2001年7月号 「~まで~ない」 |
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高校『日語』第3冊の実力テスト(一)の中に「先生は来週の火曜日まで学校に来ません」と一番意味の近い答を選ぶ問題があります。正しい答は「来週の火曜日に来る」となっていますが、よくわかりません。どうしてでしょうか。 |
これは、a. 「火曜日に来る」場合とb. 「水曜日に来る」場合が考えられます。上記の問題の場合は、選択肢に「水曜日に来る」に相当する文がないので、正しい答は「火曜日に来る」ということになります。これは、「XマデP(継続を表す述語)」における「マデ」の持つ曖昧さからくる問題といえます。 しかし、次のような文だと少しはっきりします。
この場合は、「Xマデ」の「X」は「5時」という「点」を表しています。つまり、瞬間時に「来ない」状況と「来る」状況が生まれます。「5時」はその境界を表しており、ここでは「5時に来る」という解釈が成り立ちます。 教科書の場合は、火曜日、つまり一日という幅の中でのできごとです。「XマデP」の「X」は「非瞬間時」を表しています。火曜日は「来ない」の終点でもあり、「来る」の起点でもあります。ですから、上記のa.、 b. 二つの解釈が考えられるのです。 次の文はどうでしょうか。
2. は「XマデP」の「X」が瞬間的ですから、エレベーターが10階まで止まらずに行き、10階で止まることを表しています。3. は「X」の部分が非瞬間時を表していますから、「7日にゴミが出せる」状況と「8日にゴミが出せる」状況の二つの解釈が成り立ちます。 また、「XマデP」の「P」部分が肯定的な文の場合は、それほど問題ではありません。
「XマデP」の「マデ」が曖昧になるのは、Xが「非瞬間時」であり、「P」の部分が否定をともなう文の場合です。しかし、実際には曖昧な表現でも、前後の文脈から意味が明らかになる場合が見られます。
文脈から判断すると、c. は「火曜日に来る」ことを表し、d. は「水曜日に来る」ことを表します。 日本語社会で育った人でも「来週の火曜日まで学校に来ません」と聞いただけでは、その人の持つ語感によって「火曜日に来る」と判断したり、「水曜日に来る」と判断したりするケースが見られます。ですから、日常生活では、誤解や混乱を避けるために、わかりやすい表現を使うことが大切です。たとえば、「来週の月曜日まで休みますから、火曜日には学校に来ます」などです。 加納陸人
文教大学教授/『日語』日本側主任編集委員 |