国際交流は「ネイティブ」よりも「つながり」。茂木俊浩さん

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◎私立カトリック小学校で発見した、驚きの歴史
赴任が決まって、学校の歴史を調べてみました。私立学校独自のバックグラウンドがあり、それに沿った教育をしているはずだからです。すると、興味深いことがわかりました。スペインからやってきた宣教修道女会のシスターが、1931年に設立した学校だったのです。スペインと強いつながりがある小学校なんて、珍しいですよね。すばらしい個性だと思いました。

しかし、スペインに姉妹校があるものの、交流をしているのはシスターだけで、学校全体としての取り組みはありません。資料もあまりない。いずれは交流が途絶えてしまうのではないか、そうなっては、せっかくの個性が惜しいと思いました。そこで3年かけて、シスターへの取材や過去の校内新聞をもとに、学校の歴史を調べて一冊の本にまとめました。

◎スペインの子どもと英語で学び合う
姉妹校と交流を始めたいと考え、独学でスペイン語の勉強も始めました。児童にも学んでほしいと考えましたが、授業枠がありません。そこでほかの先生たちと相談して、スペインの姉妹校の児童とは「英語で国際交流をする」ことにしました。

始めてみてわかったのは、非ネイティブ同士が英語で交流することのすばらしさです。交流相手が英語圏のネイティブ・スピーカーだと、相手から吸収することのほうが多いですよね。でも、お互いに英語のネイティブではないから、立場は同じです。どちらも英語でのコミュニケーションがうまくなりたいので、双方向で学びあえるんです。スペイン語の授業ができないならばと仕方なく始めたことでしたが、意外な発見でした。

◎「つながり」を学習の動機に
これまでにクリスマスカードを交換したり、学校行事での歌や演奏をしている動画を送りあったりしてきました。学校内で着るスモックが自分たちと同じものだとわかると、児童にも親近感がぐっとわいてきました。アンケートを取ってみると、99%の児童が「スペインの子どもと英語で交流したい」と答えてくれました。相手が英語のネイティブかどうかということよりも、「なぜこの人たちと交流するのか」という、動機づけのほうが大切なんじゃないかと思います。

これから児童に直接交流もさせたくて、夏休みはスペインまで自費で下見に行ってきました。現地の修道院で寝泊まりもしてみました。創立者のシスターが生活をしていた場所に児童を連れて行きたいと思ったからです。

小学生で国際交流をしてもすぐには芽が出てこないかもしれません。でも、10年後かそれよりもっと後に、何かしらの影響が現われてくるという、確信に近いものがあります。私自身、小学校の夏休みに、アメリカで20日間の国際交流プログラムを体験しました。当時は英語が大嫌いになりましたが、その経験が今の私のバックグラウンドになっていると、振り返って思うのです。

◎互いに学びあう
姉妹校の校内ではスペイン語でも英語でもなく、地元の言葉であるバスク語であいさつをしていたのに驚きました。自分たちの文化を大切にしているんですね。日本のことを聞かれることも多かったです。これまでスペインのことばかりを知ろうとしてきましたが、もっと自分たちのことを知って、伝えられるようにならなければいけないと思いました。それができてようやく、本当の意味で双方向に学べるのだと思います。