◎ニューヨークで「各国料理」にであう
「食」の世界に入ったのは、演劇を観るために通ったニューヨークで世界各国の料理を食べ始めたのがきっかけ でした。さまざまな民族が集まっているニューヨークは「食の都」といえるほど、多くのエスニックレストランがあります。また、世界に広がっていく料理が誕 生する場所でもあります。
私はもともと食べることが好きだったので、日本で各国料理を紹介したいと思い、2000年にウェブサイト「e- food」を開設しました。日本にある各国料理レストランの食べ歩きレポートからスタートし、その後はその料理を自分で再現してウェブサイトにアップした り、各国料理のイベントを開催したりするようになりました。もちろん世界各国に足も運んでいて、これまでに50ヵ国に行き、その土地の料理を食べたり、話 を聞いたり、ときには料理修行をすることもあります。
◎郷土料理に目覚める
2012年に公開されたフランス映画「大統領 の料理人」では、女性で初めてフランス官邸専属料理人となった主人公が、家庭料理をつくることで大統領の信頼を得ていくストーリーが描かれているのです が、これを観て郷土料理は素晴らしいと感動しました。人の心を動かすことができるんですね。
郷土料理は国単位で括ることはできません。例えば中国は、省ごとに料理が異なり、さらに省の中でも違いがたくさんあります。ほかの地域も同じ。民族や宗教、風土によって、使われる食材も料理もさまざまです。
イスラエルは、建国の際に世界中からユダヤ人が移民してきましたが、東欧からの移民が多いので、彼らの故郷の料理シュニッツェル(カツレツ)もイスラエルに定着しました。今ではパレスチナの人たちも食べています。
ま たトルコのガジアンテプはケバブの本場として知られています。でも、それだけでなく、郷土のお菓子「バクラバ」に欠かせないピスタチオの名産地でもあるん です。トルコの人たちはここのピスタチオを、日本人が「丹波の黒豆」をありがたがるように珍重しています。トルコにはシルクロードの遊牧民が伝えた料理も 多く、歴史を感じます。こうした背景を知っていると、食べる楽しみももっと増えます。
◎「食」の共通点を探そう
ニューヨークの地下鉄で友人とグルジア*料理の「ハチャブリ」のことを話していたら、乗り合わせた女性がそれは自分の郷土料理だと話しかけてきて、そこから話がものすごく弾んだことがありました。「食」はコミュニケーションの有効なツールになりえますね。
各地の郷土料理を知っていくと、距離が遠くても類似点や共通点を発見することがあります。とても興味深いです。国際交流は違いを認め合うことも大事なのですが、こうやって類似点を探したほうが仲良くなるのではないかと思います。
2 年前に日本の郷土料理についてもっと知りたいと思い、47都道府県を回って、各地で郷土料理を食べたり話を聞いたりしました。日本ではまだ知られていない 海外の料理を日本に紹介するのと同時に、日本の料理を海外だけでなく日本の人にももっと知ってもらいたいと思っています。自分の料理について語れないとコ ミュニケーションができませんから。おいしいものを食べて、郷土料理をキーワードに日本と世界をつないでいきたいと思っています。
*2017年4月から国名呼称は「ジョージア」
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