2001年4月号 「お好きでしたね」と「お好きですね」 |
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高校『日語』第1冊第15課について 周明:そう言えば、先生は京劇がお好きでしたね。 下線は「お好きですね」に置き換えられますか。また、「お好きでしたね」はどんな気持ちを表していますか。 |
結論から言うと、現在形の「お好きですね」に置き換えることができます。 しかし、この会話がどんな場面かを考える必要があります。この場面は、三上たちが水谷先生も京劇に誘おうとしている言葉を受けて、水谷先生が京劇が好きなのを周明が思い出した場面です。「そう言えば」は相手の話を受けて使う場合が多いのですが、何かを思い出したり、気づいたりした時に使います。 「お好きですね」の場合は、ただ単に「好きだ」ということを述べているに過ぎません。この場面では、「そう言えば」の呼応関係から見ても、そのあとに何かを思い出したり、気づいたりするニュアンスを持つ文のほうが合います。したがって、過去形の「お好きでしたね」のほうがよりこの場面にふさわしいと言えます。過去形が使われていますが、以前、「好きだった」という意味ではありません。何らかの方法で過去に得た水谷先生が京劇を好きだという情報を思い出し、確認する気持ちを表しています。このような過去形を使う言い方は、会話の中でよく見られます。 例えば、「お名前は何と言いましたか」と「お名前は何と言いますか」の発話意図には違いがあります。前者の場合は、以前、名前を聞いたことがあるのに忘れている時に使い、後者は今まで名前を聞いたことがない時に使います。つまり、過去形と現在形は、時間的な対立関係を表しているのではありません。 加納陸人
文教大学教授/『日語』日本側主任編集委員 |