係団体と一緒に実施したり、研修会を行ったり、商店街の新聞を出して、お店の紹介などを載せたりしています。私は、商店街ツアーのイベントを担当しています。また、今、コロナ流行の中で、政府や県から出される要請などを、商店街にお知らせすることもしています。
商連かながわの強い味方になっているのが、2008年(平成20年)から施行されている神奈川県商店街活性化条例です。この条例は「大型店やチェーン店をはじめ、商店街で事業を営むすべての事業者が、事業を営む地域において、商店会などの商店街組織に加入し、また、その活動に積極的に参加し、協力することにより、商店街の活性化を図り、県民生活の向上に寄与する」ことを目的としています。
Q:商店街を活性化するために、どんな活動を行いますか。
商店街単位では活性化のために、例えば、祝日の日の割引や中元セール、歳末セール、集客イベントなどの活動を行います。たくさんの人を集めて、歌や踊りのイベントを行い、お店は2割引きや3割引きをしたりして、お客さんは買い物をした時にもらった券で、ガラポンをやって、プレゼントをもらったりします。これは商店街単位で行うことです。
もっと広いレベルでは、例えば横浜市では、全市に向けたお店コンテストというような事業が行われています。「ガチハンバーグ」とか「ガチカレー」のような「ガチシリーズ」というキャンペーンが過去に実施されています。このような大範囲のキャンペーンを行い、たくさんのお店が参加し、商店街の代表としてコンテストで競うことは、PR 効果があります。
商店街ツアー
Q:商店街ツアーでは、どんなことをしますか。
商店街ツアーでは、商店街のいろいろなお店を紹介して、参加者の方には、お店の人に話を聴きながら、買い物をしたり、食事をしたりすることを楽しんでもらいます。商店街ツアーをやってみて、商店街で商売をする人たちの人脈はすごく豊富で、商店街の人だけではなく、いろいろな人とつながっていて、商店街ツアーの面白さが増えました。 例えば、大きな神社がある寒川町でツアーを行ったことがあります。そのツアーでは、商店街のほかに神社を参拝したのですが、そのときに、神社の裏手の見事なお庭の石舞台で、巫女さんが踊ってくれました。
また、横浜の本牧は、昔のアメリカの基地と関係があり、アメリカのジャズバンドやロックなどの音楽が、戦後最初に日本に入ってきた場所です。ここに70年ぐらいやっているバーがありまして、当時を知る洒落た店主さんがバンドを呼んで、音楽を演奏してくれました。これにはとても感動しました。
商店街ツアーでは食べ物の試食もあります。例えば、魚をすりつぶして、こねて揚げるさつまあげという食べ物がありますが、これをツアーで試食していたら、美味しそうなものが食べられるみたいだぞ、と知らない人も集まってきたりすることがありました。ツアーの旗を挙げていると、指さされて、何をしてるのと聞かれて、商店街ツアーをやっていますと答えたり。しかし、今コロナウイルス流行の中では、なかなか街歩きをすることができません。最近は、動画配信で、商店街の紹介やネットツアーなどもやっています。
寒川神社の庭園見学
http://shorenk.sakura.ne.jp/tour_manual_2018.pdf
Q:商店街ツアーに参加する人たちはどんな人ですか。
商店街ツアーに参加する人には、だいたい50歳以上の方が多く、9割がそうです。若い人はあまり参加しませんが、高齢者の方は、子どもの時に商店街で買い物をした経験がある人たちなので、「商店街」と聞くと、懐かしさを感じてくださるようです。野菜を売っているお店、肉を売っているお店、魚を売っているお店が立ち並んでいて、店主が威勢よくフレンドリーにお話をしてくれるというイメージをもっていて、商店街をめぐってお話を聞くツアーなんですよ、というと、皆さん魅力を感じていただけるんだなという感じです。特にご高齢のお客様、女性のお客様がすごく多くて、好評です。
商店街結婚式
Q: 古性さんは、商店街で結婚式を行ったそうですね。きっかけは何だったのですか。
結婚式の場所は六角橋商店街です。六角橋商店街にある路線、東急東横線は横浜でとても人気があります。しかし、六角橋がある白楽駅は急行も止まらないし、各停の駅です。だから、六角橋商店街は同じ路線のほかの商店街に比べて、以前は目立たない町でした。そこで彼らはB級をテーマに個性的な街を目指しています。私は商連の仕事で、六角橋商店街の方々と仲良くなって、年末の飲み会の時に「古性さん結婚するなら、式をうちの商店街でやったら面白いよ」と商店街の方々から誘いいただいて。じゃ、来年やりましょうよと一気に決めました。そして、商店街の皆様と打ち合わせしながら、結婚式を行いました。私たちの結婚式が初めての事例になり、その後も、六角橋商店街で結婚式をやる人たちが続いています。
Q:結婚式はどのように行われましたか。
商店街での結婚式は初めてで前例がなかったので、最初に、どうするのか、どんな感じでやろうかとか、全然わからなくて、商店街の皆さんと相談しながら、手探りでやりました。六角橋には、木造のアーケードがある細い通りがあり、ここに赤い绒毯を引いたら面白いのではないか、そこを練り歩くことは必ずやろう、ということになりました。商店街に写真館があり、まず写真館で写真を撮りました。衣装は、鶴見の商店街にあるリサイクル着物店からレンタルしました。そして、髪とメイクは美容院をやっている義理の母にやってもらいました。そして、髪には、商店街の花屋さんから生花を買って付けました。親族と仕事仲間と友達が一緒にパレードをしました。もの珍しくて、満員電車みたいに、人がたくさん集まってきました。とても賑やかでした。十月でしたが、すごく暑くて、商店街の人たちと知り合いだけではなく、知らない人もたくさん集まりました。また、ちゃんと結婚の儀式もやりました。なんと、商店街の会長さんが神主さんの資格をもっていて、儀式をしてくれたのです。
Q:結婚式の料理はどうしましたか。
まず、受付を2つにわけて「招待客」と「通りすがり」を用意したんですね。それで招待客の皆さんには商店街の中の三つのお店を予約して、三店に分かれて食事を楽しんでもらいました。そして、通りすがりの方で、お祝いとしてお金をくださった人には、「ビールと焼きそば券」を渡し、商店街のイベントを楽しんでもらいました。このような温かい雰囲気で、みんな一緒に食事を楽しめました。
Q:結婚式で最も印象に残っていることは何ですか?
全然知らない男性が商店街の鯛焼きさんから、たくさんの鯛焼きを買って来て「これしかプレゼントできないですけど」と言って渡してくださり、とても感動しました。他にも、いろいろ面白いことがありました。ケーキが途中で倒れたり、学生さんが結婚式の儀式の道具をうっかり壊してしまったり…。とにかく、いろんなことがあって、エピソードが尽きません。
古性さんにとって商店街とは
Q. 商店街は、古性さんにとって、どんな意味を持っていますか。
私にとって、商店街は「ひとつとして同じところがない、面白い場所」です。いろんなお店、いろんな店主、いろんなものが自然に集まって、まざりあって存在しているところが良いところだと考えます。ショッピングセンターのように、特定の目的があってつくられる場所ではなくて、商店や人が、縁が合って集まってくるところですから、作ろうとしても作れない可能性の場でもあります。多種多様な人たちを受け入れる懐の深さが、商店街という場の魅力だと思っています。
(インタビュー:2021年6月)