日差しの強くなる6月から9月にかけては、トマトのおいしいシーズン。トマトは、利尿作用で体の余分な熱を排出して体温を下げるカリウムが豊富で、疲労回復に効果を発揮するクエン酸やリンゴ酸も含んでいることから、これからやってくる夏にまさにぴったりの野菜でもあります。
トマトが日本に初めてお目見えしたのは、江戸時代の寛文年間の1670年頃のこと。ヨーロッパから長崎に伝わったといわれています。
当時は「唐柿」または「唐なすび」という名で、薬用または観賞用とされ、野菜として食べることはありませんでした。明治時代になって野菜として再輸入され、「アカナス」という名称で販売されるように。
ただ当初は、赤い色と独特の青臭さが嫌われてまったく売れず、主にソースなどの加工品にされていたといいます。その後、コロッケやオムライスなど洋食が普及すると、それらによく合うトマトの加工品であるソースが注目されるようになりました。
トマトはヨーロッパでも、スペイン人によって原産地の南米から伝えられてしばらくは、毒があると信じられ、観賞用の植物でした。その後、品種改良が重ねられ、18世紀になって野菜として普及しました。
今回ご紹介するのは、真っ赤に熟れた完熟トマトを使った、スペイン・アンダルシア地方の郷土料理「ガスパチョ」。アンダルシアの夏は、日中は日陰でも摂氏35度以上になるほどの酷暑で知られています。
「ガスパチョ」は、そんな夏場を元気に過ごすために農夫や羊飼いが食べていた冷製スープです。トマトのほかに、疲労回復に効果のあるにんにくなどが加えられたり、暑さで食欲が衰えても液状で食べやすいなど、理にかなった食事でもあるのです。
日本でも、南国九州・宮崎の冷たい味噌汁「冷や汁」が知られています。スペインでも日本でも、同様の食べものが誕生していたのは興味深いですね。
栄養学の知識が一般的でなかった昔から、炎天下で働く人たちの経験で誕生した暑さ対策の料理。この夏の食事にちょっと取り入れてみてはいかがでしょうか。
ガスパチョ レシピ
【材料】4人分
完熟トマト......中4個 ざく切り
きゅうり......1本(1/3はトッピングの飾り用にみじん切りにして別に取っておく) ざく切り
赤パプリカ......1/2個 ざく切り
ピーマン......2個 ざく切り
たまねぎ......中1/4個 ざく切り
にんにく......2かけ すりおろす
食パン......1/2枚(8枚切りの分量。6枚切りの場合はもっと少なく。耳を取って、ちぎっておく)
オリーブオイル......大さじ2
ワインビネガー......大さじ2
黒こしょう......小さじ1/2
塩......適量 (最初は小さじ1/2くらい入れて、好みの塩加減に調整する)
冷水......100ml
【作り方】
1. すべての材料をボウルに入れてざっくりと全体を混ぜ、冷蔵庫に1時間以上置いて味をなじませておく。
2. 1をミキサーまたはフードプロセッサーに1分以上かけて、ジュース状にする。
3. 2をざるで漉してトマトのタネなどを取り除き、なめらかにする。味見して、必要であれば塩・冷水を加えて、味やなめらかさを調整する。
4. 3を冷やしたグラスなどの食器に注ぎ、みじん切りにしたきゅうりをトッピングして、できあがり。
〔文・レシピ:青木ゆり子(各国郷土料理研究家・世界の料理情報サイトe-food.jp運営)〕
▼ インターネットラジオ「ごちそうリミックス」
今回紹介した「完熟トマトのガスパチョ」を作るときのワンポイントアドバイスや、世界の暑さ対策の料理、最近のトマト事情について話を繰り広げています。
https://www.tjf.or.jp/gr/2016/06/6.html
▼ iTunes「ごちそうリミックス」番組ページ
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