2004年4月号 体言止めの効果 |
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高校『日語』第3冊の第4課本文1行に「敦煌。静かな町を一歩出ると・・・・・・」という表現があります。この「敦煌」は一つの文だと考えられますが、このような表現はどのような場合に使いますか。また、どういう効果がありますか。 |
これは「体言止め」という表現手法の一つです。この手法は、説明文や論説文よりも文学作品などに見られます。この教科書の作成者として、この表現方法を使った意図を述べたいと思います。 まず、読者の目の前に、「敦煌」の情景が浮かんでくるようにしたいと考えました。それには、書き出しに余計な字句を加えないで「敦煌」のみにしたほうが、「敦煌」に焦点があてられ、効果的だと思いました。また、「敦煌」と簡潔に言い切ることで、文字の持つ視覚的な側面だけでなく、音の響き、リズムにも配慮しました。「敦煌」という言葉に集約されている歴史のロマンを読み手に感じとってほしいという意図も含まれています。ですから、この書き出しは、単に単語としての「敦煌」を意味するのではなく、この表現の中に多くのメッセージが込められています。中国の高校生であれば誰でも知っている「敦煌」について、そのイメージを膨らませてほしいのです。この課を導入する時に、生徒たちにそれぞれが持つ「敦煌」のイメージを出させるのもいいかもしれません。 この手法は作文にも応用できます。しかし、作文では、文学的な手法を使うよりも、読み手にとって分かりやすい文章を書くよう指導したほうがいいでしょう。 加納陸人
文教大学教授/『日語』日本側主任編集委員 |