2000年7月号 「方がいい」の表記の仕方 |
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高校『日語』教科書第1冊第2課に「後でかけ直した方がいいでしょう」という文があります。この「方」は、「使い方」の「方」の読みと混乱しやすいのですが、「ほう」と平仮名で教えてもいいでしょうか。 |
日本で出版されている日本語の教科書や参考書では平仮名表記も漢字表記も見られます。実際の社会でも、どちらも使われていますので、「ほう」の漢字にも対応していかなければなりません。この本文の文脈から見て、「かけ直した方がいい」の「方」を「かた」と読んだり、「使い方」の「方」を「ほう」と読んだりすることはないでしょう。しかし、このような質問が出された背景に、現場の教師や高校生に誤解や混乱を招いたという状況があれば、平仮名表記にするべきでしょう。 日本語能力試験では、「方(かた)」は4級、「方(ほう)」は2級レベルです。中国の教科書でも「方(かた)」を「方(ほう)」よりも早く教えるために、読み方を混同してしまったと思われます。一方、解説や練習の部分は、「~たほうがいい」と平仮名表記になっています。そのため、本文との関係でよけい混乱が生じたと考えられます。「~たほうがいい」は、この課で初めて出てくる文型です。学習者にこの文型を定着させ、使えるようにしていくためには、漢字の読みに左右されることなく理解し、効果的に練習していく必要があります。そのためには、漢字表記よりも平仮名表記にするべきだと思います。 質問の文章では、読み間違える心配はありませんが、誤解を招く文もあります。例えば、「中国の方がいいです」という文です。実際の社会では、この文が単独で現れることはまずありません。かならず場面があり、どちらかが判断できるはずです。しかし、誤解を避けるために、「ほう」と言いたいのであれば、漢字ではなく、平仮名を使ったほうがいいでしょう。 加納陸人
文教大学教授/『日語』日本側主任編集委員 |