2002年4月号 『伝えたい私たちの素顔』をありがとうございました |
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『伝えたい私たちの素顔』を読んで、日本にも中国と同じような子供がたくさんいるのだなあと、おもわず親近感が沸きました。花の16歳、夢もあれば悩みもある年頃、困惑にも陥りやすい年頃、大人ぶっても見せたい年頃なのです。何も隠さず、飾らず、自分の気持ちや有り様を、有のままさらけ出すには、抵抗があったのではないでしょうか。その勇気が貴重だと思います。写真やメッセージに込められた高校生たちの生き様や時代の文化がいくらか透かして見えてくるような気がします。 日本では、高校生にアルバイト、ボランティア活動や高齢者介護などいろいろな社会体験をさせているようですが、その体験をとおして、高校生たちは社会に向かってしっかりと第一歩を踏み出したことになります。他人の立場に替わってみることの大切さも教えられます。「可愛い子に旅させよ」という諺があるように、子供が可愛いからと言って、勉強が忙しいからと言って、いつもちやほや育てないで、長い夏休みや冬休みを利用して、お金を稼ぐ苦労や、社会の厳しさなどを味わわせるのもいいアイデアだと思います。言葉で躾けるより遥かに効果的ではないかと思います。このような体験によって、最大限自分を相対化し、物事に対する客観的な見方や考え方が形成され、審美眼や価値観が確立されると思います。 写真集の中で、私の教えている男子高校生の視覚をもっとも強く刺激したのは、クラブ活動の写真であったようです。中国では、中学生までは学校でも音楽、書道、スポーツなどの課外活動や試合が度々行われ、家庭でもわれ先に子供を音楽教室や絵画教室に入れたりして早期教育を行っています。高校に入ってからは、いつも受験勉強に追われていて、自由な時間が少なくなります。そのため、自分の人生を豊かにするはずの趣味のために時間を割いたり、意識的に努力したりするだけのゆとりがないのが、こちらの高校生の現状です。しかし、これはまず厳しい受験競争に勝つのが先決で、それから個性を養うべし、といった作戦だと考えていただきたいです。 いずれにせよ、他人を理解し、自我を見つけ、夢を追いかけながら人生の道を辿っていく高校生たちの素顔に感動しました。そして、日本語の勉強にも、文化の理解にも、とても役に立つ1冊だと思います。 21世紀は今の子供によって支えられていくはずです。社会、学校、家庭が三位一体となって、子供の成長にもっと深い関心を注ぐべきではなかろうかと、これからの教師の責任を改めて実感した次第です。 黒龍江省鶏西市朝鮮中学
尹山玉 |