2001年10月号 日本語作文誤用例(1) |
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この夏、私は遼寧省中高校日本語教師研修会の講師として、瀋陽に行きました。遼寧省の先生方、お世話になりました。研修会でいくつかの授業を担当しましたが、いちばん好評だったのは「作文指導」の授業だったと思います。そこで、今回は漢語話者に多い作文の誤用例をまとめて紹介します。基礎的なことばかりですが、かなり上級の人でもよく間違うところです。作文指導の時に参考にしてください。 1.文体の不一致「です・ます体」と「だ体」を混ぜて使ってしまう例です。わかっているはずなのに、よくある間違いです。 例:私が住んでいるのは阜新です。阜新は瀋陽からバスで4時間ぐらいの町だ。(-->町です) 2.時制の間違いこれも、よくわかっているのに、注意不足のため間違えてしまうことが多いようです。 例1:子供の頃、夏休みはいつも友だちと川で泳いで遊びます。( -->遊びました) ヒント:「今も住んでいる」という意味ですから、過去形にするのは間違いです。また、「今まで」を「ずっと」に変えたほうがもっと自然です。 3.「ある」と「いる」の間違い中国語には「ある」と「いる」の区別がありませんが、日本人はこの二つを区別して使います。人間だけではなく、魚や虫も「いる」を使わなくてはなりません。 例1:人口の大多数は朝鮮族ですが、ほかの民族もあります。( -->民族もいます) 4.「~ている」の使い方の間違い「~ている」は「動作・行為の進行」と「状態の継続」に使います。しかし、「動作の繰り返し」には使いません。 例1:新年や国慶節には、ふるさとへもどって家族と一緒に過ごしています。( -->過ごします) ヒント:「帰るたび」は繰り返しを表しますから、「持っている」ではなく、「なる」を使います。 5.指示詞の間違い作文の中で「あれ・あの・あそこ」を使うことはほとんどありません。「あれ」というのは、「書き手」と「読み手」の双方が知っている事柄を指す時だけに使います。したがって、友人や知人に手紙を書く時にはたまに使うことがありますが、普通の作文で使うことはありません。作文の中では必ず「それ」を使います。 例1:私は「把梨」という梨が大好きです。あの梨は柔らかくていい香がします。( -->その梨は) ヒント:「その人は」でもいいのですが「古い友人」なので、名前で呼んだほうが自然です。 6.敬語の間違い「敬語を使わない間違い」よりも「敬語を使いすぎる間違い」が多く見られます。日本語の習慣では、自分の家族や自分のことに敬語を使うことはありません。この点が朝鮮語とは違う点で、朝鮮語を母語とする人は注意が必要です。 例1:私は私のふるさとがますます豊かになることをお祈りいたします。(-->祈っています) ヒント:「私のふるさと」なので、敬語は使わない。 例2:ふるさとに電話をすると、いつも両親は「都会の生活は疲れるだろう」とおっしゃいます。( -->といいます) 7.中国語を直訳してしまった間違いとくに動詞の使い方を間違うことが多いようです。日本語と中国語は同じ動詞を使っていても、少し意味が違うことがよくあるので、注意が必要です。 例1:ホテルに住みます。(-->泊まります) ヒント:日本語の「住む」は長期間、そこで生活することを意味します。 例2:山を下がった時、大雨が降ってきました。( -->おりた時) ヒント:「努力」だけでは動詞になりません。動詞として使う時は「努力する」です。 例4:私たちは、涙が出ながら離れた。( -->涙を流しながら別れた) 作文をうまく書くために必要なことは、とにかく「たくさん書く」ことです。書けば書くほどうまくなります。また、自分の母語で作文を書くのが下手な人は、日本語で作文を書くのも下手です。生徒を指導する時は、母語でもたくさん作文を書くように指導してください。日本語で文通をしたり、『ひだまり』のお便り箱に投稿したりすることも、文章を書く動機付けになり、いい訓練になります。ぜひ活用してください。 本田弘之
杏林大学助教授 |