前号でことわざの「動物編」を扱いましたが、今号では「身体編」を紹介します。
まず次に挙げることわざ(慣用表現を含む)の例を見てください。
- 他人より血縁のほうが親しいこと
日:血は水よりも濃い
朝:피는 울보다 진하다 (血は水よりも濃い)
- 付き合いの範囲が広く、知り合いが多いこと
日:顔が広い
朝:발이 넓다 (足が広い)
- 物事を行う調子や気分がぴったり合うこと
日:息が合う
朝:배짱 맞다 (腹が合う)
- ほっとする時間がないほど忙しいこと
日:息をつく暇もない
朝:눈 코 뜰 새도 없다 (目鼻を開ける暇さえない)
- 事態が差し迫って追いつめられた状態になること
日:尻に火がつく
朝:발등에 불이 떨어지다 (足の甲に火が落ちる)
- 言うべきでないことをむやみに他言しないこと
日:口が堅い
朝:입이 무겁다 (口が重い)
- 目障りだったりじゃまになったりするもののたとえ
日:目の上のこぶ
朝:눈에 가시 (目にとげ)
- 同じことを何度も聞かされて嫌になること
日:耳にたこができる
朝:귀에 못이 박히다 (耳に釘がささる)
- 面目を失わせたり、恥をかかせたりすること
日:顔に泥を塗る
朝:얼굴에 먹칠을 하다 (顔に墨を塗る)
- 苦労しないで多くの利益を得ること
日:濡れ手で粟
朝:땅짚고 헤염치지 (地に手をついての泳ぎ)
- 距離が非常に近いこと
日:目と鼻の先
朝:엎어지면 코 닿는 곳 (こけたら鼻があたる所)
「動物編」同様、身体に関する表現を含むことわざや慣用表現でも、日朝間で同じものや似ているものが多数見られます。1のように完全に一致するものもありますが、2~5のように同じ意味を表すのに体の部位が違っていたり、6~9のように体の部位が同じでもそれがどうなるかが違っていたりして、比較すると大変興味深い。もちろん10と11のように、それぞれの言語特有の表現もあります。
では、ここに挙げた例と対応し、同じように身体の表現を含む中国語のことわざや慣用表現ではどうでしょう。すぐに思い浮かぶのは「血浓于水」「守口如瓶」「眼中钉、肉中刺」「耳朵磨出了茧子」「往脸上抹黑」などですが、皆さんはどんな表現を思い浮かべますか。
2回にわたって「動物編」「身体編」における日朝中のことわざの相違を見てきましたが、三者の文化的、言語的なつながりの一端を見るようで、感慨深いものがありました。
泉文明
龍谷大学国際文化学部助教授
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