今年3月にTJFが実施した多言語・多文化交流「パフォーマンス合宿」に参加したのは、日本に暮らす高校生30人。そのうち16人は海外にルーツをもつ高校生。八王子の大学セミナーハウスで4日間、演劇的手法を使った活動を通じて交流し、最終日の発表会では、グループごとにメンバー一人ひとりの「いちばん古い記憶」をテーマにした作品を演じた。参加者の1人、颯太さんは現在、演劇を専攻している大学1年生。合宿で何を感じたのだろうか。
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いろんな人と交流することが大事
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初日、みんなで円になってアイスブレーキングのための活動をしていたときに、あれ?って思いました。自分だけすごく気合が入ってて、みんなと違うんです。ぼくは演劇に興味があったから参加したんですけど、ほかの人たちは、交流に興味があったんですね。でも気持ちをすぐに切り替えました。交流を楽しもうって。もともと国際交流に興味がないわけではなかったんですよ。ただ機会がなかっただけで。
2日目の夜に、日本に暮らしている海外にルーツをもつ人たちの声を紹介したドキュメンタリー映画を観たあと意見交換をしました。学校でいじめられたことを話す参加者仲間もいました。それまではニュースで聞いたことはあったけど、自分の周りには海外にルーツをもつ人がいなかったから遠い話でしかありませんでした。でも、合宿仲間が話したことで急に身近なことになりました。この話を聞いて、なんてもったいないんだろうと思いました。いじめはよく知らないから起こるんだと思うんです。話せば趣味が同じで、そこから話が盛り上がるかもしれないじゃないですか。国が違っても、年は近いから、好きなものとか考え方とか似ていると思うんです。反対にもし違っていても、意見をぶつけ合って自分とは違う考えを知ることで、自分が当然だと思っていることが正解ではないことがわかるいいチャンスですよね。
合宿で驚いたのが人が話していてもどんどん割り込んでくること。人が話す、聞く、なるほどとまず思うことが大事だと教えられてきたから、割り込んでくるなんてことをやったら空気を読めない奴っていうことになりますよね。でも割り込んだとしてもそれは変なわけじゃない。それもありなんですよ。
こうやって自分の世界が広がるわけじゃないですか。だから、交流のチャンスを逃すのはもったいないし、周りに海外にルーツをもつ同世代がいる人がうらやましいですよ。
今回、演劇ってすごいなと改めて思いました。4日間という短い時間しかなくて、でも演劇はコミュニケーションをとらないとどうしようもないし、身体も使う。最終日の発表に向けて、どういう動きをしようか、って話したり実際にやってみたりしていたときに、こうすればおもしろいんじゃないとか、こっちのほうがいいよねって必死で伝え合うし、身体を動かすから、よけいよくわかるっていうことがありました。ことばだけじゃなくて、身体でも共感できる。これは大きいと思うんです。
国際交流ってことばはよく聞くけど、どういうものかわからなかったんですね。合宿に参加して少しでもわかったのはよかったなと思います。ことばが違っていても話せるんですね。ジェスチャーを使ったり、音楽をかけると自然とみんなで踊りだしたり......。やっぱり誰とでも話すことが大事だなと思います。
こういう交流の場があちこちにできて輪が広がって、高校生が体験すれば上の世代の理解も進んで、海外にルーツをもつ人たちは社会的にも受け入れられやすくなっていくと思います。