お笑いと教育を結びつけたいと語る、お笑い芸人「モクレン」の矢島伸男さんと野村真之介さん。お笑い芸人として舞台に立ち、ワラインプロ*をしながら、お笑いを取り入れたコミュニケーション講座やワークショップを開いている。どうして教育に取り入れたいと思っているのか、どんな活動をしているのか、語ってもらった。
*ワラインプロ=笑い+インプロビゼーション(即興)を合わせた造語。お客さんから出してもらったお題で即興でお笑いを演じる。
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◎お笑いで教育に新たな価値を生み出したい!
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○教育+お笑い......どう展開したらいいかわからなかった頃
野村:お笑い芸人になりたくて大学に入ってからコンビを組んで、NHKの番組に準レギュラーで1年間出演したり、大学生の大会に出たりして。そのときに別の相方と組んでいた矢島に会ったよね。
矢島:そうそう。大学生のお笑い全国大会で優勝したこともあったんだけど、俺は教師とお笑い芸人の二束の草鞋をはきたいとずっと思ってた。でも、相方はお笑い一本でいきたいというので解散。その後はピン芸人として活動する傍ら、お笑いを教育にどう生かすかをもっと研究したくて大学院に進学したんだ。
野村:ぼくは大学卒業後もお笑い芸人をやってたんだけど、だんだん「お笑い文化」に違和感を感じるようになっていった。例えば、ライブの最後にはパンツ一丁になって笑いをとるとかね。それはつまらないよなって。ぼくが関心があるのは、お笑いで人間的な成長をどうやってするかってことだなと気づいたよ。それで解散。
矢島:解散後、野村が就活しているときに再会したんだよな。ぼくは野村が教育に興味があることもよく知っていた。それで、いっしょにやろうよと誘ったんだ。
野村:お笑いで教育現場に貢献したい、という矢島の考えにすごく共感したし、またお笑い芸人ができると思ってすごくありがたかった。
矢島:それですぐにコンビを結成。2013年3月だった。見た目に華のない二人だから、せめて名前はっていうんで「モクレン」ってつけたんだよね。
野村:でもまあ1年はくすぶったよね。
矢島:そうそう。教育に貢献! とかいいながら、舞台に立って笑いをとって。普通のお笑い芸人じゃんって。
野村:どこからどう始めたらいいのか、誰に声をかけたらいいのか、まったくわからなかった。それが昨年から声がかかるようになってきた。企業の研修だったり、学校だったり。
矢島:例えば、ある企業の研修では、お笑いを使って、リフレッシュさせて、さらに振り返りをやってほしいと。一つのテーマが終わるたびに、その内容をネタにして笑わせるっていう......。
野村:無茶ぶりだよな(笑)。
矢島:でもこれはぼくらにしかできないことだよ。1日に3、4回やって、まるで単独ライブだったなあ。難しいことをわかりやすくする。そして笑いで気持ちをリフレッシュさせる。笑いの効果だよね。
○教育現場で「ユーモア」が果たす役割って?
矢島:笑いはコミュニケーションの潤滑油だと思うんだ。先生が子どもたちに言ったひどい冗談がときどきニュースになるけど、あれは本当によくない。先生は子どもたちを笑わせたい気持ちでやってるんだけど、笑いのことがわかっていない。いかに笑いをコントロールして教員が子どもとコミュニケーションをとるのかが重要なんだよね。
野村:ぼくたちの力を生かせると思うんだ。
矢島:叱ったり指導したりするときって、どうしても痛みとか苦味が出てくる。その負荷を和らげることができるのがユーモアだったり笑いだったりするわけだよ。子どもたちがひどいことを言ったときでも、それを笑いでどうやって切り返すか。そこで怒ったら子どもたちは心を閉じちゃうよな。
ぼくは通信制高校で3年間教えたことがあるんだけど、1回学校を辞めたけどもう1回行きたい、という気持ちで学校に期待をもってきている生徒が多かった。そんな子どもたちにとって学校が楽しい場になるようにしたい。きっとお笑いが貢献できると思うんだよね。
野村:ぼくは、「子どもたちが評価される定規」をひとつ増やしたい。
矢島:そもそも最初にお笑いにはまったのは小学生のとき。ぼくは当時すごく太っていて、少しお調子者なぐらいの個性しかなかった。そんなぼくが友だち何人かと舞台でコントをやったらすごくウケて。人前に立てた喜びをかみしめながら、コンプレックスを武器にして、短所を長所にかえて、人を幸せにするお笑いってすごいなと興奮したんだよ。
野村:ぼくも中学生のときにコントをする機会があって、これがすごくウケた。生きてる~って心から思えた。それまでアイデンティティがなかったのができたんだ。
矢島・野村:ぼくらがお笑いで救われた人間だから、今度は逆の立場で教育に関わりたいって強く思うんだよね。
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