2000年10月号 贈りものをする時の言葉 |
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日本語の教科書には「日本人が贈りものをする時の謙遜のあいさつ」として、「つまらないものですが...」という言葉が出ています。実際に日本人が贈りものをする時にどのような言葉を使うのでしょう。 日本人が贈りものをするのは、大きく分けて三つの場合があります。 一つは儀礼的・伝統的に贈りものをする場合です。7月ころに贈る「中元」と12月ころに贈る「歳暮」がその代表です。中元と歳暮はいつもお世話になっている目上の人や上司や恩師などに贈ります。会社から会社に贈ることもあります。儀礼的なので、デパートで売っている「お中元セット」や「お歳暮セット」など食品や日常用品を贈るのが一般的です。「つまらないものですが…」という言葉はこのような儀礼的な贈りものをする時の決まり文句として使うことが多いです。謙遜というより「つまらないものなので、返礼は必要ありません」という気持ちを伝えているのです。事実、中元や歳暮は一方的に送られるのが一般的です。中元や歳暮をもらった人も「これはけっこうなものを…」「そんなにお気をつかわずに…」などという決まり文句を返すことが多いのです。また、贈られた品物をその場で確かめることはほとんどありません。 もう一つは、例えば誕生日などに「プレゼント」を贈るなど個人的な贈りものをする場合です。贈る人は相手の好みや性格を考えてなるべく個性的なものを贈ろうとします。この時は「つまらないものですが」ということばを使うことはほとんどありません。相手に喜んでもらうために「心を込めて選びました」という気持ちを伝えるのが普通です。「気に入っていただけるといいんですが…」「○○さんの好きそうなものを探してきました」「○○さんに似合うと思って選びました」「私からの気持ちです」など、いろいろな表現があります。もらった人もうれしい気持ちや感謝の気持ちをはっきりと表現します。例えば「うれしいです。ありがとうございます」と言うことができます。また、その素敵なプレゼントにたいへん興味を持っているという気持ちを見せて、「開けて見ていいですか」と断ってその場で包みを開けることが多いです。そしてもう一度自分がどんなに喜んでいるか、感謝しているかを伝えます。 その他の贈りものとして、「お土産」があります。誰かの家を訪問する時に持参するものや、旅行先から友人や知人のために買って帰ったもののことです。そのお土産にたいへん特徴がある場合は、その特徴を説明したり、それを買った場所や店の名前を言ったりすることもあります。例えば「これは北京で買った月餅です。たまごの黄身が入っていてとてもおいしいです」「ケーキです。冷蔵庫に入れておいたほうがいいです」のように言うことができます。特に説明を必要とするものではない場合は、「どうぞ」とだけ言って相手に渡すこともあります。 つまり、日本人が贈りものをする時はいつも「つまらないものですが…」と言う訳ではありません。贈る場合、贈る相手、贈る品物、贈る気持ちによって、言葉を使い分けるのです。 本田弘之
杏林大学助教授 |
中国では「贈りもの」というと「煙酒」を思い浮かべる人が多いでしょう。日本でもよく酒を贈りものにしますが、煙草を贈ることはほとんどありません。中国では煙草を相手に勧めますが日本では勧めないことと関連しているのかもしれません。花は日本でも中国でもよく贈られるものとして挙げることができます。しかし、日本では切った菊花は仏花なので生きている人に贈ってはいけないし、病人のお見舞には鉢植えの花は縁起が悪いので贈ってはいけないなどの違いがあります。また、日本では家族や親戚の間で、入学や就職、結婚や出産などのお祝いにお金を贈ることが多いです。この時はお祝い用の特別な封筒を使います。誕生日の時と同じように、渡す時は「おめでとうございます」と言います。(編集部) |