我々は「情報や物の豊かさ」を手にして、「心の豊かさ」を失ってしまったのではないだろうか。
このような反省から、近年、日本の高校では、授業やクラブ活動としてボランティア活動を行う機会が増えてきた。生徒は、ボランティア活動を通じて、さまざまな人に出会い、交流し、助け合うことで、多くのことを学ぶことができる。ボランティア活動には、豊かな人間性を養う教育効果が期待されているのである。
東京のある工業高校では、生徒たちが、近所の人たちが持ってくる壊れたおもちゃを修理している。「学校で学んだ技術を役立てて喜んでもらいたい」という思いからこの活動を始めたそうだ。壊れたおもちゃが動いた時には、おもちゃの持ち主も修理した高校生も一緒に喜び合う。また、「壊れたら捨てる」のではなく「修理して使う」ことによって、物を大切にする心が養われる。
この他にも多くの高校で、困っている人を手伝ったり、自分たちの生活環境を良くしたりするためにさまざまなボランティア活動が行われている。例えば、近所の老人ホームを訪問してお年寄りと交流する、目の不自由な人が本を読めるように活字を点字にする、駅やバス停の清掃をする、などである。
下の図表は、実際にボランティア活動を行ったことのある高校生に、ボランティア活動に対するイメージを聞いた結果である。「社会のために役立つ」「困った人を助ける」という社会貢献イメージを持つ生徒が多い。一方、「勉強になる」「やりがいがある」「新しい出会いがある」という自分のためになるというイメージも持っている。
実際にボランティア活動を行うことによって、社会にも自分にも「ためになった」と感じる充実感は、生徒の人間性を育み、さらにボランティア活動を継続する原動力となる。このような高校生のボランティア活動による教育効果は、心の豊かな社会実現のための一翼を担っている。