最高の機内食。内田憲孝さん

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2年連続、TJFの日韓中高生の交流プログラム、SEOULでダンスダンスダンスで参加者たちの安全で楽しい旅のために力を尽くしてくださっている添乗員の内田憲孝さん。とにかく飛行機が好きで今のお仕事を始められたと話す添乗員暦35年、内田さんの「Oh My Gochi」は?

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最高の機内食
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今から37年前、高校の卒業旅行でナウル共和国を訪れた。ナウルは太平洋の真ん中、赤道直下に浮かぶ島国でバチカン、モナコに次いで世界で3番目に小さい国である。バチカンとモナコが大陸国なのに対しナウルは完全な孤島という事から渡航の意欲を掻き立てられた。友人と2人での旅行ではあったが、まだ団体旅行が主流の時代に高校生としてはかなりの冒険だった。
グアムで飛行機を乗り継ぎエア・ナウルで向かう事になったが、130人乗りのボーイング727になんと乗客は我々2人のみだった。対して乗務員はスチュワーデス(昔の呼び方で)4人とパイロット3名(当時の飛行機には機長と副操縦士の他に航空機関士が乗務していた)の計7名というフライトだった。まだテロという言葉が一般的な時代ではなく、手荷物検査も簡易なもので、海外の航空会社ではコックピットのドアを開けっ放しで飛ぶ光景がよく見られた。
このフライトもドアは開けっ放しで、興味本位で覗き込んでいると機長が手招きして迎え入れてくれジャンプシート(補助席)に座らせてもらった。暫くするとなんとスチュワーデスが、客席に居なかったからとコックピットまで機内食を持って来てくれた。人生最初で最後になるだろう飛んでいる飛行機のコックピットでの食事であった。その後、私は大学を卒業し旅行会社に就職し添乗員となり2000回以上のフライトを経験しているが、あの前面の窓に広がる雲海を見ながら食べた機内食を超えるものはない。メニューは覚えていないが人生最高の機内食だった。私は食後もコックピットに居座り赤道を越えて着陸まで体験させてもらった。いい時代であった。