2003年4月号 弁論の指導で大切なこと |
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今年も昨年に引き続き、沈陽日本語弁論大会(沈陽日本人会主催)に参加しました。参加するにあたって、まず生徒に作文を募りました。内容が抽象的なものもありましたが、私が直すのではなく、一人一人を呼んで、「ここはどういうこと?」「この時どういう気持ちだった? 具体的に書いてみて」というように、生徒の言いたいことをできるだけ引き出すように指導しました。そして、3人の学校代表を選び、彼らの作文を第一次審査に出しました。第一次は作文審査です。そして、3人のうち、2人が選ばれました。 次は第二次審査に向けて、スピーチの練習です。スピーチでは、アクセント、発音、イントネーションなどはもちろんですが、作文を暗記するのではなく、感情を込めて話すことがとても大切です。前者の指導は私が、後者の指導は丁先生が行いました。また、動作を無理につけるのではなく、心で感じていることが自然に表情や動作に出ることが大事だと教えました。 練習の時に大切なのは、生徒を励まし、自信を持たせることと、生徒が「これでいい」と思っている時に、決して現状に甘んじさせるのではなく、厳しくはっきり要求を言うこと。そして、この二つのバランスをとることです。また、後悔しないようにベストを尽くすことが大切だということも繰り返し話しました。 そして、第二次審査当日。2人は全力を出しましたが、おしいところで、第二次審査で落ちてしまいました。しかし、この2人も、第二次審査には出られなかった1人も本当に頑張りました。大切なのは、結果ではなく経過です。選ばれなかったとしても、自信をなくすことはありません。一生懸命練習したことで、作文の力も伸びたし、表現する力も伸びたのです。「努力した自分をまずほめてあげよう。そして、挑戦したからこそ味わえた悔しさをバネにしてまた頑張ろう」と、丁先生と私は生徒を励ましました。学校や教師の面子にこだわることなく、生徒の成長を第一に考えている丁先生に感動しました。 第二次審査の当日、第一次審査で落ちてしまった生徒から手紙をもらいました。そこにはこんなふうに書いてありました。 「…私の胸のなかは(先生への)感謝の気持ちでいっぱいです。…この前、第二次審査に出られないと聞いて、実は少しがっかりしました。先生の励ましのおかげで、私はまた自信をもちました。第二次審査には出られなかったが、たくさんのことが分かりました。いろいろな経験をしました。『失敗しても頑張って次こそ必ず勝つぞ』と思います。…心から(あとの2人が)いい成績を取れるようにと祈っています。…」 作文の指導では、日本語らしい表現を学ばせることはもちろん大切です。でも、それが全てではないのです。今回の指導を通じて、このことを私自身教わりました。 遼寧省北寧高校
東香世 |