2003年10月号 「~のです」と「~んです」 |
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高校『日語』第3冊の第1課に以下の会話文が出てきます。
いずれも「んです」という表現ですが、この課は会話ですから、以下の文もすべて「んです」に置き換えることはできませんか。
ここでの用法も含めて説明してください。 |
この「の(ん)だ」は、「映画を見るのが好きだ」のように名詞節を作る「の」と違って、「の」が独立性を失って「の(ん)だ」という形で、話し手の気持ちを表します。ふつう書き言葉では「のだ」、話し言葉では「んだ」が使われる傾向にあります。上記の質問は、話し言葉だから「んです」でもいいのではないかという趣旨の質問だと思います。確かに文法的には、すべて「んです」にしても間違っていません。ただ、この場面は、高校生が僧侶にインタビューし、僧侶がそれに答えて、鑑真のことを説明する場面です。僧侶がきちんと話しているイメージを表すために、僧侶の発話には「のです」を多くしました。「のです」を用いると、丁寧さが加わるからです。一方、高校生の発話では、高校生の話し方に近づけ、その自然さを出すために「んです」を用いました。「のです」と「んです」を使い分けることによって、両者の気持ちや雰囲気を出しました。 「の(ん)だ」の用法について見てみましょう。 1. 話題の切り出し 新たな話題を提出する前提やきっかけを切り出すために、その話題の背景を表します。aがその用法にあたります。生徒がこれから僧侶に奈良の仏像について聞きたいという、話を切り出す役割があります。 2. 説明や理由づけ 「の(ん)だ」の文は、前提になる発話や状況について、話し手が「説明」や「理由づけ」をする機能があります。b、e、fがそれにあたります。eでは、「目を閉じているのが不思議」だという前提の発話があって、それに基づき「目は閉じているのではなくて、見えないのだ」と説明する機能として「のだ」が使われています。 3. 聞き手に説明を求める 例えば、「どうして~のですか」という聞き方で、話の内容やその場の状況などに関して、聞き手に何らかの説明を求めるという用法があります。cとdがそれにあたります。ただし、この場合、気をつけなければならないことがあります。例えば、「先生は今年、中国に行ったんですか」という形を話の前提がないのに使うと、中国に行ったかどうかを疑う気持ちを含むことがあります。それによって、聞き手に不快な感じを与えたりします。また、音声的にも「の(ん)ですか」の部分を強調すると、詰問しているように聞こえたりするので気をつけましょう。 加納陸人
文教大学教授/『日語』日本側主任編集委員 |